ONE Championship 4選手インタビュー!+ONE日本勢 王者不在も終焉ならず―V.V Mei、和田、高橋、佐藤の活躍に注目

王座を失うも 青木真也「俺は守りながらは、生きない」

 3月に行なわれたONEチャンピオンシップ初の日本大会「ONE: A NEW ERA」でエドゥアルド·フォラヤンに圧勝し、王座を奪還した青木真也。その試合後の記者会見で、次期対戦相手として、クリスチャン·リーを指名した。

 20歳の若手選手を35歳の王者が挑戦者に指名するという事態を、各メディアは驚きを持って伝えた。そして、5月17日の「ONE: ENTER THE DRAGON」でタイトルマッチが実現。1Rは青木が寝技でリーを追い詰めたが、2Rになるとリーが高速の打撃で王者をマットに沈めた。この試合は、どの瞬間に決着がついても不思議ではない、緊張感に溢れた、総合格闘技の魅力が全て詰まったような試合だった。

 あの試合から10日が経過し、故郷の静岡で心と身体を休めていた青木は東京に戻ってきた。再び闘いの道を歩き始めた青木真也に話を聞いた。

―まず、日本のファンが試合を観て率直に感じたことを聞かせてください。あの試合は、レフリーが試合を止めるのが早かったのではないですか。

「そういう声もあるみたいだけど、選手がレフリングについてどうこう言うべきではないと思います。競技そのものを否定することになるから。クリスチャン·リーが強かった。それだけのことです」

―1Rの腕ひしぎはかなり惜しいところまで行きました。

「関節技に惜しいって言うのは無いんですよね。0か100しかない。どんな形になっても、極まらなければ0なんです」

―それにしても、青木真也のサブミッションを跳ね除けたリー選手は驚異的だったと思います。

「彼が勝利を渇望していたということだと思います。彼が抜け出したのは、技術以上にそういった精神力が強かったのだと思います」

 潔く自分の負けを認める一方で、青木真也は相手を必要以上に持ち上げることもない。選手として常に哲学を持ち、同時に冷静な視点を失わない彼らしい考え方がここにある。

―試合後は、青木真也選手が引退するのではと不安視する声もありました。

「引退はしません。それに、今後イージーな試合をしていくつもりもありません。常に、強い相手と闘いたい」

―例えば、ボクシングなどではジム側が挑戦者を選びますよね。なるべく王座を守り続けられる相手を選ぶことがあると思います。ある意味で、そこから試合が始まっているという考え方もできると思いますが、それでもリーを選んだ理由は何ですか。

「端的に言えば、ダサい選手になりたくないからですね。それに、僕はベルトに執着や興味があまり無いんです。僕が若い頃は、どんなに有望な若手選手がいても、上の方の選手は試合をしなかった。そういうのをダサいと思っていたし、そうはなりたくない。それに、ベルトを死守するよりも、強い相手と闘いたい。守ったらダメだと思っています」

―試合後は、敗れて落ち込んだ時期もあったと聞きました。

「負けたら選手としてはやはり落ち込みます。一方で、良い試合をファンに見せることができたという満足感もプロとてあるわけです。僕は色々な視点から物事を見るようにしています。悔しい気持ちはあるけど、リーと闘ってよかったと思っています」

―これまで積み重ねてきた「青木真也」という価値がありますが、試合後に更新された青木選手のSNSでは、それさえも失ったように感じました。

「実績など過去にすがって生きていくようなことはしたくないんですよね。だから、いまこの瞬間が全て。でも、自分の名前の価値やブランドというものは大切にしていますよ。ただ、それを守るためには、強い相手から逃げてはいけない。逃げたり、守ったりしようとしたら、「青木真也」という名前に価値がなくなってしまうんです」

―困難な道を敢えて選ぶ原動力は何でしょうか。

「理想の自分になりたいからです。自分の理想とする生きる姿勢や闘う姿勢。そこに対して、誠実でありたい」

―かつての桜庭和志選手や、青木真也選手ご自身がそうだったように、格闘技団体には、それを背負うような選手がいて、時代の寵児が生まれるものです。私はクリスチャン·リー選手が、そういう存在になる可能性があると思いますが、彼には今後、どうあって欲しいですか。

「まだ20歳の選手なので、難しいことは考えず、天真爛漫に彼らしくやって欲しいと思っています。そして、自分の意思がどうであれ、時期やタイミングが来たら、リーがそういう存在になっているかもしれません。でも、今は彼のままで良いんです」

―最後に、青木選手の今後の展望を聞かせてください。

「とにかく、来た選手とやります。逃げることも、守ることもなく、強い相手と闘い続けるだけ。もちろん、ファンが対戦を望んで、プロモーターがそういう機会を用意してくれるような試合があれば、プロとして受けるかもしれません。でも、選手としては、常に強い選手とやりたいですね」

 青木真也はブレない。過去の栄光や実績を掲げることもない。私は彼から自慢話を聞いたことがない。青木真也は、思考を止めない。そして、その思考を隠すこともない。このインタビューさえ、昨日、取材すれば答えが違ったかもしれないし、3時間後に聞いたらまた違うかもしれない。しかし、それは、彼の考えがまとまっていないからではなく、根本がブレないまま、彼が常に考え、自分と真剣に向き合っているからだ。

 そして、自分の価値は、自分の生き方でのみ示そうとする。経歴や実績、獲得したベルトの数を自ら掲げることはない。

 青木真也の最大の魅力は、その生き方と考え方だ。時に間違っているかもしれないし、意見を変えることだってあるだろう。しかし、その瞬間瞬間を、彼は真剣に生き、大声で叫んでいる。

 ある人は彼を否定するし、ある人は彼に共感する。青木真也はロックに生きる。破壊と想像を繰り返し、否応なしに注目を集める。青木真也は散っても再び咲き乱れる。散った花びらさえ、栄養の糧にして。

 ONEライト級世界王者のベルトを失っても、青木真也の輝きは消えるどころか、増すばかりだ。


3連勝と波に乗るV.V Mei 「誰が相手でもタイトルを獲る」 

5月17日にシンガポールで開催された「ONE: ENTER THE DRAGON」でラウラ・バリンを相手に勝利を収めたV.V Mei。これで、2018年5月にタイトルマッチで判定負けを喫して以来、3連勝(直近2試合は一本勝ち)となった。3度目となるタイトルマッチ挑戦に大きく前進したV.V Meiに話を聞いた。

―「ONE: ENTER THE DRAGON」では、対戦相手が直前に変更になるというアクシデントがありました。

「知らせを聞く前から、嫌な予感みたいなのがあって、なんとなく心の準備ができていました。格闘家としての勘かもしれませんね。前にも同じようなことがあったし、あんまり動揺しませんでした。とにかく、試合をさせて欲しいと直談判して、結果的には良かったと思います」

 最近のMeiは、試合でもそうだが、こうしたアクシデントでも動じない。どんな相手に対しても慌てずにしっかりと様子をみて、最善策で勝利を収める。また、対戦相手が変更になるなどの不測の事態に関しても、経験から想像力で準備することができる。

 常に厳しい環境で自分を見失わずに闘ってきたMeiは、動じない。彼女の強さの根源がそういったところにあるような気がした。

―直前で対戦相手が変わったものの、見事に一本勝ちしました。

「時間はあまりなかったですが、そのなかでしっかりと研究してプランを練りました。概ね予定通りの展開に持ち込めたと思います。フィニッシュは、ケースバイケースなのでたまたまアームバーでしたが、そこに持ち込むまでの組み立てが重要ですね」

―ONEチャンピオンシップという厳しい闘いのなかで、Mei選手はどんどん強くなっていると思います。その努力をするモチベーションは、どこにありますか。

「もちろん、タイトルを獲りたいという気持ちもありますが、格闘技が好きでずっと続けてきたし、ONEは私の結果に対して正当な評価をしてくれます。だから、やりがいを感じています」

―ONEは、Mei選手にとって、とてもしっくり来る舞台に見えます。輝ける場所であるONEに対して愛着などもありますか。

―「素直に感謝しています。もちろん、良いことばかりではないけれど、自分が格闘技に取り組む場所として、良い環境だなと思っていますし、愛着もありますよ」

―さて、3連勝してタイトルマッチの機運が高まってきました。

「3連勝したんだから、やらせてよって思っています。普通に考えたら、アンジェラ・リーに挑戦するかたちになると思いますが、そうじゃなくても私は構いません。誰が相手でもONE女子アトム級のタイトルを獲りたいです」

 Meiにインタビューするとき、アンジェラ・リーという名前が必ず登場する。同じ階級の王者であり、Meiが2度タイトルマッチで挑戦して、2度敗れた相手でもある。そして、リーから見れば、唯一KOできなかった相手がMeiだ。

 Meiがリーを批判することはない。しかし、Meiが彼女について語る時、言葉の隅々からバチバチの火花が散り、彼女の内面で燃え盛る炎の温度すら感じる。

 Meiは、ギラギラしている。女性としての品格を崩さないギリギリのところで、ギラギラと、“あの女”を狙っている。

 そして、敢えて最後にこんな質問を投げかけた。

―最近は、日本人の若手選手も次々とONEに参戦しています。女子選手も増えていくと思いますが、どう考えていますか。

「もちろん成功して欲しいですけど、苦労もして欲しいです。若いときから良いことばかりが続くと、いざ苦労が回ってきたときに対処できなくなる。そのためには、本人や指導者も勉強が必要だし、経験が大切です。そして、この世界は、甘くない」

 Meiは、幼い頃から苦労を重ねつつも、自分が好きな格闘技を追求して生きてきた。格闘家になったあとも、国内でコツコツと実績を重ね、3年前にようやくONEにたどり着いた。その後も、タイトルマッチで敗れても、折れずに再び歩き続け、そして今、また3連勝で王者の前に立とうとしている。

 苦労を重ね、時に遠回りをしてきたからこそ、彼女の発言には深みがある。

―10月には日本大会もあります。

「11月にはシンガポール大会もありますね。でも、次戦がそこでは遠いので、夏に1度試合がしたいです。それがタイトルマッチになったとしても、大丈夫なように準備するのみです」

 タイトルマッチを勝てば、選手は王者になることができる。しかし、それだけでは手に入らないものもある。それが、風格だ。どんな相手や状況にも動じず、周りの状況に左右されず、常に地に足を付けて生きている彼女には、すでにそれが備わっている。


ONE立ち技最強女王スタンプ「子供の頃から戦ってきた、プレシャーを与えてユニクを倒す」

 6月15日に上海で開催される「ONE: LEGENDARY QUEST」で、WBCムエタイ女子世界王者のアルマ・ユニクの挑戦を受け、ONE女子アトム級ムエタイ世界タイトルマッチの防衛戦に挑むスタンプ・フェアテックス。タイの最強女子は、既に臨戦態勢だ。

 キックボクシングとムエタイ両方の競技でONE女子アトム級王者のベルトを巻くスタンプ。対するは、オーストラリア出身の18歳でWBCとIPCCの世界タイトルを保持する若き挑戦者だ。

 スタンプは今年2月のシンガポール大会で、米国の強豪ジャネット・トッドを相手に5Rフルの死闘を演じた試合に続く、2戦目だ。試合間隔が数ヶ月空いたが、それは王者ということを考えれば普通のこと。しかし、スタンプはすぐにでも試合がしたかったという。

「私はアクティブに動き続けたいタイプ。試合は月に1度が理想です。ONEが試合のオファーを出す時、私はいつだって準備OKなんです」

「次の試合は上海で開催されますが、中国に行くのは初めてなので興奮しています。新しい場所に行くのは楽しいし、日本やシンガポールにも一度行ったことがあって、常に楽しんでいます。こういう機会を与えてくれたONEには感謝しています」

 21歳のスタンプはエネルギーに溢れている。次の試合が仮に5Rまでもつれても、彼女はその強さを最後まで維持するだろう。しかし、油断はならない。ユニクは2つのTKO勝利で2つのベルトを奪取し、その後負け無しで勢いに乗っている。

 ユニクはまだ10代だが、プロ戦績は24勝4敗と既にベテランの域だ。

「ユニクはスピードがあってアグレッシブな選手。そして、どんどんプレッシャーをかけてきます。でも、そういう選手は逆にプレッシャーをかけられたとき対処できない場合があります。そこを狙っていきたい。彼女の経験が浅いとは思わないけど、私は子どもの頃から闘ってきて、より経験が多い。そういう家庭で育った強みがあります」

 21歳のスタンプは、すでに15年のキャリアを持つ。しかし、それでも、改善することを忘れずに鍛錬を続けてきた。実際に、ボクシング技術はここ最近でさらに強化された。また、彼女のチームも世界レベルのコーチ陣がいて、最高の戦略を練ってくる。

「打撃には自信があります。それに、小さいグローブを使うとパワーもスピードも上がりますが、それは相手も同じことなので、注意して闘わないと危ない。ケアレスミスをせず、エキサイティングな試合にしたいですね。私はダメージを受けることを恐れない。ムエタイを愛しています」

 美しく闘うスタンプが女性に与える影響は大きい。彼女は、現状に満足せず、さらに先の未来も見ている。

「いま持っている2つのベルトを防衛し、そして、今年の後半には総合格闘技(MMA)ルールの試合に参戦したいと思っています」

 闘う女神スタンプ・フェアテックスは止まらない。


今の自分なら秋山に勝てる!」
 
6月15日(土)に上海で開催される「ONE: LEGENDARY QUEST」で、秋山成勲がONEデビュー戦を迎える。格闘技界に数多くの話題を振りまいてきた43歳のレジェンドが闘う相手は、23歳のマレーシア強豪アギラン・ターニだ。

ターニは、まさか自分の相手が秋山になるとは思わなかったという。

「秋山との対戦が決まったと聞いたときは、正直、驚いた。でも、トレーニングは、しっかりやってきた。今の自分なら秋山に勝てるハズさ」

 ターニが手術をしてからの直近2試合は、ベストコンディションではなかった。しかし、フィジカル面は上向きで、最高の状態に持っていく自信があるという。

「練習ができない間に、色々なことを学んだし、聞いた。周りは秋山との試合には、まだ早いという人もいるよ」

「でも、朝起きた時、自分に言うんだ。“秋山を倒そうぜ”って。ダメならまたやり直せばいい。だけど、今は全力で倒すことだけを考えている」

 柔道出身の秋山は、格闘家に転向したあと、国内外で常に厳しい闘いに身を置いてきた。43歳で3年半ぶりの復帰戦であっても、最高のコンディションでこのONE初戦に準備してくるに違いない。

 しかし、ターニは秋山を恐れていない。そして、世界中が驚く〝ジャイアント・キリング″を狙っている。

「確かに秋山は強い。そして、メンタルも強靭だ。でも、彼は柔道家だよね。柔道よりも、ブラジリアン柔術の方が強いというところをみせるよ。フェンスに追い詰めて、関節技を極めたいね」

 そして、この試合のもう一つの注目ポイントは、43歳と23歳という年齢差だ。親子ほど離れている。

「ONEで闘った相手は、ほとんど年上だし、ベテラン選手も良い動きを見せている。だから、年齢を考えて過小評価するなんてナンセンスだし、そこは関係ない」

最後に、ターニは秋山にメッセージを伝えた。

「おい、秋山。俺は、あんたが最高にセクシーな男だって知っているけど、試合もその調子で頼むぜ。最高の闘いをしよう!」

 4・5月に大きな勝利を挙げた今最も勢いのある5人の日本人選手を一挙ご紹介する。


1.内藤のび太 ~再びストロー級世界王者へ!シウバに勝利~
タイトル戦線から崖っぷちの状態から、シウバに勝利しトップコンテンダーとしての地位を死守した内藤のび太選手。
王座を失うきっかけとなった現王者のパシオ選手との3度目の激突が期待される。


2.V.V Mei ~3度目の正直で女子アトム級世界王者へ~
日本大会を含め3連勝を飾っているV.V Mei選手。
どの試合でも慌てることなく、悠然と対処して確実に相手を倒すのがV.V Meiの強味。


3.和田竜光 ~グランプリ制覇のために世界最強と闘う日本のエース~
格闘技ファン大注目のONE フライ級ワールドGPに参戦中の和田竜光選手。
トラブルに見舞われながらも勝ち進み、次の準決勝では、”フライ級世界最強”と謳われるデメトリアス・ジョンソンと対戦する。
勝利を収め”世紀の番狂わせ”となるべく、並々ならぬ闘志で、世界を相手に闘う。


4.高橋遼伍・佐藤将光 ~ONEデビュー戦で勝利~
修斗太平洋フェザー級王者の高橋遼伍選手と修斗世界バンダム級世界王者の佐藤将光選手は共にTKO勝ちで華々しくデビュー戦を飾った。
選手として波に乗っている二人の躍進が期待される。


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