[ファイトクラブ]RampageブライアンTバレッタ MOX裸締めウィーラー・ユウタ流血だが

(c) AEW
[ファイトクラブ]公開中 [週刊ファイト4月21日号]収録


■ AEW Rampage
日時:4月6日(現地放送時間 録画番組)
会場:米マサチューセッツ州ボストン アガニス・アリーナ


 最初に本誌既報の通り、ようやくAEWが新日ワールド999円で視聴できることになった朗報から。あらためて解説するが、Dynamiteに続いてRampageが始まった時、団体側の言い分では「決してBショーではない。両方Aショーなのだ」を強調していた。実際、CMパンクの初登場となった昨年の現地金曜夜8月20日、シカゴはユナイテッド・センター大会は大観衆15,316札止めを記録。テレビ放送は1時間番組のRampageだが、単独でビジネス面でも最高額の大会になったのだ。


 ところが、冬になってからに関しては現地水曜夜Dynamiteの3時間目を録画収録して金曜に流すことが大半になってしまい、3時間番組のRAWがどうしても3時間目には視聴率がガクんと落ちるのと同じく、強力なテレビ番組を集中して3時間作るのは、制作する側にしてみればシンドイこと。どうしても3時間目は言葉は悪いが手抜きになってしまい、直近に関しては、本誌がAEW DARKなど傍系番組まで取り上げないのと一緒で、これは紹介に値しないしょぼい内容だと判断された回があった。実際、視聴率データは正直であり、Rampageの数字がどんどん下がってしまい、番組開始以来の最低数字も出てしまい問題になっていたのだ。トニー・カーン代表が、今週のDynamiteの視聴率がケーブル局でNBA中継に続いて2位を大きく自慢していた件は本誌4がt14日号収録の拡大版に報道したばかり。しかし、同時に「Rampageをテコ入れする」とも宣言しており、再びLIVE中継になるRampageの会場日程も発表していた。


 そんな情勢の中での今回、確かに同じボストンの会場からの3時間目に収録された録画番組なのだが、中継構成は全編に気合が入っていた。特にメインを飾ったジョン・モクスリーvs.ウィーラー・ユウタがもの凄く、またジュース(流血戦)なのかの批判は一部であるのだが、お客を完全にコントロールして魅せたのだ。なにしろフィラデルフィアと並んで団体側がベビーフェイスだとやってもブーイングしたり(WWEベビーフェイス時代のローマン・レインズはこれに苦しめられていた)、大阪の客と似ていて結構勝手に声援を判断するところがある。いくら現場監督Bookerが「お客はこう反応するハズだ」とシナリオを作っても、想定した通りには客が納得してくれず、作る側からしたら失敗回が結構ある鬼門の土地柄なのだ。


 ところがどうだ。今回はお客さんは「ユウタ! ユウタ!」と半官びいきもあるのか大声援を送り始めるのである。作る側にしてみたら「してやったり」だ。そう、最後の勝敗はともかく、これはROHの『Supercard of Honor 2022』で新ピュア王者となったばかりの、ウィーラー・ユウタをoverさせるマッチメイクだったのである。そしてそれは見事に作る側の期待に応えて、二人の戦士が最高のプロレス芸術を披露するのだ。


 試合展開が練ってある。強烈なラリアットなどをことごとくカウント2で跳ね返してくるユウタに、ついに必殺パラダイム・シフト(デス・ライダー)が決まる。嗚呼! しかし、これを返すのだ。もうこの辺りからお客さんは興奮状態である。ブルドック・チョークで首を捻じ曲げるのだが、それでもユウタは降参しない。


 ついに2度目のパラダイム・シフトが火を吹く。さすがにこれで終わったのか・・・。いや、それもハネ返したのだ。お客さんがアップセットの期待に燃え上がっている。「会場にヒートを起こす」というのは、こういう状態を指す。恐るべし、難しい役を買って出たMOXなのであった。そして最後のリア・ネイキッド・チョークにさすがにレフェリーが試合を止める。もちろん勝者はMOXだ。しかし、お客とのガチンコ真剣勝負に勝利したのは両者なのだった。

 この試合は番組第1試合のブライアン・ダニエルソンの頭を蹴る非情な攻撃をも踏襲しており、最初と最後を繋げている点でも見事である。そのブライアンとMOXのBlackpool Combat Clubのマネージャー役にして、試合の実況席で解説もしていたウィリアム・リーガル卿がリングイン。いざ、さらにユウタを痛めつけるのかと思いきや・・・。もうお客さんがhandshakeと合唱を始めるのだ。
 これを作った担当エージェント、お客さんの反応を見て恐らく自身の考えたシナリオに涙しているに違いない。完璧にお客がどう動くのか先回りしていたのである。そして二人はガッチリ握手する・・・もう、脱帽なのだ。プロレスは感動を提供するスペクテイター・スポーツです。


 なお、トップ画像と上記は、1時間番組では放送されていない。一応は別団体ROHのベルトなので、まだAEW中継で紹介する必要はないということなのだろう。ただ、公式画像にはあるのだから、紹介しない手はない。ボストンの会場客には、新ROHピュア王者ウィーラー・ユウタの名が刻み込まれたであろう。


 紹介の順番が逆になってしまったが、Rampageの場合はSmackDownが終了した東部時間の夜10時からなので、第1試合が非常に重要なのである。そして、日本にも馴染みのブライアン・ダニエルソンと、「トレント?」ことトレント・バレッタが、これまた日本のファンが喜ぶストロング・スタイルを始めたのだ。
 しかも、ブライアンがドラゴン・スリーパーをやれば、実況陣はすかさず「タツミ・フジナミの技」と指摘し、解説のリーガル卿が、「ワタクシの日本での最初の試合は偉大なる藤波辰爾だった」と受けるのである。「勝ったんだけど」と付け加えるのだが。
 要するに、第1試合から日本通ファンの多いAEW視聴者、さらには日本で見ている皆さんをも引き込まれていく番組回になっていくのであった。

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