[週刊ファイト6月6日号]収録 [ファイトクラブ]公開中
▼コロナ禍とブランコ・シカティック追悼興行
Photo & Text by こもとめいこ♂
・コロナ禍での開催にみる、チャクリキ甘井もとゆき代表の心意気
・全8カードで猪木イズムの具現化
・バカサバイバー・青木真也のプロレス
・全試合画像増量でお届け
私事で恐縮だが、脳腫瘍で闘病中だった故郷会津の従甥が先日亡くなった。
20代半ばでの早逝で、叔母といとこの心中は察するに余りあるが、コロナ禍のおり、葬儀は至極ささやかに行うから帰郷に及ばずと告げられた。
ひとまず香典だけ贈る事にして郵便局へ行き、現金書留の封筒が、不祝儀袋を入れられるサイズになっている事に、半世紀生きてきて初めて気付いた。
ユダヤ教やイスラム教の礼拝もコロナ禍でこれまでの慣習を変えざるを得なくなっているが、厳密に言えば香典袋やお札もウイルスを媒介する可能性はあるだろう。となると本当は振り込み、あるいはLINE PAYなどでピッと贈るべきだったのかもしれない。
何かお悔やみのスタンプの様な物が添えられれば、この御時世そういう方が有り難がられるだろう。
「伝説の拳」K-1初代王者であるブランコ・シカティックの偉大さは改めて言うまでもないが、無観客でも追悼の大会を開こうというドージョーチャクリキの甘井もとゆき代表の熱い気持ちには感服させられた。
無観客、しかもYouTubeで世界に向けて無料で配信となれば、興行としてのマネタイズは不可能。しかも、国内選手だけとは言え8試合をマッチメーク、拓也は九州から呼んでいる。レフェリーも和田良覚&平直行の2人体勢、ジャッジも配置し、配信用に映像スタッフ、解説に布施鋼治氏、田中ケロリングアナウンサーも招聘と、通常の大会を行うのと同様の布陣であり、かなりの持ち出しであろう。
しかしそれが偉大なるブランコ・シカティックへ向けた、甘井もとゆき代表の精一杯の追悼だという事は伝わってくる。
全8カード、うち3試合を「プロレスリングマッチ」と謳い、残り5試合をリアルファイトで固めた。プロレスラーの佐野直はグラップリング、将軍岡本はキックボクシング初挑戦と、勝負論のある試合に挑んだ。
これこそはI.Y編集長が2000年代初頭に提案し、アントニオ猪木が様々な大会でプロデュースを試みたプロレスラーと格闘家のボーダーレスな興行の具現化であろう。エンタメと勝負論の併用は、観客への誠実さだ。
かつての新日本プロレスのストロングスタイル路線に対し、全日本プロレス派は、プロレスをプロレスと解った形で提供する馬場さんを誠実さで評価した。
今、チャクリキは勝負論とプロレスとを分離させる事なく、並立させる事で、かつて新日本プロレス弁護団が夢見た理想郷を実現している様に思う。