[ファイトクラブ]”定石破壊”が違いを生んだスターダム代々木大会アイスリボン活かす

 スターダムによる春のビッグマッチ・『TRIANGLE DERBY』優勝決定戦。
 4・23横浜アリーナ大会まで約半月ペースで開催されていく春のビッグマッチは、第1弾から凄まじい熱量と興奮を会場にもたらした。
 横浜アリーナの主要カードも決まった今大会。大会の大きなカギを握った箇所は、試合順だったのではないだろうか・・・?
 異様な盛り上がりを見せた、スターダム代々木ビッグマッチの全試合レポートを掲載する。


[週刊ファイト3月16日号]収録 [ファイトクラブ]公開中
▼”定石破壊”が違いを生んだスターダム代々木大会アイスリボン活かす
 photo & text by 鈴木太郎
・ターニングポイントは、【普段と異なる試合順】
・ケツから赤いベルト遺恨戦セミも格・序列・定石を破壊した試合順の妙
・定説や定石の破壊が生んだ盛り上がり王座の序列や格に依らない試合順
・フューチャー王座次期挑戦者決定戦天咲未由、妃南3way制すは吏南
・ダークマッチじゃ勿体ない!Queen’s Quest林下詩美レディC-レネミー
・桜井と月山の鮮烈なマッチアップ!火花散らすオープニングバトルから
・層の厚さ誇るSTARS大江戸隊は後者軍配 フキゲンです☆10人タッグ
・なつぽいハードバンプ華を添えるも・・・暴れん坊GE見事リベンジ勝利
・外敵同士でも落ちない盛り上がり!王者組プロミ貫録見せる決勝進出
・見せつけた圧倒的実力差!橋本千紘完勝で、いざ横浜アリーナ朱里戦
・潮目を変えた、【試合順降格】のワンダー王座戦
・大会に火を点ける激闘!上谷沙弥ワンダー王座V15教官・葉月落し前
・凄いプロレスする女子躍動!AZMハイスピードV10スターライト・キッド
・「最高峰王座で遺恨戦」という攻めの一手
・延長コール飛び交う雪妃真矢ケンカマッチ!ジュリアV2 横アリ決戦へ
・外敵王者誕生でも大盛りあがりなメインイベント
・TRIANGLE DERBY優勝決定戦ウラの裏”外敵流出”も高支持率の会場


■スターダム『TRIANGLE DERBY Ⅰ~優勝決定戦~』
■日時:2023年3月4日(土) 15:20第0試合開始 16:00本戦開始
■会場:東京・国立代々木競技場・第二体育館
■観衆:1919人(主催者発表)

 2023・1・3横浜武道館大会から、約2ヶ月にわたり開催された新シリーズ・『TRIANGLE DERBY Ⅰ』。

▼肝は”ユニット抗争”実験的でも安定感抜群な『TRIANGLE DERBY』の怪

[ファイトクラブ]肝は”ユニット抗争”実験的でも安定感抜群な『TRIANGLE DERBY』の怪

 6人タッグによるリーグ戦は、4チームによる決勝トーナメントに突入。国立代々木競技場・第二体育館で争われたトーナメントで優勝を成し遂げたのは、世羅りさ&鈴季すず&柊くるみの『プロミネンス』だった。
 急遽、現在保持しているアーティスト・オブ・スターダム王座も賭けて行われた朱里&MIRAI&壮麗亜美との優勝決定戦は、鈴季すずがMIRAIからジャーマン・スープレックス・ホールドで3カウントを奪取。王者チームが、勢いそのままにリーグ戦を制した。


ケツから赤いベルト遺恨戦セミも格・序列・定石を破壊した試合順の妙

 今回のビッグマッチのメインは、団体最高峰であるワールド・オブ・スターダム王座ではなく、6人タッグリーグの優勝決定戦だった。
 そして、ワールド王座に次ぐ格を有するワンダー・オブ・スターダム王座についても、この日はハイスピード王座戦・『AZM vs.スターライト・キッド』よりも下に配置されるなど、ベルトの格や序列を重んじる印象の強い団体では珍しいカード順となった。


 しかし、普段と異なるカード配置は、今大会に凄まじい熱量をもたらした。

 第6試合のワンダー王座戦・『上谷沙弥vs.葉月』の一戦は、戦前に試合順の悔しさを滲ませていた葉月が、鬱憤を晴らすかのような攻めっぷりを披露。
 大会のギアを一気に上げ、潮目を変えるターニングポイントになった。

 第7試合のハイスピード王座戦も年間ベストバウト級の試合を残すと、セミファイナルのワールド王座戦・『ジュリアvs雪妃真矢』は一転して喧嘩マッチに。
 しかし、格や歴史に囚われることなく怒りをぶつけ、火花を散らし合い、両者リングアウトで終了後も「延長」コールが鳴り止まない異例の光景となった。

 そして、メインのリーグ戦優勝決定戦では、急遽賭けられたアーティスト王座も見事に防衛したプロミネンスが、リーグ戦の初代覇者に輝いた。

 今大会で、4・23横浜アリーナ大会の主要カードも出揃った。




 
 横浜アリーナまで半月ペースでビッグマッチが行われる中でも、今回の新シリーズが約2,000人を動員したのは、スターダムの持つ勢いに他ならない。
 それでいて、最高峰王座から順に配置する試合順の定石や、王座戦に求められがちな格式を無視した試合配置が、強い盛り上がりを生んだ。

 ともすれば博打に見える勝負も、仕掛けてキッチリ勝てる今のスターダムは強い。それは決して、団体規模や選手層という要素だけで片付けられるものではないだろう。

フューチャー王座次期挑戦者決定戦天咲未由、妃南3way制すは吏南

<第0-1試合 3WAYバトル 15分1本勝負>
○吏南
(5分53秒 ジャックナイフ・ホールド)
天咲未由
※もう1人は妃南


 【フューチャー・オブ・スターダム王座次期挑戦者決定戦】だったという3WAYマッチ。
 3人の中で光を放っていたのは吏南だったか。現役高校生にして、試合を牽引するリード力の高さは特筆すべき点である。
 3WAY形式というゲーム性の高い試合も難無く制してみせた吏南は、この勝利を以て、壮麗亜美の持つシングル王座に挑戦することが決定。
 壮麗の戴冠直後、同王座に関する発信力の無さを彼女に対して指摘していた吏南が、満を持して対角線に立つ。

ダークマッチじゃ勿体ない!Queen’s Quest林下詩美レディC-レネミー

<第0-2試合 15分1本勝負>
○林下詩美&レディ・C
(7分25秒 ジャーマン・スープレックス・ホールド)
ラム会長&●尾崎妹加


 リーグ戦敗退者同士とは言え、ダークマッチに組まれる事が非常に勿体ないとすら思ってしまったタッグマッチ。
 この試合では、パワーのある尾崎と林下のマッチアップが要所で光っていた。最後は林下がジャーマン・スープレックス・ホールドで勝利するも、双方のぶつかり合いにおける当たりの強さは、『5☆STAR GP』といったシングルリーグ戦でも是非お目にかかりたいカードだった。

桜井と月山の鮮烈なマッチアップ!火花散らすオープニングバトルから

<第1試合 15分1本勝負>
舞華 ○桜井まい テクラ
(10分20秒 ローリング・ギロチン⇒エビ固め)
白川未奈 マライア・メイ ●月山和香


 月山と桜井のライバルストーリーに主眼が置かれていた。
 桜井の実力と、月山の会場支持率の高さは、オープニングから火を点けるには充分な材料だった。最後はローリング・ギロチンで桜井が勝利。

 昨年12月の時点で、中野たむより「残り3ヶ月で勝利を挙げられなければコズエン離脱」を通告されていた月山だったが、未だに勝利が出ていない。
 ただ、会場の声援が解禁された事で、彼女に対する声援量の多さが可視化されたのも事実。追い込む場面も見えているだけに、あとは結果だけ。そこさえ取れれば・・・。

層の厚さ誇るSTARS大江戸隊は後者軍配 フキゲンです☆10人タッグ

<第2試合 15分1本勝負>
刀羅ナツコ 渡辺桃 鹿島沙希 琉悪夏 ○フキゲンです☆
(8分20秒 後方回転エビ固め)
岩谷麻優 コグマ 羽南 飯田沙耶 ●向後桃


 STARSと大江戸隊による10人タッグマッチ。
 リーグ戦終了後の敗退メンバーがメインとはいえ、第2試合の多人数タッグマッチに双方の主戦級を惜しげもなく投入できる点に、スターダムの誇る選手層の厚さを実感。

 多人数タッグだからこそ、大江戸隊で試合を決められるフキゲンです☆の存在は大きい。この日も向後桃から完璧な丸め込みで3カウントを奪取。ユニットとしての総合力の高さを見せつけた。

なつぽいハードバンプ華を添えるも・・・暴れん坊GE見事リベンジ勝利

<第3試合 TRIANGLE DERBY Ⅰ準決勝 15分1本勝負>
○朱里 MIRAI 壮麗亜美
(11分30秒 白虎)
中野たむ ●なつぽい SAKI

 リーグ最終公式戦と同一カードとなった、トーナメント準決勝。
 公式戦ではCOSMIC ANGELSが勝利した一戦も、この日はGod’s Eyeの強烈な攻撃が容赦なく襲い掛かった。

 そして、この試合はなつぽいの存在なくして成立できなかった。
 彼女の凄まじい受け身の数々は、God’s Eyeの攻撃力を可視化させるには充分すぎる要素だった。
 最後は朱里が白虎でなつぽいからギブアップ勝利。公式戦のリベンジを果たし、決勝へと駒を進めた。

外敵同士でも落ちない盛り上がり!王者組プロミ貫録見せる決勝進出

<第4試合 TRIANGLE DERBY Ⅰ準決勝 15分1本勝負>
世羅りさ ○鈴季すず 柊くるみ
(10分36秒 グラン・マエストロ・デ・テキーラ)
高橋奈七永 優宇 ●水森由菜

 フリーランスとプロミネンスという、所属選手が一人もいないカードだったので、盛り上がりはどうなるのかと気になりながら見ていたのだが、試合序盤から双方に注がれる声援で、そんな不安は一蹴されてしまった。

 前の準決勝同様、公式戦で敗戦を喫したプロミネンスが雪辱を果たす結果も、不思議と「ああ、やっぱりね」という感じが無かったのは、フィニッシュで鈴季すずが放った、グラン・マエストロ・デ・テキーラの芸術性と説得力も大きい。

 試合後、鈴季がGod’s eyeに向けて「決勝戦でアーティスト王座をかけてもいい」とマイクを握ると、朱里も承諾。
 6人タッグリーグの初代覇者が決まる一戦に、6人タッグ王座が賭けられる、この上ないシチュエーションとなった。

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