[ファイトクラブ]中嶋勝彦退団祝福ムードも福岡で正念場なGHCヘビー級王座戦線

 10月よりノア所属からフリーランスとなった中嶋勝彦。2試合あるノアでのラストマッチのうち1試合は、聖地・後楽園ホールのメインで実現した。中嶋のノア後楽園ラストマッチは寂寥感や郷愁といったものは皆無だったが、それは10・28福岡ビッグマッチで舵取りの行方を左右するであろうGHCヘビー級王座戦、『ジェイク・リーvs.拳王』と無関係ではないと筆者は考えている。


▼中嶋勝彦退団祝福ムードも福岡で正念場なGHCヘビー級王座戦線
 最後の砦・拳王がGHCヘビー奪還なるか?
 photo & text by 鈴木太郎
・中嶋退団を嘆いてばかりもいられないGHCヘビー事情
・ジェイク防衛後の次期挑戦者問題
・”NOAH中嶋勝彦”稲葉大樹下し聖地ラスト飾る
・懸念より感謝が溢れたメイン
・GHCヘビー&ナショナル王座ダブル前哨戦ワグナーJrモリス下す
・GHCタッグ&Jr タッグ前哨戦清宮海斗王者アンソニー・グリーン撃破
・11・4Jr前哨戦HAYATAが小川良成に技あり丸め込みでピン
・村上一成、久々ノア参戦で鈴木秀樹ロックオン?
・浮上キッカケ掴みたい宮脇純太、兆し見えるも敗戦
・年内休業前でもTERRY YAKIと高速攻防・吉岡世起


■プロレスリング・ノア『STAR NAVIGATION 2023』
■日時:2023年10月20日(金) 18:30開始
■会場:東京・後楽園ホール
■観衆:1,280人

 中嶋勝彦、プロレスリング・ノア退団。2016年の入団から約7年。DIAMOND RING(健介オフィス)所属時代も含めれば、キャリアの大半を方舟マットで過ごしてきた主力選手の退団はあまりにも大きな痛手ではある。だが、それ以上に感じたことは、ノアに対する感謝の思いと待遇面も悪くないであろうノアを離れてフリーランスになる覚悟であった。
 2度のGHCヘビー級王座戴冠、鈴木軍に引導を渡した2016年末の鈴木みのる戦、シングルリーグ戦『N-1 VICTORY』史上初の連覇、無観客試合で行われたマサ北宮との敗者髪切り金網戦、拳王と繰り広げた60分時間切れドローのGHCヘビー&ナショナル王座のダブルタイトルマッチ、『サイバーファイトフェスティバル2022』での遠藤哲哉失神KOなど、実績・試合内容・話題でいずれもノアの中心を担っていた中嶋だが、35歳となった今、2024年のデビュー20周年イヤーに向けて勝負をかけた格好だ。

 次なる参戦先が何処なのか分からないまま、中嶋は10月シリーズで行われるNOAHラストマッチ2試合に臨んだ。その初戦となった10・20後楽園ホールには、平日金曜夜にもかかわらず、地方在住のノアファンや中嶋ファンが聖地に足を運んだ。試合後の中嶋から紡がれた感謝の言葉は、退団時にありがちな湿っぽさや暗さは皆無。寧ろ、ファンからは新たな門出に対しての祝福の念さえ感じられたのである。

 とはいえ、中嶋の退団を嘆いてばかりいる余裕もノアにはない。中嶋のNOAHラストマッチが組まれている10・28福岡国際センターでは、GHCヘビー、ナショナル、Jr.タッグの3大GHC王座戦が控えているからだ。中でも福岡のメインイベントを張っている『ジェイク・リーvs拳王』によるGHCヘビー級王座戦は、10月末にしてNOAHの舵取りで重要局面を担うシチュエーションとなった。今年3月に清宮海斗から勝利し、これまで中嶋勝彦、丸藤正道、杉浦貴、潮崎豪から王座を防衛してきたジェイクにとって、拳王戦での勝利は自身のNOAH内における立場を掌中に納められるか否かが懸かっている。

 今のNOAH内の陣容からしても、ジェイクに挑戦出来そうな顔ぶれとしては拳王が最後の砦と言えそうなので、この一戦に勝った場合、次期挑戦者候補は過去の挑戦者の2周目に入る可能性は捨てきれない。夏の『N-1 VICTORY』で30分ドローとジェイクに負けていないマサ北宮やジャック・モリスという実力者はいるものの、拳王戦の後に挑戦というのも些か格落ち感が否めないからだ。
 福岡国際センター戦後のNOAHビッグマッチは11・4新潟、12・2横浜武道館、2024・1・2有明アリーナが予定されているものの、恐らく次にGHCヘビー王座戦が組まれるのは、早くて12月の横浜、遅くとも年明けの有明だろう。逆算して福岡でジェイクが防衛した場合、少なくとも年始の有明アリーナ大会に相応しいノアの所属選手を用意できるかどうかという懸念が真っ先に浮かび上がる。ウルトラCで福岡が両者ドロー⇒有明でリマッチという皮算用も出来るのかもしれないが、ここで拳王敗戦というシナリオだとGHCヘビー奪還計画という点でノアが一気に苦しくなるだろう。ジェイク参戦以降、ノアにとって最大の正念場を迎えつつありそうだ。

”NOAH中嶋勝彦”稲葉大樹下し聖地ラスト飾る

<メインイベント 6人タッグマッチ>
潮崎豪 〇中嶋勝彦 マサ北宮
(18分4秒 ヴァーティカルスパイク⇒体固め)
望月成晃 征矢学 ●稲葉大樹

 ノア退団を発表した中嶋勝彦のノア後楽園ラストとなった一戦は、『AXIZ』でタッグを組んでいる潮崎豪と、『ジ・アグレッション』でタッグを組んでいたマサ北宮をパートナーに従えて、望月成晃&征矢学&稲葉大樹組を迎え撃った。ノアラストマッチといえども、退団マッチにありがちな郷愁や寂寞は皆無。中嶋の持ち味である鋭い襲撃音が観客の鼓膜をふるわせる。WRESTLE-1時代から中嶋と因縁が深い稲葉も、先輩の征矢や望月に遠慮することなく先発を志願するなど、最後まで勝負論を持ち合わせる異色の試合となった。

 中嶋とは対立⇒和解を経て強固な関係性を築いた潮崎も、最後まで緊張感がありながら一瞬見せた連携技を以て別れを惜しんだマサ北宮も、この日は中嶋の援護射撃に徹していた。それでも、中嶋が試合権利を持っていない場面では征矢とマサ北宮のマッチアップで良い流れを切らさず持続させていた点は見逃せない。最後は粘る稲葉を振り切るかのようにバーティカルスパイクで沈めた中嶋が、ノア後楽園ラストを勝利で飾った。
 試合後、中嶋は観客に向けて感謝の言葉を口にして、次なる活躍の場に目を離さぬよう告げた。まさか、その翌日に全日本プロレス後楽園ホール大会に来場するとは、この時誰一人として予想も出来なかったのではないだろうか・・・?

▼全日51周年:魔のトリオベルト戴冠 三冠戦頂上対決 中嶋勝彦登場!

[ファイトクラブ]全日51周年:魔のトリオベルト戴冠 三冠戦頂上対決 中嶋勝彦登場!

 退団という事象には少なからず疑念というものが付いて回る。それは選手当人にも、団体にも矢印が向いてくるものだろう。しかし、今回の中嶋退団に対しては、感情を押し殺すでもなく純粋に新たなる門出への祝福を送らずにはいられなかった。それは、苦しい時期からノアを支え続けた事に対する中嶋への感謝の念が勝ったからなのかもしれない。

記事の全文を表示するにはファイトクラブ会員登録が必要です。
会費は月払999円、年払だと2ヶ月分お得な10,000円です。
すでに会員の方はログインして続きをご覧ください。

ログイン