[ファイトクラブ]プロレス乱入と海賊男ガスパー伝説~時代と共に変わりゆくケーフェイ

[週刊ファイト3月12日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼プロレス乱入と海賊男ガスパー伝説~時代と共に変わりゆくケーフェイ
 by 安威川敏樹
・なんと元女子選手3名をホストにしたTV番組KayFabeシリーズ発表
・ケニー・オメガ監督のプロレス哲学:大衆感情を揺さぶるリアルの交錯
・感動のヒット映画になった過程が種明かしされるのと同じプロレス芸術
・海賊男乱入劇の是非:ファンの暴動が頻発した時代
・「プロレスが嫌いになった!」学生の悲痛な叫び
・ファンの怒りの矛先は、海賊男ではなくアントニオ猪木に向かう
・1本勝負が乱入劇乱発の引き金となった?
・暴動事件を正当批判したのは一般紙投書欄:週刊ファイトI編集長継承


 週刊ファイトは一般公開しているサイトの箇所と、より深い考察や分析を渇望する大人のファンに向けた有料記事がある。後者の『シュート活字委員会』が担当する深淵分析には、ほぼ毎週のように我が国のマット界の没落というか、なぜに米国に金額規模において巨大な差をつけられてしまったが議論されている。

 金曜夜8時のゴールデンに放送されていた時代には学校の男子生徒のほぼ全員が見ていたとか、視聴率の数字を持ち出すまでもなく、一般市民の日常の会話にプロレスが出てきていた。
 日本こそがマット界の中心であると、当時、新日本プロレス営業本部長だった新間寿氏の進軍ラッパが鳴り響いていた通りである。その原因が具体的に毎週のように追及されているのであるが、これはやはり定期購読を勧めるしかない。

 ケーフェイに蓋をしたご用達媒体の教育というか、壁にブチ当たって数年で卒業してしまうファンを使い捨てるばかりのサイクルを繰り返していることに負のスパイラル元凶がありそうだ。

なんと元女子選手3名をホストにしたTV番組KayFabeシリーズ発表

 筆者も週刊ファイトの定期購読者に違いなく、その課題を考えているところに、プロレスならではの不条理性を体現する、試合をブチ壊してしまう闘う二人ではない第三の選手による乱入劇と、その象徴としての海賊ガスパーの魔力に惹きつけられたのだ。
 なにしろ、その金曜8時の時代に残した功罪のインパクトは絶大であり、中身がコロコロ変わった件はともかく、特に『昭和プロレス』がテーマの大会では未だに現役のキャラなのだから恐れ入る。
 トップ画像は2018年8月21日のマスターズ後楽園ホール大会にて、KYワカマツ、グレート小鹿、キム・ドクという222歳トリオとなった際の、敵役ガスパー組なのだが、ケーフェイを骨まで味わい尽くす楽しみ方には避けて通れない鑑定命題なのではなかろうか。

▼’18年08月30日号WWEブルックリン連戦 達人 飯伏KnockOut不可思 黒船ONE 闇社会 豊登

’18年08月30日号WWEブルックリン連戦 達人 飯伏KnockOut不可思 黒船ONE 闇社会 豊登

 そんな折に、またとてつもないニュースがアメリカから飛び込んできたのである。なんと、そのものずばりの『ケーフェイ』という1時間番組が始まるかもということなのだ。
 元TNA女子王者のゲイル・キム、同じく元TNAにしてWWE DIVAでもあったクリスティ・ヘミー、元WWEのリタことエーミィ・ダーマスがホストで、番組制作のために40万ドルを36日間に資金募集したいそうで、最終的には460万ドルの制作費で8本の番組を作る計画だという。

 動画にはまず、「ケーフェイとは業界の秘密を守ること」とのテロップまで出てきて、もはや死語とも揶揄される昔の掟を笑い飛ばし、意識的なファンが本当に知りたい舞台裏話もやれば、半分はさまざまなインディー団体の試合も流すという。
 週刊ファイトの映像版かとも思ったが、馴染みの女性陣をホストにしている点がミソだろう。成功して欲しいものだが、日本との差異を思わずにはいられないのみならず、あらためて『ケーフェイ』について考える契機となった。

ケニー・オメガ監督のプロレス哲学:大衆感情を揺さぶるリアルの交錯

 さらに、このタイミングに、AEWのPPV大会『REVOLUTION』が絶賛の嵐だったというという本誌速報を目にして、そこから検索していくウチに、大変興味深いケニー・オメガについての記事にたどり着いたのである。

▼Meet AEW’s Kenny Omega: The World’s Greatest Living Wrestling Artist
https://bleacherreport.com/articles/2878095-meet-aews-kenny-omega-the-worlds-greatest-living-wrestling-artist

 人物紹介はAEWの米国内PPVをやっているブリーチャーレポート(通称B/L LIVE)のものだから、基本はケニー・オメガという選手がどんな経歴の持ち主か、これまでの日本での様々な履歴、例えば9歳の女子選手との試合などもYouTubeリンク付きで紹介されている長編の紹介である。また、本稿のテーマでもあるが、赤裸にケーフェイにも触れられている。
 本誌・週刊ファイトを唯一の例外に、日本の媒体では読むことのできないオメガのプロレス哲学が分析されており、普段の彼が映画ファンであり、いかにプロレスをより幅広い大衆に届くよう、感情を揺さぶる物語を作っているかが詳細されている。
 プロレスの定義は時代とともに進化していくものであり、実人生と格闘演劇が交錯する、あらたなプロレスの創造を目指す、アルコールも飲まない求道者。AEW副社長にしてクリエィテブ担当でもあるオメガの真摯なプロレスへの情熱を知ることになるのだ。そこでは当然、飯伏幸太との長い共闘の歴史が詳しく書かれてあり、新日本プロレスでの具体的な試合の舞台裏までも活字になっている。

 日米のプロレス報道のなんたる違いだろうか。巨大な差があるのは市場規模だけではない。当然のことながら、ジャーナリズムが機能してないジャンルに市民権獲得、底辺拡大などは夢のまた夢ということになる。

 記事は前出のPPV大会『REVOLUTION』の煽りを兼ねて直前に発表されたものであり、ゴールデン・ラバーズvs.ヤングバックが、AEWではオメガ&ハングマン・ペイジ組として焼き直されることになるが、オメガが(まさに映画監督として)デザインした通りが(やり直しのきかない)聖なるLIVE空間で結実する。結果は本誌速報にある通り、オメガの狙い通りにハングマン・ペイジがお客さんの感情を揺さぶり、大きな声援を受けて一流選手の仲間入りする伝説の名勝負へと昇華するのであった。

© AEW

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