7月19日(木)、NHK総合テレビの『クローズアップ現代+』はプロレス特集だった。遂に公共放送もプロレスに注目し始めたか!?
1954年、力道山が日本にプロレスを伝えたとき、力道山&木村政彦vs.シャープ兄弟のタッグ・マッチをNHKが放送したが、その後はNHK内にプロレスに対する批判があり、プロレス中継から手を引いた。
1976年のアントニオ猪木vs.モハメド・アリの異種格闘技戦も、NHKニュースでは『予定通り引き分けでした』と、まるでプロレスをバカにしたような物言いだった。良識ある公共放送がプロレスのことなど報じるべきではない、という論調である。
しかし、時代は変わった。もはやプロレスもエンターテインメントとして認知されるようになったのである。
今回の『クロ現』は棚橋弘至と、元AKB48で『プ女子』の倉持明日香、そして30年来のプロレス・ファンであるお笑い芸人のプチ鹿島がスタジオ・ゲスト。『プロレス人気復活! ”過去最高”の秘密』と題して、新日本プロレスを中心に現在のプロレス人気を紹介する。
番組とは関係ないが、棚橋の長女でジュニア・モデルの呼春(こはる、14歳)が女優デビューすることとなった。
プロレス人気復活の源となった『プ女子』
番組冒頭では、長州力vs.藤波辰巳(現:辰爾)の『名勝負数え歌』や、飛龍革命での猪木の藤波に対するビンタおよび藤波の髪切りシーンなどが流れる。おそらくテレビ朝日から借りたのだろう、こんな映像がNHKの画面に登場するとは……。
ここで映像がパッと切り替わり、現在の新日本プロレスが映し出される。そこには、かつての新日プロの代名詞だった、血で血を洗う抗争はない。明るく楽しい雰囲気で、観客席の多くを埋めるのは『プ女子』や家族連れだ。
父親に連れて来られたのは、中学生の女子。「まさか娘がジャニーズではなく、プロレスに転がる(ハマる)とは……」と父親も戸惑った様子。
21世紀に入り、格闘技ブームが席巻して、プロレスは暗黒時代を迎えた。VTR出演した獣神サンダー・ライガーはこう語る。
「一時はプロレスの灯が消えかけたもんね。それを救ったのが棚橋弘至選手だった」
ブシロードの木谷高明氏は新日本プロレスのオーナー就任当初、JR山手線に新日本プロレスの車体広告を出し、知名度アップを図った。もちろん狙いは、プロレス暗黒時代からの脱却だ。さらには、プロレスとは縁遠かった女性誌などにも積極的にレスラーを登場させ、今まではプロレスなど見向きもしなかった層にターゲットを絞ったのである。
「人が感動するのは、キャラクターとストーリーに対して」と語る木谷氏は、レスラーの考え方を女性誌で伝えたのだ。そして、それが実を結び『プ女子』が生まれた。
現在、プロレスに人気がある理由を木谷氏は「今の時代は先行きが不安だから。みんなヒーローを求めている」と分析。
さらに、プ女子という会社員を紹介。彼女はアニメーターの夢が挫折しかけたときにプロレスに出会い、棚橋のファンになって再び夢を追うようになり、また絵を描き始めた。
この件に関し棚橋は、
「嬉しいですね。プロレスラー冥利に尽きるというか、(それまでは)応援してもらって、それで力を発揮して、また喜んでもらうという関係だったのが、今ではレスラーもファンと共に走っているという感じがありますね」
と嬉しそうに語った。さらに、プロレス人気のために、棚橋が心を砕いたのは「イメージを壊すことですね。怖い、痛そう、そういう負のイメージを良いイメージに変えることに努力しました」とその心情を訴えた。
そして『プロレス会場は、ファンとレスラーがエネルギーを交換できるパワースポット』と棚橋は言い切った。
世界進出を目論む新日本プロレス
新日本プロレスの社長に、大手玩具メーカーのタカラトミーなどで経営手腕を発揮したハロルド・ジョージ・メイ氏が就任した。メイ社長は動画サイトを利用して、新日本プロレスの海外進出を目論む。
その動画サイトを見て、日本のプロレスのファンになったというイギリス人男性が紹介されていた。彼はわざわざイギリスから、プロレスの試合を見るために来日したのである。
このイギリス人男性は、日本のプロレスの魅力についてこう語る。
「新日本プロレスは漫画やアニメみたいだ。ストーリーとキャラクターが見事。西洋のプロレスには、こんなのはないよ」
新日本プロレスの創始者であるアントニオ猪木はもちろん、かつての新日の主力レスラーたちは、プロレスを漫画みたいだと言われると烈火の如く怒っただろうが、時代は変わったものだ。当時はタイガーマスク(佐山聡)をデビューさせたとはいえ、タイガーマスクの場合は漫画やアニメを飛び越えてしまった。
新日本プロレスはサンフランシスコで興行を行い、6,000人以上を動員。今後も海外での興行を増やそうとしている。棚橋は「アメリカのファンの反応は凄かった」と感想を語った。
プロレスの本場であるアメリカで、日本のプロレスが受け入れられたことに関して、プチ鹿島は、「ハリウッド映画のファンは、世界にもっと面白い映画を探す。そうすると、西洋とは全く違う価値観があったことを発見する、という楽しさと同じでしょう」と分析した。
番組の最後には、プロレス人気の象徴として、社会人でプロレスをやっているローカル・プロレス団体を紹介。そのVTRを棚橋は温かい目で見ていた。
かつてはメジャー団体、特に新日本プロレスはインディー団体に対してすら批判的で、ましてや所謂『アマチュア・プロレス(アマチュアなのにプロと付くのも変な表現だが)』など絶対に認めなかった。
ホント、時代は変わったもんだ。
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