[ファイトクラブ]Scrap&Build⇒若手新陳代謝に舵切るドラゴンゲート独自サイクル凄い

 ユニット結成と解散、選手のベビーターン・ヒールターンの早さに代表される目まぐるしいストーリー展開がウリのDRAGON GATEに、近年ある変化が訪れている。ユニット解散や選手のユニット間移動の早さ以上に、若手が台頭して主役に躍り出るキャリア形成の早さが目立つようになってきたのだ。デビュー3年足らず、実質2年で最高峰のドリームゲート王座を獲得した菊田円を中心にした『令和新世代』の台頭著しい中、盛り上がりを見せた大田区ビッグマッチを特集する。


[週刊ファイト8月24-31日合併号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼Scrap&Build⇒若手新陳代謝に舵切るドラゴンゲート独自サイクル凄い
 photo & text by 鈴木太郎
・主力流出も、早い若手台頭で埋める今のドラゲー
・アフターコロナデビュー組が中心に立つ凄み
・若返り化の秘訣は【団体の猛プッシュ】にあらず
・BIGBOSS清水が示した「現世代の反攻」予兆
・『菊田円-箕浦康太』令和新世代闘争も菊田防衛で見せた圧倒的実力差
・箕浦敗戦の原因は力勝負?
・中盤で心折った菊田の逆水平チョップ
・ツインゲート”サバイバル3way”防衛も敗戦で光るZ-Brats悪の連携
・選手2人+セコンド1人で支配したZ-Bratsのインサイドワーク
・みちプロ完全制覇-YAMATO宣言!王者フジタJrハヤトまさかの敗戦
・東北Jr王者に完勝したYAMATOの余裕
・22年振りドラゲー参戦・石井智宏に存在刻む『令和新世代』Ben-K
・独特キャラ封印で石井に対峙したBen-K
・今秋シリーズ筆頭!BIGBOSS清水の『令和新世代』3番勝負
・『ISHIN-望月ジュニア』ブレイブゲート王座戦熱闘ISHINが示した実力差
・『二世対決』押し出さずとも成立する内容の濃さ
・テーマ皆無8人タッグに彩り加えた”アイアンマンヘビーメタル級王座”
・アイアンマンに嚙みついたパンチ富永鋭い嗅覚
・欠員も若手代打が存在感示すオープニングバトル BIGBOSS清水制す
・元ブレイブゲート王者欠場も燃えた若手3人衆


■DRAGONGATE『DANGEROUS GATE 2023』
■日時:2023年8月20日(日) 15:00開始
■会場:東京・大田区総合体育館
■観衆:1,898人

 軽量級を中心とした華麗なルチャと、短期間でのユニット結成・解散に代表される目まぐるしいストーリー。

 筆者がDRAGON GATEという団体に対して抱いていたイメージだ。プロレス界でユニット解散や選手間の結託・裏切りが相次げば、真っ先に同団体のスピーディーなストーリー展開になぞらえる意見も少なくない。選手のマイクパフォーマンスも手慣れたもの故に、「DRAGON GATEのファン層は、他団体に対して物足りなさを感じる(=箱推し)」印象があるほど、唯一無二の個性を放つ団体である。

 近年、土井成樹やEitaなど、DRAGON GATEを最前線で支えてきた選手が相次いでフリー宣言。石田凱士もDRAGON GATE退団→GLEAT参戦でシングル王座戴冠を果たし、メキシコ遠征中にもかかわらず今年6月に『重大な契約違反』を理由に契約解消した藤原拓磨とSBKentoもGLEATに合流するなど、人材流出に関する不安の声も聞かれる。
 その一方で、流出した穴を埋めるどころか主力級へと躍り出てくる若手の存在感は、意外な程評価されていない。こういう若手の登用には会社の猛プッシュが少なからずあり、時としてその露骨具合に辟易してしまうものだが、DRAGON GATEの場合はそうした露骨さとは無縁の立ち位置にある。特に、ウルティモ・ドラゴンが舞い戻った2019年夏以降からだろうか? 若手が軒並み新人離れした動きと華やかさで、上の世代に接近するようになってきたのだ。

 今回の大田区で組まれたシングル王座戦も、王者の菊田円やISHINは新型コロナウイルス禍の2020年以降にデビューしているし、その挑戦者である箕浦康太と望月ジュニアも未だ20代と若い。今のDRAGON GATEは、所謂『令和新世代』と呼ばれる若手の台頭が著しいのである。彼らはデビュー後の年数に反して、濃いキャリアを形成できている。現時点でタイトルこそ未戴冠でも、蹴りの鋭い布田龍やデビュー前のエキシビジョンマッチから先輩相手に勝利する加藤良輝といった実力派から、デビュー前のバックボーンをそのままリング上のキャラクターとして押し出す個性派(永野海斗、柳内大貴)まで幅広い。
 他の団体と比べても異常な早さで進む若返り化は、【団体が若手をプッシュして若返りをはかる】という側面以上に、【団体内の目まぐるしいサイクルに若手が実を伴った】結果によって生まれているのではないだろうか?

 とはいえ、こうした若手主体のサイクルになると、自ずと割りを食う世代も現れる。『令和新世代』が次々と団体最高峰のドリームゲート王座を保持する中、BIGBOSS清水やKzyなど、現在30歳を超え、キャリアも10年以上に及ぶ選手の中には、未だにドリームゲートを巻けていない実情が、その面を強く際立たせる。彼らは、YAMATO、土井成樹、B×Bハルクといった所謂『現世代』と呼ばれる面々と幾度も戦ってきた層にあたるが、若手のサイクルに押し出されてしまうにはまだまだ早すぎる印象だ。
 そうした状況の中、BIGBOSS清水が『令和新世代』とのシングルマッチを今大会でブチ上げた事は非常に興味深い。シングルトーナメント『KING OF GATE2023』でシュン・スカイウォーカーや菊田円に勝利しながら決勝戦で惜しくも敗れた清水が、『令和新世代』というDRAGON GATEのメインストリームに挑む様は、若手中心で回るサイクルに反旗を翻すアクションと言っても過言ではない。

 現状の日本国内団体では他の追随を許さぬほど新陳代謝の早い若手中心のサイクルの中に、【現世代の逆襲】というテーマまで組み込めていけたのなら、2020年に展開された『闘龍門vs. DRAGON GATE vs. R.E.D.』の3軍割拠と異なる世代抗争も見込めるのではないだろうか?

 ユニットの結成や解散を目まぐるしく繰り返していた時期に比べれば、現在のストーリー展開や抗争劇は比較的大人しさも感じられてしまうが、ストーリー展開のサイクルが【スクラップ&ビルド】から【若手の台頭による新陳代謝】に変わったと考えれば、この変化にも納得はいくのである。

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『菊田円-箕浦康太』令和新世代闘争も菊田防衛で見せた圧倒的実力差

<メインイベント オープン・ザ・ドリームゲート選手権試合>
【王者】○菊田円
(28分7秒 ローリングラリアット⇒片エビ固め)
【挑戦者】●箕浦康太
※王者が2度目の防衛に成功

 オープン・ザ・ドリームゲート王座戦。

 2021年は『YAMATO vs.箕浦康太』、2022年は『吉岡勇紀vs. Eita』と、直近の大田区ビッグマッチは現世代と新世代による世代間闘争の様相が色濃いドリームゲート王座戦だったが、今回は『令和新世代』対決。今年5月に団体史上最年少&最短キャリアでドリームゲート王座を戴冠した菊田円に、シングルトーナメント戦・『KING OF GATE』史上初の3年連続ファイナリスト&2023年覇者の箕浦康太が挑む構図となった。

 今年7月の神戸ワールド記念ホール大会でも同王座挑戦を果たしている箕浦としては、ここで悲願の最高峰王座戴冠という機運も漂っていたものの、蓋を開けてみれば菊田の自力が箕浦を圧倒する試合内容に。箕浦の自力が足りなかったという面もあるのかもしれないが、それ以上に、飛び抜けていた菊田の成長度合いが浮き彫りになっていたのである。

 軽量級の選手が多いDRAGON GATEでは珍しいヘビー級レスラーの菊田に対して、箕浦が力勝負で挑んでしまったことも痛い。2021年の大田区メインでは、YAMATOを相手に吉野正人の得意技・トルベジーノからのソルナシエンテというジャベで追い詰めていた残像が色濃かっただけに、当時とはユニットもキャラクターも異なるとはいえ悔やまれる攻め方のように映った。

 極めつけは中盤戦の打撃合戦だろう。箕浦が強いエルボーを菊田に当てていくが、菊田が放った逆水平チョップは強い破裂音を大田区総合体育館内に響き渡らせる。あまりにも圧倒的な打撃音の差に、『箕浦悲願のドリームゲート戴冠』という青写真は音を立てて瓦解した。その後も箕浦は菊田を追い詰める動きが出来ぬまま、試合はラリアットで菊田が勝利。磐石の内容で菊田が防衛に成功したのである。

 菊田は試合後、「一つ、分かったことがあります。自分がチャンピオンになって、環境がどう変わるのか、僕がどう変わるのか、正直疑問でした。チャンピオンになって大きく変わった事は、DRAGON GATEを好きな気持ちです。」とマイク。若手主体で回る団体内サイクルで現在中心に立つ菊田が、主力や若手有望株の離脱も見られるDRAGON GATEで示した一言は、希望の錨とも言うべき内容であった。前年のメインで吉岡勇紀が「満員にしたい」という思いを、悲愴感を漂わせながら口にしていたのとは対照的にも映る。

 前年大田区大会の観衆が1,790人に対し、今年は観衆1,898人と約100人増。飲食店やコンビニに置かれている大田区ビッグマッチ恒例の優待券効果で、当日券販売の11:30を前に30人近くが並んだ事も大きいだろうが、ゲスト参戦は最低限で若手を軸にしても動員は伸ばせることを証明してみせた。他団体でも中々満員にならない印象のある大田区総合体育館も、向正面のスタンド席を潰す仕様ながら各方角に観客が入り、満員まであと少しという格好のつく所に戻してきたのは明るい材料と言えるだろう。

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