[ファイトクラブ]安樂、宝塚、日大アメフト部……。プロレス界は大丈夫か!?

トップ画像:wikipediaより引用
[週刊ファイト12月14日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼安樂、宝塚、日大アメフト部……。プロレス界は大丈夫か!?
 by 安威川敏樹
・呆れ返った廣岡達朗氏の『信念』
・日本のスポーツ界にパワハラが無くならない理由
・宝塚もジャニーズも日大も、根っこはみな同じ
・隠蔽体質の宝塚歌劇団とジャニーズ事務所
・日大ブランドに拘り改革のチャンスを自ら潰す
・大相撲のパワハラ体質を受け継いだ日本のプロレス界
・プロレス界のパワハラ自慢が最大の問題
・統括組織のないプロレス界の危うさ
・パワハラは無能の現れ


 2023年も間もなく暮れようとしている。そんな時期、日本では数々の事件が起きた。
 プロ野球(NPB)では、東北楽天ゴールデンイーグルスの安樂智大投手によるパワハラが発覚、自由契約となる。宝塚歌劇団では団員の女性が死亡、先輩からのイジメを苦にした自殺とみられ、社会問題となった。日本大学のアメリカン・フットボール部(愛称:フェニックス)は部員が違法薬物を所持していたことにより、正式決定ではないとはいえ廃部になると発表される。

 いずれもショッキングな事件だが、根底にあるのは理不尽なイジメと隠蔽体質だ。そして、プロレス界にとっても決して対岸の火事ではない。

▼山本小鉄が亡くなって8年。プロレス界のパワハラ問題はどうなったか!?

[ファイトクラブ]山本小鉄が亡くなって8年。プロレス界のパワハラ問題はどうなったか!?

呆れ返った廣岡達朗氏の『信念』

 週刊ベースボール(ベースボール・マガジン社)の12月11日号に、廣岡達朗氏の連載コラム『「やれ」と言える信念』が掲載されていた。廣岡氏と言えば、現役時代は読売ジャイアンツ(巨人)の名ショートとして活躍し、監督としてはヤクルト スワローズと西武ライオンズを日本一に導いた、球界の重鎮である。
 そのコラムで、廣岡氏は安樂投手のパワハラ問題について以下のようなことを書いていた。

「殴られた方にも原因がある。(廣岡氏本人が巨人の監督だった川上哲治氏にイジメられたことで自身が成長できたと主張し)イジメられるということは、これほど幸せなことはない」

 この言葉を、イジメで悩んでいる人の前で言ってみるがいい。イジメられている子供や大人は、廣岡氏の言葉に勇気を与えられるどころか、廣岡氏を心の底から軽蔑するだろう。
 この言葉で勇気づけられるのは、イジメを日常的に行っているロクでもない輩だけだ。

「オレがやっていることは正しかった。イジメているオレが悪いんじゃなく、イジメられるヤツが悪いんだ。オレはイジメられっ子を成長させるためにイジメているんだ」

 こうしてイジメっ子は増長し、イジメがますますエスカレートする。イジメに悩む人たちは心の病が増幅し、自殺にも繋がりかねない。
 廣岡氏はそこまで考えてこのコラムを書いたのだろうか。90年以上も生きてきて、その程度も判らないのなら何の学習もしていないことになる。

 廣岡氏がイジメを正当化しているのは、要するに自分自身への正当化だろう。廣岡氏は川上監督にイジメられたと言っているが、本人も監督時代は選手をイジメていた。管理野球の元、自分の意見と合わない選手を粛清していたのは有名な話だ。
 廣岡監督の下で1年間だけプレーした江夏豊氏は、廣岡氏について、
「勝てば自分の手柄、負ければ選手の責任にするなど、監督があるべき姿とは正反対のことを行う人。選手には玄米などの自然食を強要しながら、本人は(贅沢病と言われる)通風を患うなど、言行不一致が多かった」
と批判していた。

 毎回この廣岡氏のコラムを読めば判るが、いつも今の選手や監督をボロクソに書いている。それ自体は批判記事なので別に構わないのだが、その後に必ず出て来るのは自分の自慢話だ。
 要するに廣岡氏は、今の野球人をボロクソに批判することで、いかに自分が素晴らしかったかを書きたいだけである。

 自分が絶対に正しいと主張する姿は一見、信念を曲げないようにも見えるが、早い話が廣岡氏の辞書には『反省』の二文字が無いだけだ。反省すると、自分の功績が否定されてしまう。それが嫌なのである。

 廣岡氏について書いたが、廣岡氏に限らずこのような野球人は多いように思える。いや、野球界だけではなく、日本のスポーツ界に多い特徴だ。
 つまりは日本特有の体育会気質である。厳しい上下関係に、シゴキやイジメを是とする体質。軍隊主義と言ってもいい。本来、スポーツは楽しむべきものなのに、スポーツを神聖な修練の場とし、エンジョイすることはふざけることと思い込んでいる。

 だから、日本のスポーツ界からいつまで経ってもイジメやシゴキが無くならない。廣岡氏のように何の反省もせず、成長もアップデートもできないイジメっ子気質の人たちが中心にいるのだから、当然の話である。
 それどころか、日本の社会そのものがイジメに対して大甘だ。学校や会社でも、イジメっ子が幅を利かし、イジメられる側にも問題があるとされ、学校や会社を辞めざるを得なくなる。イジメられっ子が日本社会で出世するためには、イジメる側に回るしかない。

 今回の件に関し、楽天球団は安樂投手を自由契約にすると発表、さらに再発防止策として相談窓口を設けたい、と話した。逆に言えば、今まで相談窓口が無かったということだ。
 1994年公開の映画『メジャーリーグ2』では、主演のチャーリー・シーン演じる投手がカウンセリングを受ける、という場面があった。つまり、当時からMLBの球団にはカウンセラー部門があったわけで、それから約30年も経った日本のプロ球団には未だに無いというのは怠慢以外の何物でもない。

 日本のスポーツ界はやたら精神論を振りかざす割りには、本当に必要な心のケアが軽視されている。というより、精神論を振りかざす人ほど、悩みを抱える選手に対して「根性が足らん!」と全く無意味な、というより逆効果の叱責をするのだ。
 これも体育会気質、軍隊主義の現れで、未だに日本のスポーツ界に蔓延り続けていると言わざるを得ない。

宝塚もジャニーズも日大も、根っこはみな同じ

 スポーツ界ではないが、宝塚歌劇団の問題も本質は全く同じだ。体育会気質という点では、今では昔に比べてマシになったスポーツ界よりも酷いかも知れない。
 最近はもう廃止されたらしいが、かつての宝塚の予科生は、阪急電車が見えると電車が通り過ぎるまで礼を続けていたという。なぜ、そんなバカげたことをするのかというと、阪急電車に先輩が乗っている“可能性”があるからだ。要するに、先輩が本当に乗っているのかどうかは関係ない。美女からお辞儀される阪急電車はさぞかし気分が良かっただろう。それで阪急電車は顔を赤らめてマルーン色になったのか?

 こんなアホ丸出しの風習があったこと自体、宝塚が異常な組織という現れである。さらに、そのことをネタにし(まあ、その話自体は滑稽過ぎて面白いのだが)、そんな苦労を乗り越えたから宝塚の栄光がある、と歪んだ選民思想を生み出した。
 そこにあるのは、美しい女性たちが演じる華やかな舞台とは正反対の、醜い嫉妬と陰謀の世界。イジメが日常化し、団員たちも感覚がマヒして、今回のような悲劇に繋がったのだろう。

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