1週間ぶりに真夏日が去った5月29日の都心部だったが、後楽園ホールは暑く燃えた。
　熱の発生源は、現役選手3人の少数精鋭にして女子プロレス界きっての武闘派、SEAdLINNNG。　
　第3試合、世志琥と真琴の2人に痛ぶられた神童ミコトが何度も立ち上がり、抑え込みの連発で世志琥からあわやのシーンを演出すると、続く第4試合ではタッグチャンピオンのアクトレスガールズ高瀬みゆきが、アマゾン&松本浩代のパワー殺法の洗礼を受ける。

　規格外と思える波状攻撃を耐えての切り返しでベルトを死守すると、場内はすっかりヒートアップ。
　
　セミファイナル、初のシングルでの激突となった朱崇花と中島安里紗のスペシャルマッチは、予想通りハイスポットの激闘。場外へコーナーポストからムーンサルトを放ち、顔が歪むほどの蹴りを叩き込んだ朱崇花に対し、中島安里紗も応戦。最後は脚を固めてのジャーマンでぶっこ抜いた。

　メインには、SEAdLINNNGの代表にしてトップレスラーである高橋奈七永がベルトを携えて登場。かつて師弟関係にあったMarvelous彩羽匠の挑戦を受けた。セミファイナルに勝るとも劣らない激しい打撃戦を繰り広げ、高橋奈七永はナナラッカ、冷蔵庫爆弾と必殺技で畳みかけるが彩羽匠は2.9で跳ね返す。逆にラニングスリーで投げっぱなしで叩きつけると、6年間の想いを込めた全身全霊の片エビ固めでついに高橋奈七永から3カウントを奪った。

　
　試合後、
「高橋奈七永が居なかったら今こうしてプロレスをやってなかったかもしれない」
と感涙にむせぶ彩羽匠に、
「思ってたよりベルトが似合うな。でも私は何度でも立ち上がる」
と、返す高橋奈七永。
　感動の大団円となるはずが、中島安里紗がリングインすると
「テメェ何負けてんだ」
と、ベルト流出の怒りに任せ頭部を蹴り上げる暴挙で大ブーイング。
　SEAdLINNNGならではの大荒れの幕切れとなった。

　リングサイドで彩羽匠の戴冠を見届けたMarvelousの総帥、長与千種はご満悦で会見場に現れると、中島安里紗を
「昔、JWPに初めて上がった当時の長与千種の嫌われように似てる」「下品だけど天才だ」
と絶賛。そして
「顔は可愛いけど心はブスだから、ぶりっ子は止めてヒールになれ！　」
と、中島安里紗も思わず苦笑いのエールとアドバイスを送った。

　一方、かつての師であった高橋奈七永に勝ち、プロレスラーを目指すキッカケであり、現在の師である長与千種の眼前で他団体のシングル王座を奪った彩羽匠は
「自分達の世代が女子プロレスを変えていかないといけない」
と、危機感を覗かせつつも、
「女子プロレスを統一する気持ちで、V字回復させて、皆さん（メディア）をお金持ちにします！　」
と、頼もしい言葉で締めくくった。

　秋には川崎競馬場、カルッツかわさきでビッグマッチ開催を発表したSEAdLINNNG、タッグ王座、シングル王座の争奪戦に加え、高橋奈七永が所持するもう一本の赤いベルト『爆女王』の防衛戦も絡み、ますます血で血を洗う過激な闘いが繰り広げられそうだ。

■　SEAdLINNNG～STAY TUNE2019～
日時：5月29日（水）　開始19:00
会場:東京・後楽園ホール
観衆:652

＜第1試合　シングルマッチ　15分1本勝負＞
〇水森由菜
　7分27秒　スーパーガール
●沙恵(名古屋ドリームガールズ)

＜第2試合　ハイスピード3WAYマッチ　15分1本勝負＞
〇星月芽依(Marvelous)
　6分31秒　片エビ固め
●Maria(Marvelous)

＜第3試合 タッグマッチ20分1本勝負＞
〇世志琥　真琴
　16分02秒　ラリアート⇒片エビ固め
水波綾(プロレスリングWAVE)　●神童ミコト(Marvelous)

＜第4試合 SEAdLINNNG BEYOND THE SEA Tag Championship 30分1本勝負＞
［王者組］〇高瀬みゆき　有田ひめか（アクトレスガールズ）
　13分19秒　エビ固め
［挑戦者組］松本浩代　●アマゾン
※第4代王者初防衛に成功

ベルトもすっかり馴染んできたアクトレスガールズの名コンビ。しかし次戦は世志琥が松本浩代と組んで挑戦者に名乗りを上げ、一難去ってまた一難となりそうだ。

＜第5試合 スペシャルシングルマッチ20分1本勝負＞
〇中島安里紗
　10分17秒　四の字ジャーマンスープレックスホールド
●朱崇花

＜メインイベント SEAdLINNNG BEYOND THE SEA Single Championship 30分1本勝負＞
［王者］●高橋奈七永
　21分21秒　ランニングスリー⇒片エビ固め
［挑戦者]〇彩羽匠（Marvelous）
※初代王者4回目の防衛に失敗。彩羽匠が第2代王者となる。