[ファイトクラブ]二世レスラーはなぜ少ないのか? 海外とは違う日本の環境

[週刊ファイト10月8日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼二世レスラーはなぜ少ないのか? 海外とは違う日本の環境
 by 安威川敏樹
・日本には少ない二世レスラー
・海外では二世レスラーが目白押し
・日本に二世選手が少ないのは、プロレス界だけではない
・ミスターは我が子に対しアウトオブ眼中!?(死語)
・Leonaはプロゴルファーではなく、父親と同じ道を選んだ
・プロレスラーとプロゴルファー、どっちが厳しい?
・我が子に苦労をかけたくない親心
・「息子には店を継がせない」ある魚屋店主の悲痛な叫び
・日本でも例外的に、親が我が子に後を継がせたがる職業


 先日、本誌はLeonaに単独インタビューを行った。Leonaとはもちろん、藤波辰爾の長男のことである。つまり、Leonaはいわゆる二世レスラーだ。
 しかし、二世レスラーというのは意外に少ないような気がする。魚屋を継ぐのとは違い、親がプロレスラーだからと言って子供もレスラーになれるとは限らないのだが、親のレスラーは我が子に自分と同じ道を歩ませたいとは思わないのだろうか。

▼Leona&藤波辰爾の親子タッグ

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海外では二世レスラーが目白押し

 二世レスラーが少ないと書いたが、それは日本でのこと。海外では、二世レスラーは実に多いのだ。

 パッと思い付くだけでも、ブレット・ハート(父:スチュ・ハート)、ボブ・オートン・ジュニア(父:ボブ・オートン)、ボビー・ダンカン・ジュニア(父:ボビー・ダンカン)、テッド・デビアス(父:マイク・デビアス=血縁関係はなし、母:ヘレン・ヒルド)、ジョー・マレンコ&ディーン・マレンコ(父:グレート・マレンコ)、チャボ・ゲレロ・ジュニア(父:チャボ・ゲレロ)、チャボ・ゲレロ&アーマンド・ゲレロ&ヘクター・ゲレロ&エディ・ゲレロ(父:ゴリー・ゲレロ)……、他にもまだまだいるだろう。
 象徴的なのは、単に子供が親の後を追ってレスラーになっているだけではなく、兄弟レスラーが多い点だ。親子三代にわたってレスラーになるケースも珍しくない。
 日本でも力道山→百田義浩&百田光雄→力(トップ画像は百田光雄と力の父子)のようなプロレス一家もあるが、極めて稀だ。

 海外で特に有名なのはエリック一家とファンク一家だろう。“鉄の爪”フリッツ・フォン・エリックを頂点とするエリック一家はアメリカのテキサス州を本拠地とし、ケビン、デビッド、ケリー、マイク、クリスという全ての息子がプロレスラーとなった(幼くして亡くなった長男を除く)。得意技も父親譲りのクロー攻撃を武器としていたのである。特にケリー・フォン・エリックはリック・フレアーのライバルとなり、父もなれなかったNWA世界ヘビー級王座に就いた。
 しかし、ケビン以外の息子たちは次々と若くして亡くなり、エリック・ファミリーは『呪われた一家』と呼ばれたのである。

 同じくテキサスを拠点とするファンク一家も、往年の名レスラーであるドリー・ファンク・シニアが、息子のドリー・ファンク・ジュニアとテリー・ファンクをプロレスラーに仕立て上げた。そしてジュニアとテリーは、史上初の兄弟揃ってNWA世界ヘビー級王者に君臨したのである。
 ジュニアとテリーのザ・ファンクスは日本でも超人気者となり、日米を股にかけて大活躍した。

 フリッツ・フォン・エリックとドリー・ファンク・シニアに共通しているのは、息子たちをプロレスラーにさせるべく英才教育を施したことだ。父親は、息子たちが自分と同じ道を進むことに期待し、息子たちにとっても子供の頃からレスラーになる環境が整っていた。
 息子たちがプロレスラーを志すのは、ごく自然な流れだったのだろう。それに対し、日本では親のプロレスラーが、我が子に対して英才教育を施したという話はあまり聞かない。

▼ドリー・ファンク・ジュニア&テリー・ファンクの兄弟コンビ“ザ・ファンクス”
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131027DSCF0080.JPG日本に二世選手が少ないのは、プロレス界だけではない

 日本で子供が親の後を継ぐことが少ないのは、プロレス界だけではないようだ。他のスポーツ界、たとえばプロ野球でも二世選手は少ない。
 プロ野球の二世選手として有名な長嶋一茂(以下、一茂)も、父親の長嶋茂雄(以下、ミスター)から英才教育を受けたことはないという。

 それに対し、外国人ではやはり二世選手は多い。メジャー・リーグで通算最多となる762本塁打を放ったバリー・ボンズ(父:ボビー・ボンズ)、連続試合出場の世界記録を持つカル・リプケン・ジュニア(父:カル・リプケン・シニア)、メジャー史に残るスラッガーのケン・グリフィー・ジュニア(父:ケン・グリフィー・シニア)など、名選手が目白押し。彼らは子供の頃から、父親と野球を楽しんでいたのだろう。
 日本でも、試合前のグラウンドで遊んでいるのは、大抵が外国人選手の息子。日本人選手の息子はあまり見掛けない。

 ミスターが読売ジャイアンツの監督をしていた頃、助っ人外国人としてチームに加入していた元メジャー・リーガーのロイ・ホワイトは、いつも息子を後楽園球場に連れて来て試合前のグラウンドで遊ばせるだけではなく、遠征も家族と共に行動するという子煩悩ぶりを発揮していた。
 そんなホワイトのことをミスターは「まるで『クレイマー、クレイマー』だな。オレにはとてもマネできない」と言っていたという。
『クレイマー、クレイマー』というのは、ダスティン・ホフマン主演のアカデミー賞映画。仕事中毒のホフマンが幼い一人息子や妻(メリル・ストリープ)をほったらかしにしていたため、愛想を尽かした妻が夫と息子を残して家を出てしまう。ホフマンは独りで息子の面倒を見て、初めて子育ての難しさを味わうものの、我が子への愛情は深まった。そんな時、前妻から親権訴訟を起こされるも、息子を手放したくないホフマンは全面対決を挑むが、子育てに追われていたため仕事がおろそかになり、会社をクビになって勝訴は絶望的になった、というストーリーだ。

 ミスターは『家族を仕事場に入れない』主義という、案外古いタイプの日本人だった。もっともミスターは現役時代、幼かった頃の一茂を球場に連れて来て観戦させたこともある。しかし、試合が終わってミスターが帰宅すると、亜希子夫人がビックリして言った。「あなた、一茂は!?」。
 なんとミスターは、試合に没頭してしまい、一茂を球場に忘れてきたのである。いくら忘れ物の常習犯であるミスターでも、我が息子を置き忘れるとは……。
 ミスターの忘れ癖は、息子に対してだけではない。次女の長島三奈のことを「三奈子」と呼ぶなど、目に入れても痛くない愛娘の名前まで忘れてしまっている。

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