[Fightドキュメンタリー劇場 36]I編集長が語る8・26“夢のオールスター戦”1979

[週刊ファイト8月25日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼[Fightドキュメンタリー劇場 36] 井上義啓の喫茶店トーク
 I編集長が語る8・26“夢のオールスター戦”1979
 by Favorite Cafe 管理人


 

 メインエベントが終わって猪木が「馬場さん、今度二人がリングに上がるときは闘う時です!」とマイクアピール。そして馬場は「よし、やろう」と答えた。これが“夢のオールスター戦”のハイライト・シーンとなった。

■ 闘いのワンダーランド #072(1997.03.14放送)「I編集長の喫茶店トーク」
 1979.10.04 蔵前国技館
  NWFヘビー級選手権試合 インディアンデスマッチ
   アントニオ猪木vs.タイガー・ジェット・シン

週刊ファイト1979年10月16日号

(I編集長) 今日の放送は猪木vs.シン戦。このカードはこれまでも、これからも数多く放送されると思いますので、今日は1979年8月26に行われた「夢のオールスター戦」についてお話しします。この大会は、東京スポーツさんの創立20周年記念事業の中の一つのイベントとして、開催された大会です。東スポさんは当然プロレスマスコミのトップですから、記念事業として大きな試合をやろうと、新日本プロレス、全日本プロレス、国際プロレスの三団体に働きかけたんです。そしてそれが実現に至りました。この「夢のオールスター戦」という言葉と、「8・26」という数字は、当時のプロレス関係者、プロレスファンにはもう頭にこびりついているわけです

(I編集長) しかし、20年近く経過(1997年のトークです)していますから、ご存じない方もいらっしゃるし、いきなり話に入っていくと困ってしまう方もいらっしゃるかも知れませんので、まずアウトラインと言うか、そういったところからお話しておきましょう。
 この東京スポーツさんの20周年記念事業の興行は日本武道館で行われました。観衆は1万6千5百人(主催者発表)ですから、ものすごい数が入ったんです。出場したマスカラスなんかも舞い上がってしまって、「こんな大きな会場で、これだけの沢山のお客さんに来てもらって試合をやれる私は本当に幸せものだ」というようなことを言っておりましたね。あの大スターのマスカラスが興奮するくらいの大盛況で、熱気ムンムンの大会だったわけですよ。

(I編集長) この日のメインエベントが、8年ぶりに復活したアントニオ猪木&ジャイアント馬場のタッグ、BI砲ですよね、これ。相手はタイガー・ジェット・シン&アブドーラ・ザ・ブッチャーです。ブッチャーはご存知のように全日本プロレスのトップの悪役外人レスラーですし、シンは新日本プロレスのトップの悪役外人レスラーですね。ですからこれは、単に日本組vs.外人組のタッグマッチとは違うんですね。かたや、日本プロレス界の2大エースの猪木と馬場、かたや2大ヒールのシンとブッチャーですからね。そういった組み合わせの実現は、当時としては普通には考えられない、非常にシビアなマッチメイクだったんですよ。単なる夢の祭典とか、お祭りとか言うことだけでは無い組み合わせですね、これ。試合は当然猪木&馬場組が、当然と言ったらなんですけどね、日本組が勝つという結果になったんです。これはまあ、シンが猪木に対して二度目のブレンバスターを狙った時に、猪木が「クルッ」と体をひねって後ろに回って逆さに押さえ込むという形で、シンからスリー・カウントを奪いました。これが、まあ、メインエベントの締めくくりで、全試合の一番のハイライトとなりましたね。

ダブルアームブリーカー(左)、逆さ押さえ込み(右:TV放送キャプチャ)

(I編集長) この大会のセミファイナルは、ラッシャー木村とストロング小林の試合でした。ラッシャー木村は国際プロレスのエースですからね、これは少なくともセミファイナルには持ってこなくちゃいけない。そして対戦したストロング小林とは因縁がありましたね。ストロング小林は国際プロレスにおった男ですから、これをぶつけたわけですね。この試合は国際プロレスのラッシャー木村がリングアウトで小林に勝ちました。他にも坂口征二とロッキー羽田の大型同士の試合もありました。この試合は新日プロの坂口が全日のロッキー羽田に勝っています。それから注目を集めたのが「夢の6人タッグ」ですね。ミル・マスカラス&藤波辰巳&ジャンボ鶴田vs.マサ斎藤&タイガー戸口&高千穂明久です。高千穂は今のザ・グレート・カブキですね。

▼79年夢のオールスター戦の裏側 ワールドプロレスリングを創った男

79年夢のオールスター戦の裏側 ワールドプロレスリングを創った男

(I編集長) ベビーフェイス組は、全日の鶴田、新日の藤波と、人気者のミル・マスカラスが組むということで、これはもう当時のファン垂涎の試合です。東京スポーツはこの時のマッチメイクに向けて人気投票をやりましてね、マスカラスが1番だったですよ。その次がなんと藤波、鶴田、タイガー戸口、この3人が同率だったんですよ。これにはちょっとビックリしましたね。タイガー戸口が、これほどファンから支持されているとは思っていませんでしたから。
 たぶんマスカラスが人気1番だとして、2位は誰になるのか。当然、藤波か鶴田かだろうと、みんなが予想し合っていたんです。ただ、馬場にしてみたら、鶴田と藤波を同列に比較するのはケシカラン話だと思っていましたね。ジャンボ鶴田の方が、ずーっと上だと。もう、いまだに馬場さんはそう言ってますよ。「マスコミの皆さんは、なんか鶴田と藤波と同格だというような形でものを言うけどね、それはおかしいんじゃないの?」と常に言ってますね。「ジャンボはここ(上下に大きく手を広げて)で、藤波はここだ。格が違う」という言葉を何回聞きましたかね、これ。

夢のオールスター戦、大会ポスターより藤波・鶴田

(I編集長) だから、オールスター戦の人気投票の時も、馬場にしてみればそういったことだったんですけどね。だけども私は、人気投票ならヤッパリ、最近グングンのし上がってきた藤波だろうと思っていましたよ。ところがそうでは無かったんですね。投票では先ほど言った通りタイガー戸口の人気がすごかったんですよ。タイガー戸口は、当時は凄まじいラフファイトをやっていたんですよ。確かに戸口は存在感あって大型だしね、ヒールであったけども、ファンはその実力を認めていたんですね。だから「ワーッ」と投票が集まったわけですよ。

全盛期のタイガー戸口は鶴田とも互角に渡り合った

(I編集長) それともう一つね、マサ斎藤と高千穂明久、この二人が非常に良かったんですよ。ファンも評価したし、マスコミもこの試合の二人を評価しました。というのはこの二人は、アメリカでコンビを組んでおったんですね。ハッキリ申し上げて、マサ斎藤と高千穂明久がいちばん強い時ですよ。しかもアメリカでそれぞれ一匹狼で闘って鍛えられていた。この雰囲気をオールスター戦の6人タッグの試合にそのまま持ち込んで「ガーッ」と闘ったんです。だから、お祭りであったにもかかわらず、なるほどと思わせる凄い試合をやって見せたんですよ。この6人タッグはただ夢のカードが実現したという事だけで無く、斎藤&高千穂&タイガー戸口のヒール組の闘い方にポイントを置いて見ると、非常に見所のある試合でしたね。

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