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第30回プロレス文化研究会潜入記 テーマは「アントニオ猪木という現象」

10月27日(土)昼過ぎに催されたプロレス文化研究会に行ってきた。場所はおなじみ京都三条の小粋なクラブ”ル・クラブジャズ”である。当日の進行は二部構成で、業界永遠のヒーローであるアントニオ猪木についての調査発表会となった。

1、「アントニオ猪木についてのアンケート」結果に基づいてのディスカッション
2、ビデオ上映 アンケートを参考に決定。

アンケートの項目について簡単に記すと
○猪木が好きですか嫌いですか(またその中間派)、そしてその理由。
○あなたは猪木信者だったことはありますか(かつてそうだったなど)、そしてその理由。また猪木信者についてどう思うか。
○「アントニオ猪木」と聞いて真っ先に連想するイメージ。
○プロレス以外も含めてすべてにおいて「アントニオ猪木」の印象に残っているパフォーマンスは?

 稀代のトリックスター☆アントニオ猪木について、どの様に思うかが総数181人から導き出され回答されていた。意見の数々についてのデーターは行かれた方の特権でもあるので中身を記すのはあえて差し控えさせていただく。それにしてもプロレス史上最高のプロレスラーについて、それぞれの受け取り方の幅の広さには驚いた。他のレスラーならまずありえないであろう多種多様な真摯(しんし)かつユニークな回答が出ている。

 ストロングスタイルを旗印としたその第1人者がアントニオ猪木とされているが、その本質はアメリカンプロレス的でもあり、選手間ではロックアップ以降の肉体の動きはむしろ柔らかいものであったという。TAJIRIのように、すり足ステップで右回り。ただしリング中央にいる立ち位置が違うから、東洋の神秘といった脇役にならず、最初から最後まで主役を張り続けた。カメレオンのように変幻自在の数多い引き出しを持つ、良くも悪くもオールラウンダーだったのが猪木なのだ。「闘魂」を旗印にしながらも、直線型パワーファイターの系譜ではなく、当たりのインパクトは「ふにゃチン級」というのが対戦相手の言い回しである。

 あるベテランレスラーがかつて面白い事をおっしゃっていた。
「ものすごく口が上手で、本当にこの人の言うことは間違いないとうっかり思ってしまう。」
「だから俺は適当に話を聞いてさっさと逃げるようにしているんだ。」
 人間的魅力を兼ね備えた、騙しのビジネス・プロレスのスーパースターによる磁場の危うい側面を端的にあらわす一例である。確かに猪木には金はなくとも求心力があった。アドリブを対戦相手にまで回してしまう、天才レスラーであったことは間違いない。

 ちなみにビデオ上映は猪木対長州 1984年8・2蔵前、猪木のグランドコブラ決着の1戦であった。
文化研究会主宰の岡村正史氏の数々の過去の著作は、週刊ファイトの故・井上義啓先生、作家の村松友視氏に次ぐ活字プロレス文化における重要な位置を占める文献である。関心のある方は古書店やプロレスショップなどにいかれて是非探していただきたい。特にエステル出版刊の「知的プロレス論のすすめ」はお勧めである。

 最後にプロレス文化研究会のようなアナログ的なプロレス空間は、現在においては大変貴重なものとなってきている。プロレスとは数々の語り口がある奥深いジャンルでもある。ならば好きなプロレスとどっぷり浸(ひた)りきるなら、こういう猪木の多面性議論もかつ楽しいではないか。次回も、より多くのファンが全国から京都に集うことを願ってやまない。

レトロ狂時代

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2007年11月05日 15:42に投稿されたエントリーのページです。

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