「手かげん無し、えこひいき無し」
帰宅してちょうどやっていたTOKYO MXの『キックボクシングKNOCK OUT! 』の宣伝文句を聞いて、言い得て妙だと膝を打った方も多かった事と思う。
KNOCK OUT11・1後楽園『夜明け』。
セミファイナルで日菜太がお母さんの急病という心痛を乗り越えて辛勝を収め、来年2・11大田区のビッグマッチへ勢いをつけ、あとはメインイベントでの小笠原瑛作の復活の狼煙を見届けるだけ…そのお膳立ては整っていた。
スターダムの岩谷麻優と中野たむが見つめる中入場してきた小笠原瑛作
その雰囲気通り、リングサイド席で陣取った小笠原瑛作応援団からは、
「早く勝って(アフターパーティーへ)食べにいこう! 」
との声も飛んでいた。
だが当の小笠原瑛作に、その声が届いていたかどうか、心なしかいつもとは違う緊張感が表情からは伺えた。
相手は、立ち技最強のムエタイの殿堂、ラジャダムナンスタジアムのランキング5位という強豪であれば、それは当然の事ではある。
2R、ダウンから反撃に転じた矢先に肘打ち一閃からのハイキックで勝負は決した。
大の字になった小笠原瑛作は立ち上がる事無くゴングを聴いた。
山口元気プロデューサーは当然、冴えない表情を浮かべていた。興行の看板が傾いだとも言え、2月の大会を考えれば当然ではある。
サオエーク・シットシェフブンタムはなるほど強かった。だがその強い相手との試合で誤魔化す事をせず、真っ向勝負を挑み、一敗地に塗れる。これこそが、木谷オーナーが語っていた“KNOCK OUTしか観ないファン”が観たい勝負であるし、THE KNOCK OUTという決着だった。メインまで本戦7試合の濃密な興行、21時過ぎの余裕のあるクライマックスのあと、終電まで感想を言いながら一杯呑める。本誌としても再三推奨してきた神興行は健在であった。
だが大会の煽り映像にあった様に、「夜明けの前が一番暗い」とも言える。
そして確実に、夜明けは見えた。
1つめは、OPマッチでの2001年生まれと2004年生まれという女子2人の激闘の末の勝利。結果、育成と女子部門の充実、KNOCK OUT第2章の萌芽が見えた。
そしてもう1つは、第1試合で登場した鈴木千裕の、余りに鮮やかな有言実行の2RKO劇である。
前回の勝利で、完全にニューヒーロー誕生を予感させたが、その通り、平日にも関わらず、第1試合開始前にはスタンドがかなり埋まっていた。
勝負論のある興行においては、ニューヒーロー、ヒロインは一夜にして誕生する。
そして鈴木千裕は、既に興行の看板としての地位を確立しつつあると言える。
スターダムロッシー小川氏をして戦慄せしめた「リアルな現実」、KNOCK OUT第2章の夜明けが見えた後楽園大会ではあった。
後楽園ホールでKNOCK OUT観戦。久しぶりのキックボクシングは会場中が熱気と活気に溢れていました。ムチで叩くようなしなやかなキック。ニールキックやローリング・ソバットを見せた選手もいたが、ど迫力の連続…メインは小笠原選手が衝撃のKO負け。リアルな現実で呆気に取られたのだ。 pic.twitter.com/DDtyYzRgy4
— ロッシー小川 (@rossystardom) November 1, 2019
■ キックスロード KNOCK OUT 2019 BREAKING DAWN
日時:11月1(金) 開始17:30
会場:東京水道橋・後楽園ホール
<メインイベント スーパーバンタム級(55.5Kg)契約 KNOCK OUTルール 3分5R>
●小笠原瑛作
2R 2分31秒 KO
〇サオエーク・シットシェフブンタム
<セミメイン 70.0Kg契約 REBELSルール 3分5R>
〇日菜太
5R判定 2-0 (50-49,49-49,50-48)
●ラーシーシン・ウィラサクレック
<第5試合 54.0Kg契約 KNOCK OUTルール 3分5R>
〇壱・センチャイジム
5R判定 3-0 (49-48,49-48,49-47)
●HIROYUKI
<第4試合 70.0Kg契約 KNOCK OUTルール 3分5R>
●T-98(タクヤ)
5R判定 0-3(48-50,48-50,47-50)
〇プライチュンポン・ソーシーソムポン
<第3試合 61.5Kg契約 KNOCK OUTルール 3分5R>
〇重森陽太
4R 2分38秒 TKO(タオル投入)
●翔・センチャイジム
<第2試合 57.0Kg契約 KNOCK OUTルール 3分5R>
宮元啓介
5R判定 3-0(49-48,49-48,49-48)
小笠原裕典
<第1試合 64.0Kg契約 REBELSルール 3分3R>
●耀織
2R 1分39秒 KO
〇鈴木千裕
<オープニングマッチ④ 52.16Kg契約 KNOCK OUTルール 3分3R>
●佐藤仁志
3R判定 0-3(25-30,25-30,24-30)
〇花岡竜
<オープニングマッチ③ 53.5Kg契約 KNOCK OUTルール 3分3R>
〇古村光
2R TKO
●星野航大
<オープニングマッチ② 47.0Kg契約 REBELSルール 2分2R>
〇山上都乃
2R判定 3-0(20-19,20-19,20-19)
●チエミ
<オープニングマッチ① 50.0Kg契約 REBELSルール 2分2R>
〇大塚愛莉
2R判定 2-0(20-19,19-19,20-19)
●望月冴香
※大会詳報は電子書籍版週刊ファイト11月14日号に掲載予定。