[ファイトクラブ]令和の女子プロ革命起こせるか?全3試合も革新的要素満載”Evo女”

 全日本プロレスの老舗ユニットEvolutionから派生した女子プロレス部門「Evolution女子」。2020年春の構想段階から紆余曲折有りながらも足掛け3年で旗揚げに至った所属選手3名による小規模団体だが、全3試合に既存の女子プロレス団体にはない魅力が存分に詰められていた。Evolution女子は令和の女子プロレス革命者となれるのか? 第3弾興行の全試合レビューをお届けしたい。


[週刊ファイト6月15日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼令和の女子プロ革命起こせるか?全3試合も革新的要素満載”Evo女”
 photo & text by 鈴木太郎
・2020年の女子部門構想が霧散に終わるも発足したEvo女
・”一から女子選手育成に取り組む”という唯一無二の強み
・他の女子プロレスにない女性大声援な会場!ここが凄いよEvolution
・圧倒的な女子の声援こそ、既存女子団体に無い武器
・「女子プロレスを普段観ていない人が、Evo女を観に来る」事実
・見た目綺麗でも筋金入りな気持ちの強さ
・ZONES水波綾に猛突進!Evolution女子慧眼発揮オープニングマッチ
・2023年デビュー組の有望新人ZONES
・コの字角度逆エビ固めで梅咲遥完勝も粘り凄まじいサニーの屈強精神
・梅咲の”コの字型逆エビ固め”に見たサニーの強靭な粘り
・Chi Chi玉砕もSareeeに爪痕 プロレス知らないからこそ生まれた強気
・元WWEスーパースターに怯まぬ強心臓!
・最後まで気持ちが折れない素晴らしさ


■Evolution 『Evolution新木場大会#3』
■日時:2023年6月4日(日) 19:00開始
■会場:東京・新木場1stRING 観衆200人(=主催者発表)

 全日本プロレスのユニット・Evolutionが女子部門を設立することを発表したのは、2020年春の事だった。
 団体の幅を広げようと、同ユニットから女子選手を一から育成する形でデビューさせるというプランを諏訪魔が発表し、アドバイザーとして、アイスリボンから藤本つかさ、選手として藤田あかねが兼任で加入。練習生1名で企画がスタートしたものの、練習生の退団、藤田あかねのアイスリボン退団、2022年の藤本つかさ無期限休業発表により霧散に・・・。

 しかし、2022年に全日本プロレスと別法人で女子選手育成プロジェクトが再始動。一から練習生を募る形で始まった企画には5名の練習生が集まり、2022・9・18全日本プロレス日本武道館大会で初の御披露目。
 翌2023年春にEvolution女子の旗揚げが発表されると、ZONES(ゾネス)、サニー、Chi Chi(チーチー)の3選手が1期生としてデビューを果たした。


▼3選手Sunny Zones Chi Chi 女子団体Evolution3・31新木場旗揚げ

3選手Sunny Zones Chi Chi 女子団体Evolution3・31新木場旗揚げ

 日本国内における男子団体の女子選手登用の流れは、近年変化を遂げつつある。単なる女子プロレス提供試合を行うところから地位は向上しており、シングル王座を創設して本興行に絡ませるようになった新日本プロレス、本興行に女子選手の試合を組み始めたプロレスリング・ノアのような、日本プロレスの系譜を継ぐ団体も女子選手の試合に目を付けるようになった。

 しかし、全日本プロレスの場合、既存団体やフリーランスではなく、一から女子選手育成に取り組んでいる点で新日やノアと大きく異なっている。果たしてEvolution女子とはどのような団体なのか? 筆者はその目で確かめるべく、旗揚げ3大会目となる6・4新木場1stRING大会に足を運んだのであった・・・。

他の女子プロレスにない女性大声援な会場!ここが凄いよEvolution

 Evolution女子は発足間もない団体ではあるが、現地に足を運んでみて、数多くある国内の女子プロレス団体と明らかに違う個性が見られた。

 一番印象に残っていたのが、女性客の声援の大きさである。彼女たちは恐らく選手関係者だと思われるのだが、誰よりも声を出し、リングに立つ所属選手を応援していた。どの女子プロレス団体でも聞こえないくらい、圧倒的に女子の声援が多い女子プロレス団体の大会に筆者は驚きを隠せずにいた。

 さらに驚かされたのは、第2試合で組まれた『梅咲遥vs.サニー』の試合中のことだ。梅咲の容赦ない攻撃を見た女性客が、叫ぶように「この選手強いよ!」と洩らした。今の女子プロレスを観ているファンであれば、各団体にお呼ばれする梅咲遥の活躍と実力は少なくとも知られていそうな気はするのだが、この観客の反応を見て「女子プロレスを普段観ていない人が、Evolution女子を観に来ている」事実に気付かされた。公園や商店街で行われるようなイベントプロレスではなく、有料興行で率直な反応が聞けるのは実に新鮮であった。

 ただ、それ以上に胸打たれたのは、3選手の試合である。見た目は綺麗でも、試合中に見せる気持ちの強さは筋金入りだった。メインイベントでSareeeと対峙したChi Chiは、元WWEのハイキャリアを持つ相手に物怖じする様子は一切無し。少しでもSareeeの存在を知っていたら心を折られそうな攻めにも、最後まで折れる事が無かった。まるで人形のような可愛らしい見た目からは想像もつかない程、怯まぬ積極的な姿勢は琴線に触れるものがあった。

 大会終了後に3人は試合の反省点を述べつつも、決して下を向く姿は見せなかった。「目先の勝利よりも、どんどん強い人と戦わせていただいて、自分のレベルを上げて最強になる」というZONESの言葉や、Sareee戦のプレッシャーを楽しみ「生きているってことだと思えた」とChi Chiの感想などは、前向きな姿勢が窺えた。

 当初のようなアイスリボンの提携も霧散に終わり、発足当初にいた諏訪魔がVOODOO MURDERS加入により離脱というアクシデントはありながらも、男子レスラーの石川修司がコーチ役を務めて、3選手が一から練習してリングに立てるようになった事は評価されるべき事案ではないだろうか? 女子選手の育成ノウハウに乏しい状況で、一から育成させていくメソッドの確立は、新日やノアでは出来ない事でもある。

 Evolutionとは進化を指す。進化する上で今の彼女達に足りないのは、試合経験だろう。その不足が埋まるようになれば、進化は自然と付いてくる。そのような信頼と期待が、Evolution女子の面々には備わっている。
 だからこそ、今のEvolution女子に足りないのは、経験と場数である。現状は月1ペースで大会が組まれているものの、それだけでは足りない。それこそ、一度頓挫したアイスリボン参戦というのも縁があって面白そうではあるのだが、今後絡むことはあるのだろうか?

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