[ファイトクラブ]旗揚げ2年目GLEATキーマン伊藤貴則?”LIDET UWF”再興へ追い風

 2021・7・1に産声を上げたGLEATが、旗揚げ2周年を迎えようとしている。7・1の旗揚げ記念大会だけでなく、8・4両国国技館大会の開催も発表するなど、攻めの姿勢は変わらず。そんな中、旗揚げ以降存在感が消えつつあった【LIDET UWF】ブランドが、今大会のメインイベントで息を吹き返すかのような好勝負を見せた事は収穫だった。その立役者になり得る存在こそ、旗揚げメンバーながら辛苦を経験した伊藤貴則に他ならない。


[週刊ファイト6月15日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼旗揚げ2年目控えるGLEATキーマンは伊藤貴則?”LIDET UWF”再興へ
 photo & text by 鈴木太郎
・旗揚げ2年で勢い失う【LIDET UWF】ブランド
・ブランド再興の嚆矢だった『伊藤貴則vs.青木真也』
・LIDET UWFルールで記憶に刻んだパイルドライバー
・伊藤貴則の2年間が結実した追い風吹くメインイベント激勝!
・斉藤ジュン&レイ激闘制しタッグ王座戴冠!チェック島谷&田村ハヤト組
・シングル王座も含めて初の”王座外部流出”
・王者組が地力勝るも伸び代ばかりの斉藤兄弟
・旗揚げ2周年も攻めるGLEAT!
・『T-Hawk-渡辺壮馬』&『BULK-60seconds』解散戦
・8・4両国国技館大会決定
・【三羽烏】一角・渡辺壮馬掴んだ大舞台タイトル戦
・DRAGON GATEお家芸『ユニット解散マッチ』GLEAT降臨!ユニット抗争新章突入へ
・旗揚げ2年目も止まらぬ攻めの姿勢!8・4両国国技館大会開催発表
・”約3年9ヶ月振り”の両国国技館帰還へ


■GLEAT 『GLEAT Ver.EX “FACE-OFF” ACCESS 2 TDCH』
■日時:2023年6月7日(水) 18:30開始
■会場:東京・後楽園ホール 観衆732人(=主催者発表)

 2021・7・1、GLEAT TOKYO DOME CITY HALL大会。同団体の本旗揚げ戦でもあった大会のメインを務めたのは、『伊藤貴則vs. SHO』だった。
 UWFルールで新日本プロレス所属選手と対峙した伊藤であったが、プロレス的な受け攻め主体でSHOの前に危険な場面を作りきれず敗戦。大会終了後は、UWFルールというシチュエーションや、前半に組まれた純プロレス部門の盛り上がりに対するUWF部門のチグハグ感もあり、伊藤に対して賛否分かれる評価がなされた。

▼GLEAT旗揚げ札止め!前半Gプロ4後半UWF4試合SHO-伊藤貴則+橋本千紘

GLEAT旗揚げ札止め!前半Gプロ4後半UWF4試合SHO-伊藤貴則+橋本千紘

 旗揚げ当初、純プロレス部門・【G PROWRESTLING】とUWFルールを軸に闘う【LIDET UWF】の2ブランド制が取られたGLEATだったが、その後は明暗が分かれることになった。

 【G PROWRESTLING】は月1回ペースの興行を東京、大阪、名古屋、福岡、北海道といった主要都市で開催してチケット完売も続いたのに対して、【LIDET UWF】は年3~4回ペースでブランド単独の興行は東京のみ開催。その上後者は、徐々に興行のペースが落ちていっただけでなく、2022年12月には【GLEAT MMA】という総合格闘技色を強めた興行を開催した事や、松井大二郎の退団もあり、【LIDET UWF】ブランドは勢いを失いつつあった。
 いつしか、UWFルールを軸にした試合が純プロレスである【G PROWRESTLING】の興行内で組まれるなど、忘れ去られた感のある同ブランドだったが、2023年1月に新たな転機が訪れる。LIDET UWF王座創設され、トーナメント形式で初代王者を決定する事が発表されたのである。

 所属選手だけではなく、佐藤光留や青木真也といった外部参戦組も名を連ねた、LIDET UWF初代王座決定トーナメント。
 全16選手参加によるトーナメントの決勝戦は『伊藤貴則vs.青木真也』。4・12後楽園ホールで行われた準決勝では、LIDET UWFのライバル団体・ハードヒットの佐藤光留に完勝した青木に対し、飯塚優に勝利したものの総合のような決め切る流れに乏しかった伊藤という対照的な内容だった。2人の対戦は、青木の敗戦が考えられない雰囲気すら漂っていた。

 ただ、試合は伊藤が優勢に事を運ぶ。伊藤の強い蹴りを嫌がる青木の反応を見逃さず、伊藤は強い蹴りを当てて青木の膝をマットにつかせ、連続ダウンを奪った序盤戦。
 5ポイントロストルール制の試合で、早くも青木から2ポイントを削る展開となったが、ここから青木も巻き返す。一瞬の隙を突く形でアームバーを極めて、伊藤をロープエスケープに追い込み、伊藤が1ポイント喪失。そこから腕に蹴りを当てていき、あっという間に戦況は青木3ポイント-伊藤2ポイントと戦況はひっくり返っていた。

 中盤以降、伊藤の勝ち筋が見えず、このまま万事休すかと思われたが、終盤になって伊藤の猛攻が待っていた。青木の脳天をパイルドライバーで突き刺すと、そこから更に投げっぱなしジャーマン・スープレックスが炸裂。青木をノックアウトに追いやり、伊藤が大逆転勝利。LIDET UWF王座戴冠を果たしたのである。
 UWFルールながら、通常のプロレス色が強いフィニッシュに賛否は分かれるかもしれない。しかし、それ以上に、伊藤のパイルドライバーは会場のボルテージを一気に高め、試合の説得力を確固たるものにして見せた事実は、評価されてしかるべきだろう。

 正直なところ、大会前はメインがタッグ王座戦ではなくLIDET UWF初代王座戦だった事に対して、盛り上がりの面で不安も感じていた。しかし、この日一番盛り上がった試合はメインだったのではないだろうか? 終盤の猛攻には会場中の熱気がぐんと上がり、伊藤や青木に注がれる声援も大きかった。今大会唯一のLIDET UWFルールで、他のカードと雰囲気が異なっていた中でのメインで、この盛り上がりを残せたことは称賛に値するだろう。
 伊藤にとっても、シングル王座戴冠はWRESTLE-1時代に獲得し、2018年2月に陥落した若手主体のリザルト王座以来であった。WRESTLE-1では、2020年1月にヒールターンの動きを見せるも直後に団体が活動休止を発表。GLEAT入団後も、2021年7月の旗揚げ戦メインでの辛酸や、他ユニットの後塵を拝すなど、持っているポテンシャルが結果に繋がらない日々が続いた。しかし、この日のメイン終了後に起きた会場の盛り上がりは、GLEAT旗揚げ後に歩んできた2年余りの日々が報われ、伊藤にとって1つのストーリーが結実した証左であった。

 そんな1つのストーリーが終わりを迎えた直後、伊藤の新章が幕を開けることになる。2023.7.1のGLEAT旗揚げ2周年大会において、みちのくプロレスのフジタJr.ハヤトとの王座防衛戦が決定したのだ。
 奇しくも、GLEATの旗揚げ記念日である7・1は、2022年に病気療養中だったハヤトが復帰した日でもある。当時は平日にもかかわらず、みちのくプロレス後楽園ホール大会とGLEAT TOKYO DOME CITY HALL大会が行われていた。550mしか離れていない会場で展開された大興行戦争から1年後に、両団体の雄が同じ大会で交わる事実に、筆者はドラマを感じずにはいられない。

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