[ファイトクラブ]フワちゃん考他+横浜アリ第1試合陰に長与千種、再デビュー星来芽依

 今週号収録のスターダム特集・詳細版3本目は、当夜には早くも地上波中継された本戦第2試合、フワちゃんの試合を軸に、大会の肝はなんであったのかを掘り下げての分析と総括を試みる。

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▼女子プロNo.1証明したSTARDOMビッグマッチ横浜アリ観衆5,539人

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▼女子プロ横アリ 中野たむジュリア 岩谷麻優Mモネ 白川未奈上谷沙弥

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’23年05月04日号スターダム横アリ特集 NXT春祭 新日本キック 宮原華音 Clapton武道館


[週刊ファイト5月4日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼フワちゃん考他+横浜アリ第1試合陰に長与千種、再デビュー星来芽依
 photo: K.D.R. 佐伯順 鈴木太郎 by 佐伯 順 w/編集部編
・スターダムALLSTAR GRAND QUEENDOM 2023とマーベラスの明暗
・世間に知られてる選手無く 環状線の外側集客には「フワちゃん第2戦」
・ドンキ980円麦焼酎がひめかラベル3,000円!ボッタクリ商法多発中
・トリを任されたジュリア中野たむが響いた点で成功と評すべき大箱興行
・素直にオメデトウ!”宇宙一可愛い”中野たむの赤いベルト戴冠の締め


スターダムALLSTAR GRAND QUEENDOM 2023とマーベラスの明暗

 横浜アリーナで女子プロレス興行が行われるのは実に20年振り。2003年の全日本女子プロレス興行末期、旗揚35周年記大会以来となる。
 「横浜アリーナ」、「女子プロレス」という2つの単語から引き出されるキーワードは数多いが、筆者のキーワードは、クラッシュ・ギャルズブームが終わり、神取戦の訴えも不発。1989年にここで引退興行を行った「長与千種」だ。
 長与が現在率いている団体「マーベラス」の設立目標は、「横浜アリーナで興行を」である。
 これは(長与いわく)「父の遺言」であり「松永会長(全日本女子プロレス興行、最後の会長)との約束だ」と公言している。皮肉なことに、マーベラスは現在、新木場1stリングが精一杯で年に一度の旗揚げ記念興行の後楽園ホールすらままならぬことが多い。

 スターダムとマーベラス。
 一度は天下を取ったスーパースター長与千種と、当時のマネージャーでありこれまた一度はホームレスまがいの人生まで経験したロッシー小川氏が立ち上げた女子プロレス団体。同じ「スポンサーのいない手作り」から始まってこの差はなにか?
 大きな答えの一つは選手の定着率、というより「育成と離脱」であろう。

 マーベラスは新人選手と両親に対し「大事なお嬢さん(中卒女子)をお預かりするからには高校までは責任を持ちます。(通信制高校で学ばせる)」が選手募集欄に大書されていたが、その約束は守られず、入団した若手選手たちは千葉県・船橋市の長与のカラオケ居酒屋で酔客相手の接客をさせられてた。
 そして2021年8月、「響」「神童ミコト」「星月芽依」の人気若手選手3人は、当時日の出の勢いであったスターダム移籍を夢見て夜逃げ離脱する。
 マーベラス代表である長与は表面上「私の不徳の致すところ」、「若い3人には違約金のようなペナルティは一切課さない。それぞれが信じた道で頑張ってほしい」とした。しかし実際には旗揚げ間もなく離脱した雫有希(現在フリー)の時と同じく、各団体や関係者には「離脱した選手と接触したら長与千種及びマーベラスは、今後貴団体とは一切かかわらぬ」との凶状が回された。なにしろマーベラスはこれ以降、他団体選手を借りても4試合組むのがやっとの有り様だ。

 プロレスを続けたかった3人はSNSさえ控えることになり途方に暮れた。結果、「響」は業界入りの際にスカウトしてくれた井上京子を頼り、仙台女子へ円満移籍(現在は活動休止中)。神童ミコトは両団体が互いに選手の足りぬ中、交流戦で知り合ったWAVEのGAMI代表に泣いてすがり、1年の謹慎ののち長与に話を通してもらい、今では「狐伯」のリングネームでWAVEで活躍している。
 問題は、3人の中で最も華があり長与が期待していた星月芽依だ。寄る辺なき彼女はプロレスを愛しながら故郷・沼津に帰省し、飲食店厨房でアルバイトの傍らジムで練習に励む。そしてある後援者経由でようやく念願のスターダムにたどり着き、ロッシー小川が長与に筋を通し、本日の再デビュー戦にたどり着いた。

 団体初進出の横浜アリーナ大会、リングネームを「星来芽依(ほしきめい)」と改め、タッグマッチで団体の若手生え抜き人気選手であるスターライト・キッドと組み、相手はこれまた生え抜き人気選手のAZM、そして我闘雲舞の若手テクニシャン、駿河メイという扱いだ。
 キッド、AZM共にインタビューで「もう、こういうのはやらない・できない」というほどのハイスピードバウトの中、フォールを取ったのは星来芽生。自身21歳の誕生日に、この上ない花を添えたのだ。

<第1試合 スーパーハイスピード タッグマッチ 20分1本勝負>
駿河メイ ●AZM
 9分49秒 流れ星
スターライト・キッド ○星来芽依

 女子プロ業界の名伯楽・ロッシー小川は、長与マーベラスのような古臭い「道場論」「寮制度」「上下関係」を嫌い、今風にアレンジした。愛川ゆず季や風香など歴代、選手に年齢の近いコーチ役を配して巧に人心掌握させてスターダムをダイヤの原石とし、ブシロードグループと握手が出来て今日がある。
 お山の大将・長与(実際、マーベラス関係者は例外なく長与のことを「大将」と呼ぶ)は、30年前の感覚のまま団体立上げと運営に取り組んでしまった。そしてそれをとがめる側近がいなかった。KAORU、渡辺智子しかり。成功したGAEAジャパンの時の様に、芸能事務所が立ち上げて最後まで長与を役員にしなかったのは、おそらく最初から長与の性格と若手育成とのミスマッチが見えていたからであろう。実際、道場と選手育成はKAORU任せであった。

 過去、長与は遺恨のあった選手や若手といえど、再デビューや節目の試合には必ず花束を手に駆けつけ遺恨を清算してきた。水商売らしい「周年」の発想であるが、この日、長与の姿は横浜アリーナにはなかった。同日、自身のYouTubeでは子飼いの彩羽匠と、くだらぬ旅行動画をせっせと更新しているのに、だ。

 ゴールデンウィークを控え、好天日曜の横浜アリーナ。タイトルマッチでベルトは全て移動、ドローは無くほぼ全試合20分以内のサクサクモードで20時過ぎには終了の本戦だけなら4時間の興行。遺恨やロングラン興行の昭和は遠い。
 明日が見えなくなった長与は、老朽化した横浜アリーナの影に、身体的にも業界内地位的にも、老いた自身を投影したのかもしれない。

世間に知られてる選手無く 環状線の外側集客には「フワちゃん第2戦」
<第2試合 フワちゃん第2戦 タッグマッチ 20分1本勝負>
●フワちゃん 葉月
 14分19秒 ジャーマン・スープレックス・ホールド
○林下詩美 天咲光由

 よく、「スターダム史上最大の5,539人集客」と報道されたのだが、逆に「まだ、そんなに少ないのか」と思った方は少なくないと思われる。昔の女子プロレスのオールスター戦での横浜アリーナなり、今に絞っても「大箱の半分以下じゃないか」と、実際現場に行かれたならコロナ時代よろしく席を1つずつ空けてあって、まずその光景がショックでもあった。
 なにしろ「ジュリア」と言っても、環状線の外側にはまったく届いてはいない。まだまだヲタク相手のマイナーな趣味ジャンルに甘んじていて、そうなると「フワちゃん第2戦」なのである。

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