[週刊ファイト12月21日号]収録 [ファイトクラブ]公開中
▼鷹の爪賞2017 追悼D・N・ニールセン 「異種格闘技戦・オブ・ジ・イヤー」
「アプセット・オブ・ジ・イヤー」「敢闘賞・オブ・ジ・イヤー」
by 稲垣 收
・訃報!ドン・中矢・ニールセン 無名だったホイス・グレイシーと練習
・異種格闘技戦2017――メイウェザーvs.マクレガー
・夢対決2018? フォアマンvs.セガール
・女子格闘技界に大きなうねり。アプセット・オブ・ジ・イヤー”ヨアンナUFC王座陥落
・敢闘賞オブ・ジ・イヤー 日本で総合デビューしたロクサンがUFC王座挑戦
2017年は古くからのプロレス・格闘技ファンにとってショックなニュースがあった。
前田日明と新日本プロレスのマットで異種格闘技戦を戦い、前田が”新・格闘王”の称号を手にすることとなった革命的な一戦の相手、ドン・中矢・ニールセンが亡くなったことだ。
筆者は本誌でも追悼記事を書いたが、ニールセン氏が亡くなるちょうど1ヵ月前に国際電話でインタビューしており、その記事が掲載された『逆説のプロレス 9』(双葉社スーパームック)が発売されたのは、訃報の2日後だったのだ……
そのインタビューでニールセン氏は前田戦の裏話や、数々の興味深いエピソードを披露してくれたが、ここでその一部を引用しておこう。
***
前田戦の前にはジーン・ラベルと、前田戦後はホイス・グレイシーとも練習した
――前田や山田、藤原との試合に備えて、どんな練習をしたんですか?
「ロサンゼルス市立大学に行って、有名なジーン・ラベル(*Gene LeBell、1932年生まれ。柔道十段、柔術九段の武道家で、プロレスラーとしても活躍。アリvs猪木戦ではレフェリーを務めた。多くの格闘家を指導し、元UFC女子バンタム級王者ロンダ・ラウジーにも指導していたことがあり、UFCでロンダのセコンドについたこともある)と、週3回練習したんだ。彼がチョークとか、サブミッションの防御法を教えてくれた。それに、前田戦の後には、ホイス・グレイシーとも練習したよ」
――えっ、ホイス・グレイシーと!?
「ああ。ホイスの長兄のホリオン・グレイシーともね」
――当時はまだUFCも始まってないし、彼らは無名の存在でしたよね?
「うん、そうだね。でも私は彼らについて、何冊かの格闘技雑誌の記事で読んだんだ。それに、ホリオンはロサンゼルス郊外のトーランスで道場を開いていて、私の家のすぐそばだったんだよ」
――それは面白いですね! 僕もトーランスのグレイシー・アカデミーには何度も取材に行ったことがあります。前田戦のすぐ後くらいだと、ホイスはまだ若かったですよね?
「20代の初めだったね」
――彼らとは、どれくらい練習したんですか?
「2~3ヵ月だから、そんなに長い期間じゃないな」
――ホイスやホリオンの印象はどうでした?
「とてもいい人たちだったよ。とても親切に、いろいろ教えてくれたんだ」
――あなたは92年には藤原組に参戦し、ケン・シャムロックと対戦してますが、ホイスは93年の第1回UFCでシャムロックを破って優勝しました。
「私はシャムロックには、腕ひしぎ十字固めで1R一本負けしたね」
――第1回UFCのトーナメント準決勝で、シャムロックはホイスに一本負けしています。
「面白い因縁だね」
――シャムロックとホイスは合計3度戦っています。
「オ~、それは知らなかったな。結果はどうなったんだい?」
――まず93年のUFC1でホイスが勝ち、95年のUFC5での再戦では引き分け。そして昨年2月のベラトールで3度目に対戦し、今度はホイスがTKO勝ちでした。
「TKO? グレイシーがTKO勝ちってのは面白いね!」
――そうですね。ホイスも「自分のキャリア初のKO勝ちだ」って喜んでました。
***
ニールセン氏のご冥福を心から祈る。
***
異種格闘技戦2017――メイウェザーvs.マクレガー
異種格闘技戦・オブ・ジ・イヤー
異種格闘技戦といえば、今年は”ボクシング・レジェンド”フロイド・メイウェザーvsUFC2階級制覇王者コナー・マクレガーのボクシング・マッチもあった。
結果はメイウェザーが10R、TKO勝ちしたが、マクレガーも不慣れなボクシング・ルールでよく健闘したと思う。
その後は、ボクシング史上初の6階級制覇を成し遂げたオスカー・デ・ラ・ホーヤやマニー・パッキャオが、「マクレガーとボクシング・ルールで戦いたい」と言っている。
ボクサーにとって総合格闘家とボクシング・ルールで戦うのは、楽に勝てて、しかもマクレガーほどのスターが相手だとビッグマネーも稼げるので一石二鳥なのだろう。
しかし、それは本来の意味での”異種格闘技戦”ではない。
やはり「何でもあり」に近いルールで違うバックグラウンドの選手同士が戦うのが見たい。その意味では、ジョージ・フォアマンが「何でもありルール」でスティーヴン・セガールに挑戦を表明しているのが興味深い。
フォアマンは「ジョージ・フォアマン・グリル」という肉焼きプレートが大ヒットして、ボクサーとして現役時代に稼いだ以上の大金を稼ぎ、いまや大金持ちなのだが、カネのためにではなく、セガールと戦いたい、というのだ。
フランク・シャムロックのコーチだったアメリカン・キックボクシング・アカデミーの代表ハビアー・メンデスが以前筆者に言ったことばを思い出す。
「スター選手というのは、一度引退しても、あのリングの上での脚光が忘れられなくて、カムバックしたくなるものなんだよ」
そのハビアーのことば通り、フランクも何度も引退とカムバックを繰り返した。
メイウェザーもだ。
メイウェザーはマクレガー戦後のリングで「これで永遠に引退だ」と語ったが、最近、また復活を匂わせる発言をしている。そしてInstagramにジムでサンドバッグを打つ動画をアップロードしている。
オスカー・デ・ラ・ホーヤも引退して久しく、今はゴールデンボーイ・プロモーションのCEOとして大成功しているが、「マクレガー戦のために数ヵ月前から密かに特訓を開始してたんだ」と最近明かしている。
さて、今度はメイウェザー、パッキャオ、デ・ラ・ホーヤの誰がマクレガーとやることになるのか? それとも話題だけで終わるのか?
しかしマクレガーとしては、この3人の誰とやっても、UFCでの試合の10倍以上のファイトマネーが稼げるはずだ。
夢対決2018? フォアマンvs.セガール
ただ、そこまでのビッグマネーが動かないにしても、フォアマンvs.セガールは見てみたい。セガールは、UFCミドル級で絶対王者と呼ばれていたアンデウソン・シウバがヴィトー・ベウフォートを前蹴り一発でKOし、リョート・マチダがランディ・クートゥアーを同じく前蹴りで一撃KOする直前、この2人に蹴りのコツを教えたというのだ。アンデウソン自身も、セガールに教わったと語っている。
下記は、アンデウソンを指導するセガールの動画だ。