ジョニー・ガルガノxアダム・コール史上最高レスリング!NXTテイクオーバー年間最高興行!WWE報復強烈

photo by George Napolitano

 東京は桜満開最後の週末で春を告げていたが、雨のブルックリンは寒かった。しかし、ひとたび前売り段階でガチ完売のバークレイズ・センターに入れば、そこはすでに熱気と期待感があふれていた。

 現地時間4月5日金曜夜、実況が「すべてがメインイベント」といみじくも評したように、ウォー・レイダース(ウォーマシーン)と、リコシェ&アリスター・ブラックのNXTタッグ王座戦から、最後には本誌が自信を持って早くも年間最高興行賞と活字に残す大会が始まった。サイズが違うのに、同じhi-spotシークエンスをトレードするという、考えられた構成に客席は沸きに沸く。そして、あの巨体のハンソンがコーナーからフリップして飛ぶ場面で、実況のマウロ・ラナーロから最初の「マンマ!ミアー」が絶叫されるのだ。
 大人のファンならケツはわかっていたハズだが、ブルックリンの客もこれがリコシェ&アリスター・ブラックのNXT最後というのはわかっていたようにも思えた。なにも実況なりでそのことが語られることはなかったが、リコシェが泣いていた。そしてお客はNXTコールを連呼した。ウォー・レイダースはタッグ王者として世界で認められおり、今後もNXTのタッグ部門を背負っていく。リコシェ&アリスター・ブラックがここで負けるのはどうでもいいことだ。すぐこのあとにSmackDownタッグ王者になっても、トリプルHも総括で語ったようにEPICなイベントに立ち会ったユニバース諸氏なら、I told you soとなるだけのことだろう。

 そこから3時間15分で5試合、それぞれにたっぷり時間を与えたプロレス芸術の真骨頂となる大会は、次から次へと見ごたえのあるカードが続いていく。ナイジェル・マクギネスとマウロ・ラナーロを毎週見ている(聞いている)ユニバースなら、本誌でも紹介してきたように、裸足のマット・リドルがシューズで踏まれる場面では「マルコ・ファスが・・・」が出てくるし、ウォルターのチョップ攻撃には「ケンタ・コバシの・・・」が出てくるお約束集大成である。新しいネタのもあった。怪力ぶりをいかんなく発揮して、単に三つ編み髪をムチにするだけのギミックではないビアンカ・ブレアがKISSポーズを投げると、カイリ・セインがそれを受け止め、クルクル丸めてボールにして紫雷イオに投げる。イオがバットでそれを天井桟敷に打つ場面では、「イチロー・スズキ」が飛び出した。カイリとイオが、盟友ながら戦う場面では”Joshi Puroresu”の頂点が連呼されるのだ。

 同じく685日という、とっくにアスカの記録を抜いた最長王者になっているものの、日本人選手にしか関心ないとばかりに国内でそれを報道してきたのは本誌だけのようだが、その不倒のピート・ダンが、♪シンフォニー・オブ・ディストラクションのオーストリア出身ウォルターに王座を明け渡すことは読めていた。でも、そんなことはどうでもいい。欧州プロレスも追いかけてきた者なら、これがぶっちぎりの欧州No.1対決であることは述べるまでもないことだからだ。そして、前評判にたがわぬ現代のキャッチ・アズ・キャッチ・レスリングが繰り広げられていく。それをWWEがニューヨークから中継して、ネットワーク配信によって世界中のファンがリアルタイムで楽しめるのだから、それにしても凄い時代である。本誌などはさらに、そのリアルタイム中に次々と写真の入稿が始り、海外ネットワーク最強を自信を持って誇れるように、複数の通信員からも続々とメッセージが届くのだから、プロレスの視聴環境は大きく変わったことになろう。

 トリの3本勝負の、大人のファンとの知恵比べの裏読み合戦はどうだろう。あえてオールドスクールの3本勝負決着にして、2.99プロレスを30分超えても続けたのだ。そうきたか、え、これでも決まらないのかと、本物レスリングの魔術が時計を睨みながら大会が3時間を超えても続き、かつてない底なし沼を魅せるのである。もう「マンマ、ミア~」の安売り連呼はしないと決意していたらしいマウロ・ラナーロに、最前列のお客が「マンマ、ミア~」のプラカードを見せるのだが、それでも我慢するから、マクギネスの方が「マンマ」だけ言いかけて止めるという絶妙の場面もあったものの、最後のメインではスパニッシュ・アナウンサー・テーブルの攻防で「マンマ、ミア~」が爆発。PRIDEの英語版実況も、ベラトールも、格闘技もプロレスもやってきたマウロが、「30年コンバット・スポーツの実況をやってきたが、こんな凄い試合見たことがない」と話すのだ。ほとんどこの時点で、涙腺崩壊のユニバースは少なくなかったと思われる。

 そして、エンディングの絵は、ベルトを掲げたガルガノに妻キャンディスが駆け寄り、オハイオからやってきた両親にも祝福され、そして最後に花道に首にネックブレイスを巻いたトマソ・チャンパが表れて、DIYが勝利を祝うのだ。2019年の年間最高大会賞は早くも決まりだろう。

 前夜のNXT大会が、現地時間日曜のPPV大会よりはるかに内容が凄いというのは、もう近年の恒例パターンだから「一般向きのPPVはあれでいいんだ」という弁解になってしまっているが、テイクオーバー名称での第25回目にして2019年の今回は事情が違う。真の比較対象は翌日のROH新日本プロレスによるMSGでの『G1スーパーカード』であるからだ。すでに公式発表もされているのだが、あえてKUSHIDAのNXT契約書サインのスキッドも挿入されていた。これで明日は苦しくなった。日本のプロレスが世界一なんだという幻想が打ち砕かれることになろう。

 怒らせたWWEの報復は強烈だったが、内容勝負だけではなかったという、もう一つの戦闘開始にはさらに驚いた。なんと途中のCMが、ペパロニピザがわずか$12というチェーン店のもあったが、競合であるハズのネットワーク配信DAZNだったからだ。これは一体なにを意味するのか。本誌が2019年、毎週、毎週AEWの動向をお伝えしてきたが、DAZNとも新興のAppleTVとも交渉していることは活字にしてきた通り。ところが、なんとNXTの中継にDAZNが広告を入れたのだ。親会社がパラマント・ネットワーク、つまりテレビ局である格闘技のベラトールが、DAZNがそれだけの資金を出すならとDAZNでの配信を始めたわけだが、これはマット界地殻変動の嵐を呼ぶ真珠湾攻撃なのだろうか。内容だけでなく、舞台裏ビジネス戦争でもEPICな大会になったことは間違いない。

■ WWE NXTテイクオーバー
日時:4月5日(現地時間)
会場:ニューヨーク市ブルックリン バークレイズセンター

<第5試合 NXT王座決定戦 3本勝負>
○ジョニー・ガルガノ
 38分25秒
アダム・コール

<第4試合 NXT女子王座戦 Fatal 4way>
○[王者]シェイナ・ベイズラー
 15分45秒
●ビアンカ・ブレア
※他にカイリ・セイン、紫雷イオ

◆カイリとイオ、悲願のNXT女子王座にあと一歩届かず

 カイリ・セインと紫雷イオが因縁の王者シェイナ・ベイズラーが持つNXT女子王座にフェイタル4ウェイ戦で挑んだ。盟友のカイリとイオはダブルドロップキックをビアンカとシェイナに決めると、連携してカイリがダイビングエルボー、続けてイオがムーンサルトを場外の2人に炸裂させて試合を優勢に進めた。しかし、イオがムーンサルト2連発をシェイナに決めてフォールを狙うと、それをカイリがカット。そのままカイリがインセイン・エルボーでシェイナを沈めてフォールすると、今度はイオが阻止してお互いのチャンスを潰した。火花を散らす盟友同士の攻防はさらにエスカレートし、イオがドロップキックからエルボー連打を見舞えば、お返しとばかりにカイリもDDTで応戦。しかし、最後はカイリとイオが同時にビアンカに捕まって豪快なKODを食らうと、その隙にシェイナが切り札クラッチでビアンカを捕まえてタップ勝ち。カイリとイオは善戦も悲願の王座にあと一歩届かず、シェイナが王座防衛に成功した。

<第3試合 NXT UK王座戦>
●[王者]ピート・ダン
 25分40秒
○[挑戦者]ウォルター

<第2試合 NXT北米王者戦>
○[王者]ヴェルヴェティーン・ドリーム
 17分35秒
●[挑戦者]マット・リドル

<第1試合 NXTタッグ王座戦>
○[王者]ウォー・レイダーズ (ハンソン & ロウ)
 31分10秒
●[挑戦者]アリスター・ブラック & リコシェ

◆WWEがKUSHIDAとの契約を発表
©2019 WWE, Inc. All Rights Reserved.
 WWEは『NXTテイクオーバー』中継内にて、あらためてKUSHIDAとの契約を発表した。KUSHIDAはCOOトリプル・HとNXTゼネラルマネージャーのウィリアム・リーガルと共に調印式に出席。リーガルGMが「ついにスーパースターKUSHIDAがNXTに所属する」と話せば、トリプルHは「彼がNXTに所属することにとても興奮している。世界的スターの1人だ」とKUSHIDAを称賛。KUSHIDAは「このような機会をありがとう!ベストを尽くします」と英語で意気込みを語って契約書にサインした。また、この発表に中邑真輔は「みんな、KUSHIDAがNXTにやってきた!!! ようこそクッシー‼︎」とツイッターでコメント。新たな日本人NXTスーパースターKUSHIDAの誕生で今後のNXTの展開に注目が集まる。「NXT」は毎週木曜午前9時からWWEネットワークで配信されている。


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