[ファイトクラブ]日本マット界を彩った『トンでも外人レスラー』列伝!

[週刊ファイト5月24日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼日本マット界を彩った『トンでも外人レスラー』列伝!
 by 安威川敏樹
・ジャイアント馬場よりも17cmもデカい空手家、ラジャ・ライオン
・アントニオ猪木、異種格闘技戦での最大の失敗作、ミスターX
・レフトフックなのに得意技は右ストレート!? レフトフック・デイトン
・これがブッチャーの後釜候補!? グレート・マーシャルボーグ
・馬場が一番ちっちゃいタッグ・マッチ! ザ・ランド・オブ・ジャイアンツ


 筆者はプロ野球でも『トンでも外人』と呼ばれる助っ人が好きで、彼らは期待させながら、必ず肩透かしを食わせてきた。
 ミスター・レッドソックスと呼ばれながら『神のお告げ』によりサッサと日本を去ったマイク・グリーンウェル、メジャー通算230本塁打の長距離ヒッターにもかかわらず日本では打率.151に終わったロブ・ディアー、西武に移籍した田淵幸一に代わる長距離砲として期待されながら、136三振という当時の三振記録を樹立したリロイ・スタントン。
 なんや、阪神の外人選手ばっかりやんか。とすると、今季のウィリン・ロサリオもその予備軍か……。
 この原稿を書いている最中、手を休めようとテレビを点けたら、1989年のMLBオールスター・ゲームの放送をしていた。そこに登場していたのは、阪神に在籍したグレン・デービスとダイエー(現:ソフトバンク)でプレーしたケビン・ミッチェル! 日本では『トンでも外人』の代名詞的な彼らも、メジャー・リーグではスターだったのだ。

 彼ら『トンでも外人』に共通しているのは、期待されながら思うような成績を残せなかった点だ。したがって、期待されていない外人は『トンでも外人』になりようもない。

 プロレス界にも数々の『トンでも外人』が来日した。彼らは『未知の強豪』というフレーズで日本のマット界に現れ、全くの期待外れで去っていったのである。
 しかし、彼らの功績をこのまま埋もれさせるのはあまりにも惜しい。登場した当時は日本のファンに失望させたとしても、彼らは確実に日本のプロレス・ファンの脳裏に焼き付いているからだ。

 そんなプロレス界の『トンでも外人』を追ってみよう。

ジャイアント馬場よりも17cmもデカい空手家、ラジャ・ライオン

 トンでも外人と言って、まず名前が思い浮かぶのがラジャ・ライオンだろう。ジャイアント馬場にとって唯一の異種格闘技戦、その相手となったのが史上最高の『トンでも外人』ラジャ・ライオンだった。

 ラジャ・ライオンはパキスタンの『バンドー空手』の空手家。バンドー空手って、何!?
 ラジャ・ライオンが注目されたのは、バンドー空手よりも、その身長。なんと226cm! 209cmのジャイアント馬場よりも17cmもデカい!

 ジャイアント馬場よりも遥かにデカい空手家が、どんなファイトを見せるのだろうかと注目が集まった。1987年6月9日、日本武道館で両者が対戦した。

 しかし、この試合を見て爆笑しなかったプロレス・ファンは一人もいないだろう。ラジャ・ライオンがトンでも過ぎたのだ。
 馬場に対してキックを放つと、自らバランスを崩して倒れてしまう。しかも、それが何度も続く。お前、何しに来たんだ!?
 さらに、キックもチョップもスローモーションを見ているように遅い。馬場は晩年、スローモーションのような動きと酷評されていたが、ラジャ・ライオンは若いにもかかわらず、馬場よりも遥かに動きが遅いのだ。
 結局は馬場の裏十字固めという、普段のプロレスでは滅多に見せないサブミッション技でラジャ・ライオンはあっさりギブアップ。
 もう一度言う。ラジャ・ライオンよ、お前は一体、何しに日本へ来たんだ!?

▼ジャイアント馬場、唯一の異種格闘技戦、ラジャ・ライオンとの闘いでギブアップ勝ち

 この試合は、アントニオ猪木が異種格闘技戦を盛んに行っているのを見て、ジャイアント馬場による「異種格闘技戦なんて、所詮こんなもんだよ」というメッセージだったとも言われる。
 その後、ラジャ・ライオンは全日本プロレスに入団したが、いつの間にか消えていた。三度目になるが、ラジャ・ライオンよ、YOUは何しに日本へ?

▼ラジャ・ライオンがジャイアント馬場との対戦の前に、バラエティ番組に出演

アントニオ猪木、異種格闘技戦での最大の失敗作、ミスターX

 異種格闘技戦と言えばアントニオ猪木の専売特許。柔道のオリンピック金メダリストのウィリエム・ルスカ、史上最強のヘビー級ボクサーであるモハメド・アリ、極真空手の第一人者だったウィリー・ウィリアムスなど、数々の異種格闘技戦でプロレス人気を盛り上げていった。

 しかし、その中でも失敗作はある。その最たるものがミスターXとの異種格闘技戦だった。
 ミスターXというのは覆面の空手家。空手家がマスクを被っているという時点で、既に怪しさ満載である。

 だが、この試合は漫画『四角いジャングル(原作:梶原一騎、作画:中城健)』によって大いに盛り上がっていった。極真空手で最強の空手家、ウィリー・ウィリアムスよりもミスターXの方が強いのではないか、と読者の興味を駆り立てたのである。
 もちろん、読者だけではなく、ミスターXはとてつもなく強いという印象をプロレス・ファンに植え付けた。

 その正体は黒人空手家のポコ・ガブリエルと、漫画の中でアントニオ猪木は推測した。もちろん、ポコ・ガブリエルなどという空手家が実在したのかどうかは、定かではない。
 しかし『四角いジャングル』では、ミスターXがウィリー・ウィリアムスに比肩する実力者だと喧伝した。

 だが、1979年2月6日の大阪府立体育会館に現れたミスターXは、ただのデブ。空手着はデブを覆い隠すだけの代物でしかないという格好で、技は何もなし。スローモーな蹴りと突きを出しただけで、最後はアントニオ猪木の腕ひしぎ逆十字でアッサリとギブアップした。

『四角いジャングル』では、黒崎健時が「あいつ、ニセモノじゃないか?」と推察、つまりミスターXが猪木と闘う前に、極真空手によって抹殺されたというのだ。その首謀者は、他ならぬウィリー・ウィリアムスだったという。
 ここまで来れば、ファンタジーも過ぎる。結局はウィリー・ウィリアムスの強さが誇張され、アントニオ猪木vs.ウィリー・ウィリアムスの対戦が一気にクローズアップされた。

 ちなみに、ミスターXの正体はマーク・ギブソンと言われ、「誰やねん、それ!?」と言いたくなるが、異種格闘技戦の相手に困った新日本プロレスが大慌てで覆面空手家を作り上げたという。

▼とても空手家とは思えない百貫デブ体型のミスターX

YouTubeキャプチャー画像より https://www.youtube.com/watch?v=4fDOVacVMRs

レフトフックなのに得意技は右ストレート!? レフトフック・デイトン

 ミスターXの次に猪木が異種格闘技戦を闘った相手がレフトフック・デイトン。なにしろミスターX戦の後だっただけに「ひょっとして、コイツも……」と当時のプロレス・ファンには不安もよぎった。
 全米カンフー王者という怪しすぎる肩書から、実は空手とは関係なく単なるボディービルダーだったとか、来日してからのデモンストレーションでは手錠を引きちぎったり、首吊りパフォーマンスを行ったりと、ほとんどゲテモノ扱いだった。
 しかも『レフトフック』という名前とは裏腹に、得意技は右ストレートという、全く訳のわからない経歴だったのである(※契約前に所属していたジム名がレフトフックだった)。

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