ケン・片谷『メシとワセダと時々プロレス㉖』29年の時を経て、ようやく実現した成人式!

29年の時を経て、ようやく実現した成人式! 大切な学友が、オイラの背中を押してくれました! えっ!? 何を今さら? そこにはオイラにしか分からない、こだわりの理由があったのです。果たして、29年前の成人式と今の成人式の違いは?…

今では1月の第2月曜日に設定されるようになった『成人の日』。
今年も多くの新成人が、社会へと巣立っていきましたね。
「祭日を有効に取りましょう」と、土日を絡めて連休にするという世間の流れでしょうか? 体育の日も、かつては前回の東京オリンピックの開会式にちなんで10月10日とされていましたが、今や連休優先になってしまいましたね。

こんな風潮、何年前から始まったかは忘れてしまいましたが、オイラが二十歳の頃は成人の日は1月15日と相場が決まっていました。
今の新成人は知らないかもしれませんが、その日が水曜日だろうが、日曜日だろうが、各市町村の「成人を祝う式典」も1月15日に行われていたのです。

オイラの地元横浜市は、全国で最も新成人の数が多い自治体として毎年報道されています。今では、1万人以上を収容する横浜アリーナで、午前と午後の2回に分けて行われている式典ですが、オイラの年までは、プロレス会場のメッカでもある「横浜文化体育館」で行われていました。当然、横浜アリーナに比べると明らかにキャパは少ないので、午前2回と午後2回の計4回行われていました。だとしても、今よりずっと同年代人口が多かった時代に、よく横浜文化体育館の箱で収まったなという印象です。正確には分かりませんが、おそらく横浜アリーナに比べたら横浜文化体育館の収容人員は、半分以下か下手をすれば3分の1も入るかどうかだと思います。

成人の日の式典といえば、中学や高校の同級生との再会を楽しむのも醍醐味のひとつですよね?
また、ゲストに有名人を呼んで行われるのが常でした。毎年、今年のゲストは誰だろう? なんて予想しながら楽しんでいたものです(笑)。
オイラが招待を受けた1987年度の横浜市の成人式のゲストは、なんと『いんぐりもんぐり』でした!
「えっ!? いんぐりもんぐり?」
きっと、ほとんどの方は存在を知らないでしょうね(笑)? かく言うオイラもおぼろげな記憶しかありません。しかし、当時はヒット曲(タイトルまでは覚えていませんが…)もあって、ニッポン放送の「オールナイトニッポン」のパーソナリティーまで務めた人気グループだったのです!
さらにいんぐりもんぐりは、横浜出身の同級生ということでゲストに呼ばれたわけですが、どうせなら後世まで名の残るゲストに来て欲しかったですよねぇ(笑)。

さて、昨年50歳の誕生日を迎えたオイラですが、こんなオイラにも二十歳の時はありました(笑)!
じゃあ、二十歳の頃は何をしていたか…?当時オイラは、早稲田大学を目指して“絶賛二浪中”でした。
今はもうなくなりましたが、早稲田大学の正門のすぐ横にあった予備校に通い、最後の追い込みをかけている時期でした。
成人式当日の1月15日は、最後の「早慶模試」があったので、当然横浜市の式典にも出席していません。

どういうわけだか、この日のことは今でも実に鮮明に覚えています。
午前中の模擬試験が終わり、昼食を摂ろうと予備校の外に出ました。
すると、早稲田大学正門前の大隈講堂の辺りが何やら賑わっています。
よく見ると、そこには大勢の新成人が列を成しているではありませんか? みんな、綺麗な晴れ着や新調したスーツを身にまとっています。
そう、オイラが見たのは、成人の日を迎えた早大生が大隈講堂の前で記念の写真を撮ろうと、撮影の順番待ちをしていた光景でした。
それを見てオイラは愕然としました。オイラの目の前にいる新成人は、全員オイラと同い年です。オイラだって既に早稲田に合格していれば、この渦の中にいてもおかしくはなかったのです。
悔しさと絶望感で、午後の模擬試験のことは記憶にありません。

紆余曲折あり、最初の受験から29年の月日を経て、オイラはようやく早稲田大学に入学しました。
思えば、学歴コンプレックスと共に生きた29年間でした。
47歳で早稲田に入り、迎えた2年目。もし、オイラが早稲田に現役合格をしていれば、ちょうど成人の日を祝っていた年です。

オイラが早稲田大学に入学した時の目標のひとつに、『あの頃できなかったことを全てやる!』というのがありました。
あの日にできなかった、大隈講堂前での記念撮影。

「せめて、一枚でいいから写真を撮りたいなぁ。」

ある日、こんな言葉を学友の前で漏らしたことがありました。

すると、何人かの学友がこの言葉を覚えていてくれたのです!

「一緒に写真を撮ろう!」

そう言ってくれたのは、3年生や4年生の“先輩”方です。自分たちはもう成人式は済んでいましたが、改めてオイラのために一緒に写真を撮ってくれるというのです!

ならばと、オイラも図々しいお願いをしました。

「“その日”は、1月15日がいい!」

1月の第2月曜日ではなくて、オイラが二十歳の頃行われていた1月15日にこだわりたい…。

運の良いことに、偶然にもこの年の1月15日は日曜日で、みんなが集まりやすい日だったのです!
「よし!決まった!!」
かくして、オイラがこだわり続けた29年越しの成人式が執り行われることとなりました!

約束の日、天気もオイラに味方してくれました。雲ひとつない、抜けるような青空。まさに“紺碧の空”です!
そして約束の場所、大隈講堂前に有志の学友が集まってくれました!
こんなに嬉しいのは入学式以来です。オイラのくだらないワガママ、他人にとってはどうでもいい29年前のオイラの小さなこだわりに、親子ほど年の離れた現役の早大生が付き合ってくれたのです! みんな、なんていい子ばかりなんでしょう!

学友にもらった花束を片手に、写真を撮りまくりました! 大隈講堂はもちろん、大隈重信先生の銅像前でも撮りました。見た目はオッサンかもしれませんが、心は二十歳です! 周りの目なんて一切気になりません。むしろ、やっとの思いで迎えた成人のお祝いを思う存分楽しみました。

一通り写真を撮ったあと、早稲田大学近くの『穴八幡宮神社』にお参りに行きました。これもオイラのこだわりのひとつです。穴八幡宮で、“二十歳の誓い”をしたのです。
穴八幡宮は、早稲田界隈では初詣の名所としても知られています。まだまだお正月ムードが漂う穴八幡宮。日曜日ということもあって、この春早稲田大学を受験する受験生が合格祈願している姿も見受けられます。
周囲から見たら、オイラが成人のお祝いで穴八幡宮に来ているなんて、誰が想像するでしょうか? せいぜい、息子や娘の合格祈願でもしているという風に写ったでしょうね(笑)?

さぁ、お参りのあとは、いよいよ祝賀会です! 二十歳の誓いを終え、ようやくオイラも堂々と人前でお酒が飲めるようになったのです(笑)!
ここでは、学友から数々のプレゼントもいただきました。今日来てくれただけでもめちゃくちゃ嬉しいのに、なけなしのお小遣いをはたいて心のこもった贈り物をくれたのです! 一生大事にするからね!
オイラもお礼に、来てくれた全員に“ケン・片谷Tシャツ”をプレゼントしました! 気に入ってくれたかなぁ?

29年の時を越え、実現した成人式。おそらくオイラひとりでは大隈講堂に行かなかったことでしょう。オイラのウジウジとしたどうでもいいこだわりに、学友が付き合ってくれた。そして、背中を押してくれた。世の中、こんなに幸せな49歳がいるでしょうか!?

こんなに素敵な学友に支えられ、オイラは今日も遅れて来た大学生活をエンジョイしています!
何にもおかしいことはありません。ただ、人より29年遅れているだけなのです。“たった”29年です。それ以外は、他の大学生と何ら変わりはないのです!
笑いたければ笑えばいい。そんじょそこらの覚悟では、今さら大学なんて通えません。
これからも、益々楽しんじゃいますよ(笑)!