[ファイトクラブ]ボビー・ヒーナン追悼~AWA~藤田和之~女子プロ革命~Sareee~Tストーム

WCW実況時代、カリフラワー・アレイ・クラブでボブ・オートンjrを讃えた晩年 photo by Mike Lano

[週刊ファイト9月28日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼ボビー・ヒーナン追悼~AWA~藤田和之~女子プロ革命~Sareee~Tストーム
 タダシ☆タナカ+シュート活字委員会編
・悪党マネージャー第一人者ボビー“ザ・ブレイン”ヒーナン73歳没する
・全国侵攻WWFとの興行戦争に敗れたAWA~重鎮たちが次々に亡くなる
・「猪木夫人から連絡が来ずじまい」~藤田和之は何がどうなったのか
・女子プロ革命続報~Sareee半年でシードリング退団、ディアナ出戻り
・トニー・ストーム『5★STAR GP』制覇!バイパー(パイパー・ニーブン)も流出か?



 海外取材の会場で、最初に生で見た時の印象が強烈だった。1980年8月、オークランド・コロシアムのAWA大会、メインはニック・ボックウィンクル、控室ではレオ・ノメリー二=プロモーターに挨拶して、パット・パターソンに話を聞いた。記録を調べればはっきりするにせよ、レイ・スティーブンスが凄かったとかは覚えているが、実際のカードがなんだったかはまったく記憶にない。
 この日、悪党組が負けたらヒーナンがWeasel(イタチ、卑怯者)の着ぐるみを身にまとい、観客の壮大なヤジにさられるという趣向の試合形式で、お約束通りに負けて失神、気絶している金髪男に勝ったチームの選手が着ぐるみに身体を突っ込む。ようやく正気に戻ると、イタチの恰好をしたヒーナンに、凄まじい” Weasel, Weasel”の大合唱を浴びせられるという迷場面が、今でも記憶に鮮明に残っている。つまり、選手よりも悪党マネージャーが集客のアトラクションだった。また、このスキットはその後、WWE他でも何度も再現されることになるが、この1980年の回が最初だったと思う。

▼RAWでのボビー・ヒーナン追悼ビデオ


 現地時間9月17日、“ザ・ブレイン”こと、ボビー・ヒーナンが亡くなった。73歳だった。2002年から喉頭癌を公表して病床にあったから、突然の印象はないにせよ、マット界には忘れられないキャラだったことは述べるまでもない。もし、ニック・ボックウィンクルにヒーナンが付いてなかったら、長期の王座君臨がありえたであろうか。あるいは、WWF(現WWE)がハルク・ホーガンをエースに全米侵攻を開始した時の貢献も忘れられない。“ブレイン”ボビー・ヒーナン率いる怪物軍団と共に、ホーガン最大の宿敵ユニットだったのが、“ラウディ”ロディ・パイパー、“ミスター・ワンダフル”ポール・オーンドーフ、そして“カウボーイ”ボブ・オートンjrだった。何せ『レッスルマニア1』のメインでハルク・ホーガン、ミスターTと対峙したのがこの悪玉ユニットである。

全国侵攻WWFとの興行戦争に敗れたAWA~重鎮たちが次々に亡くなる

150428ChicagoComiskeyPark8007181980年7月18日シカゴ・コミスキーパーク~左からグレッグ・ガニア、ジーン・オークランド、バーン・ガニア、サム・マソニック、ウォーリー・ガルボ~AWA黄金期

 バーン・ガニア、クラッシャー・リソワススキー、マッドドッグ・バション、ウォーリー・ガーボ(プロモーター)、ニック・ボックウィンクル、そしてボビー・ヒーナンが加わると、AWAの重鎮がすべて亡くなったことになる。日本のファンからすれば、ビル・ロビンソンも加えて欲しいと言うかも知れない。WWF(現WWE)との興行戦争に敗れたとはいえ、ビンス・マクマホンが72歳でテレビに出ていて、(禁止されている建前の)流血惨事を演じていたばかりを思えば、団体の滅亡だけでなく、根こそぎ幹部が亡くなったというのも皮肉なものだ。
 今の主たるファンには、WWF時代に善玉を応援するゴリラ・モンスーン実況と、悪役に肩入れするヒーナンのカラー・コメンテイターの凸凹コンビがもっとも記憶に残るようだ。

 晩年は、殺人医師スティーブ・ウィリアムスがそうだったように、肝心の声がでなくなっていたこともあり、表舞台からは姿を消していた。トップ画像にあるように、ボブ・オートンjrが表彰されたカリフラワー・アレイ・クラブに姿を見せたくらいだった。
 謹んでご冥福をお祈りします。

「猪木夫人から連絡が来ずじまい」~藤田和之は何がどうなったのか

―― 今週も、読者からのメール質問が目立ったのは藤田和之がどうなったのか、でした。ISMの両国大会発表会見詳細レポートでも、ちゃんと触れてあるのですが、一般のファンには消化できてないようです。

オフレコ いきなり両国国技館というのは、リスクが大きいわけだ。そこで、ずっと沈黙していた藤田和之が出てきて、「リング復帰します。その舞台がISMです」とやるなら、100万円とか言ってくるに違いない藤田の価値はあったと思う。ところが、東スポが「藤田復帰」を独占スクープしてしまった上に、諏訪魔だの大仁田厚の名前も出したから、サプライズの商品価値に見合わなくなってしまった。

―― 東スポ記事によると、ケンドーカシンが「こうなったら藤田戦は決裂だ。藤田も猪木夫人から連絡が来ずじまいだ。それも全て大仁田氏がフライングで発表するからだ」と、10・17 WAVE後楽園大会でぶちまけたそうです。これも先週号で先に活字にした通りの展開ですね。

オフレコ 大仁田の言い分も仕方ない。「ポスターも刷ってある」とかは作り話じゃないと思うし、他社の参戦事情なんか知ったこっちゃないとなるのも当然だ。きっちり事前調整して、どの団体はいつ発表とかを取り決めた上だったらルールは守っただろうが、そこの仕切りが出来ていなかった。本当にカシンがマネージャー兼務なら、そこまで配慮できてなかったということになる。

―― 東スポは続けてカシンを引用。「こうなったら10月21日の両国(INOKI ISN.2)に来い。俺たちも行く。猪木さんに筋を通せ。東金でもいいぞ。サイモン(猪木)も中野たむもだ。中野たむも筋を通せ」と意味不明な言葉を口走りながら会場を後にした。~そうです(笑)。

オフレコ 口約束でギャラ額が合意出来ていても、東スポに流したことで信頼関係が崩れた。もうその値段は出ませんとなるもの、プロモーターの世界ではよくあること。すべてはタイミングだから。

―― それで頭下げて、値段も下げても、もはや採算ベースに見合わあない。なにしろISM両国大会発表以降、「集客大丈夫なのか」とアチコチに書かれてしまった。

女子プロ革命続報~Sareee半年でシードリング退団、ディアナ出戻り

―― 先週号で十分やったと思ったんですが、北米でも、そして日本でも、『メイ・ヤング・クラッシク』カイリ・セイン優勝とか、NXT女子王者を決める4way戦がどうなるかなど、女子プロレスの話題が取り上げられることが増えています。

オフレコ タイムラグがあるからね。我々はなにかにつけて、いつも早すぎるから。東スポ記事によると、32名参加のトーナメントにスターダム参戦経験のある選手は12名と、数えてみた記者がいた。REINA女子プロレス参戦経験なら、数はもっと多いハズだよ。セリーナはREINAで引退試合をしたんだけど・・・。

―― 女子プロ関係者にとっては、日本で馴染みの選手ばかりですかねぇ。というか、一度も日本に来たことない選手って、たぶん1名とか2名なんじゃないですか? それほど、Joshi Puroresuに関しては、日本が本場というか、先行していたことになります。

オフレコ 今後は、それもWWEに盗まれると。まぁDIVAの時代は完全に終わったということでもあるけどね。

―― Sareeeが半年でシードリング退団というニュースもありました。

オフレコ 日本のプロレス報道に関しえは、スポーツ紙とかに載っていることを鵜呑みにしてもいけないと。高橋奈七永は、「何度も話し合い、最後は本人の意思を尊重した結果です」と言ってるけど、そういうことじゃないだろうと。

―― 確か、ディアナの大口支援者は、シードリングにも出資していて、要するにディアナはもはや誰にも給料を払えなくなってしまい、いわばヒモ付きで移籍したというのか、その支援者が給料分を肩代わりする形でシードリングに逃がせたと聞いています。

オフレコ 高橋や、夏樹☆たいようがSareeeにずっと目をつけていたとか、気に入ったから採用したんじゃない。スポンサーの意向だったからね。ソリが合うのかどうか、最初から懸念を感じていたから、驚きはなかったなぁ。要するに、怖い先輩たちにいじめられたと漏れ伝わっている。

―― 長与千種のマーベラスも、孤立しているとか。オールスター興行みたいなのを長与の名前で提案しても、ほかからそっぽ向かれてる話が何度か漏れてきています。あれだけ「二度と復帰しません」と吹いておいて、もはや完全に女・大仁田として現役復帰して試合してますから。

オフレコ また東スポになるけど、紫雷イオがスターダム内の(宝城への)お祝いムードに警鐘を鳴らしたという記事もあったけど、彼女もいずれWWEに合流するからなぁ。あくまでタイミングだと。

―― 日本の業界は危機感を持つべきというのは正論ですけど。オカダ・カズチカがWWEにいったら年俸がどうなるかという議論はありますけど、さすがにオカダとなると、新日だって、なんとか引き留める年俸は出す、と。2倍差なのか3倍差なのかという、どこまでが許容範囲なのか。

オフレコ 異国に住むリスクとか、金額で測れない要因も少なくないからなぁ。

―― でも恵まれてない女子選手の場合、WWEが本格的な金額を提示していくと、規模が違い過ぎて太刀打ちできません。10倍になった、ゼロの桁数が違ったとなってしまいます。

トニー・ストーム『5★STAR GP』制覇!バイパー(パイパー・ニーブン)も流出か?

オフレコ 我々は早すぎて、先端のファンでさえタイムラグが出てくるという話に戻るなら、トニー・ストーム流出を嘆いた記事は、一体いつの号なんだと。(6月23日ファイトクラブ公開)
外国人選手の大量離脱は大きいかと。スターダムではバイパーの英国出身パイパー・ニーブンでさえ、WWEは契約するという話があるから。

▼スターダム壊滅と恐るべき『メイ・ヤング・クラシック』~猪木お家騒動/他

[ファイトクラブ]スターダム壊滅と恐るべき『メイ・ヤング・クラシック』~猪木お家騒動/他

ケイ・リー・レイとバイパーは共に『メイ・ヤング・クラシック』に出場した

―― まさにDIVAの時代は終わったわけですね。バイパーは顔はカワイイけど、太っちょ体形の選手ですから。女子プロ革命なんだから、いろんなタイプを集めたいと。昔のような型にはまったDIVAが欲しいわけではなくなった。

オフレコ だって、宝城カイリは155cm 50.2kgだよ。あまりにもチビだけど、北米で受けちゃった。彼女もDIVAじゃない。

―― ところが、トニー・ストーム、『第6回5★STAR GP』を制覇して、「ワタシは、サイキョウ!」となりました。22歳目前ですが、春、夏のリーグを両方制覇しています。

オフレコ 2016年10月2日、スターダムとの所属契約が発表されているから、一年契約としても今スグには動けない。でも、これもタイミングだけだと思う。WWE首脳がGOサインなのは知れ渡っている。我々は女子プロ革命をWWEネットワークで楽しむだけだね。