[ファイトクラブ]実録アンドレ・ザ・ジャイアント~追悼・人間発電所~頑固Bバックランンド

[週刊ファイト4月26日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼実録アンドレ・ザ・ジャイアント~追悼・人間発電所~頑固Bバックランンド
 タダシ☆タナカ+シュート活字委員会編
・感動巨編!HBOがアンドレの生涯に迫る秀作ドキュメンタリーを公開
・MSG今昔:イタリアのブルーノ、ポーランドのプトスキー、アイリッシュの超人
・悲しき大巨人エピソード:成田への飛行機機内ではトイレ内に入れない
・ブルーノ・サンマルチノ追悼!1980年シェイ・スタジアムでの金網戦裏
・68歳ボブ・バックランド来日:全盛期当時のMSG定期戦での真実公開


 米国の有料ケーブル局最大手のHBOが、長年制作中であることが伝えられていた大巨人アンドレ・ザ・ジャイアントの90分ドキュメンタリーを公開した。そもそもWWEの協力を仰ぐ必要があり、ビンス・マクマホン以下も証言参加しているが、『レッスルマニア』関連の話題で一般紙もプロレスを取り上げる時期に放送解禁を合わせたことになる。
 また、WWEネットワークのほうでも連携しており、試合やインタビュー番組など沢山の動画が公開されており、目にした方も多いであろう。それらには若き日のリングサイドの筆者のみならず、井上譲二記者の姿も確認できる。HBO版に関しては、同じく本誌のジョージ・ナポリターノは何度も映り込んでいるのに、筆者とより懇意だったビル・アプターは出てこない(笑)とか、色々当時の業界人ならではの裏話もあるが、そんなことはどうでもイイ。まず、プロレス、もしくはプロレスラー題材の本格ドキュメンタリーが制作され、それが、日本国内の感覚比較としてはWOWOWのオリジナル番組として、スポットCMも大量にあちこちで流された上で大々的に公開されたのだから、やはりプロレス市民権が確立している北米という図式の納得から紹介する必要があろう。

感動巨編!HBOがアンドレの生涯に迫る秀作ドキュメンタリーを公開

 カネと時間をかけて編集された、非常によくできた秀作である。なにしろ、使った写真の点数だけで膨大であり、例えば井上譲二記者の姿なんか0.3秒位、当時横にいたから確認できるのであって、普通に見ているファンにはわからない。レスリング・オブザーバー紙のデイブ・メルツアーも証言収録は丸一日しゃべり続けたのに、最終版で使われたのはわずかという案配である。また、もう1名の評論家のほうが、しゃべり方がうまかったから、歴史をなぞるのに多く使われてしまう。ドキュメンタリー制作はそれで普通であって、当時現場に関与していた者からしたら、ここは〇〇に話させるべきとかの指摘はあるんだが、それは仕方ないの世界である。


Sports Illustrated誌宣材より

 あと、世間にどう紹介されるのかとかも気になるところであり、トレイラー(予告編)画像にはモハメド・アリとの1枚が使われるとか、アーノルド・シュワルツネガーとのカットも出回っており、これは想定内であろう。時間的制約もあるから、この作品に関しては日本もアントニオ猪木も、数枚の写真とか数秒の映像を例外として出てこない。基本はハルク・ホーガン証言に多くの時間が割かれており、1987年3月29日の『レッスルマニアIII』と、同年公開の映画『プリンセス・ブライド・ストーリー』をハイライトにしているのも、世間向きを思えば妥当な判断となってしまう。

 但し、ドキュメンタリーはリアルで、作り事の世界である映画とは違うという観点からは、そもそもアンドレに限らず、身長・体重からして大袈裟に吹聴するファンタジー業界のプロレスを題材とする場合、細部のウソが気になるとかは指摘せざるを得ない。だいたい、例えばエドワード・スノーデンという題材を扱う場合、名監督として評価の高いオリバー・ストーン版の映画と、実際の証言テープを使ったスノーデン本人のドキュメンタリー作品だと、やっぱり後者の方が面白いとかがあったから難しいのだ。横道にそれるが、そのオリバー・ストーン監督の音楽映画『The Doors』(91)にせよ、いくつかの曲は知っている、聴いたことがある程度の世間向きにはあれでイイのだという評価がある反面、実際のファンからしたら、この描き方はないだろう、全然違うじゃないかと酷評せざるをえないのと似ている。

「ワインをケースごと全部飲んだ」に象徴される、そもそもがファンタジー伝説に塗り固められてきたアンドレの生涯である。ヒールになってハルク・ホーガンと『レッスルマニアIII』で闘った、ミシガン州のポンティアック・シルバードームが9万3173人動員という主催者発表からして、大袈裟にもほどがあるとシュート活字では叩かざるを得ない以上、ドキュメンタリー映画とはいえ、やや美化し過ぎた感は否めない。そこが故人を扱う場合と、『スノーデン』のようなついこの間の世界を震撼させた事件で、当事者たちはもちろん生存していることを思えば、これまたある程度は仕方ないのであろうか。

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