「勝負論になった時に負けるっていう気がまったくしない」土肥孝司
6月6日の後楽園ホール大会で芦野祥太郎とのW-1チャンピオンシップに敗れた土肥孝司。熊ゴローとのタッグでW-1タッグ王座は奪還したものの、今回の『W-1 GP 2017』は巻き返しを図るための大事な大会となる。1回戦の相手は復帰後勢いに乗っている黒潮“イケメン”二郎に決定。長い付き合いのイケメンに対する思いや、グランプリへの意気込みを聞いた。
──今年も『W-1 GP』の季節がやってきましたが現在はどのような心境ですか?
土肥孝司選手
「まあ、俺はこの前、芦野にタイトルマッチで負けて、W-1チャンピオンシップからは一番遠いところにいると思うんですよ。でも、試合後にも言ったようにまた這い上がるだけなんで、そっちのほうが俺らしいかなっていう感じですかね」
──6月6日の後楽園ホール大会でのタイトルマッチは残念な結果でしたけど、もう一度やればいけるっていう手応えはありましたか?
土肥孝司選手
「全然ありましたね。まあ、試合内容には満足してないですけどね。ただ、彼はああいう態度を取ってても、あんだけW-1を良くしたいって言っているじゃないですか? だから、向かっている方向は一緒なのかなって、試合を通じて感じましたけどね」
──対立していても方向性は同じだということを感じられたと。でも、土肥選手にとってはこのグランプリが巻き返しの起点になりますかね?
土肥孝司選手
「そうしなきゃいけないと思っていますね」
──では、具体的にグランプリのお話をお聞きしますけど、1回戦の相手はイケメン選手になりましたけど、こちらに関してはどうお考えですか?
土肥孝司選手
「1回戦では当たりたくなかった相手ですね」
──イケメン選手とは付き合いが長いんですよね。
土肥孝司選手
「10年ぐらいの付き合いですよね。『ハッスル』で練習生をやってた頃からの付き合いですからね。シングルをやった回数は多くはないんですけど、W-1に来てからは1勝1敗らしいんですよ。来る前は負けることすら考えられないぐらいの差はあったと思うんですけどね(笑)」
──なるほど。デビュー時期もほぼ一緒ですもんね。
土肥孝司選手
「1カ月違いですよ。俺が先にデビューして、その次の月にあいつのデビュー戦の相手を俺がやったんですよ。だから、やっぱり特別な相手だし、シチュエーション的には決勝戦で当たりたかったなっていう思いはありますね」
──それだけ特別な相手っていうことですね。ただ、こういうトーナメントだとマッチメイクする側も1回戦にはいいカードを用意しますからね。それだけ期待されているカードということだと思うんですよね。
土肥孝司選手
「アハハハ! でも、今回は1回戦のルールが15分1本勝負じゃないですか?」
──そうですね。そして、引き分けだと両者失格になりますね。
土肥孝司選手
「とすると難しいなっていう。やっぱりワンデートーナメントなんでみんななるべく体力を消耗せずに上がりたいっていうことを考えて作戦を練ると思うんですよね」
──何しろ優勝するには1日3試合やらなきゃいけないですからね。
土肥孝司選手
「興行をダブルヘッダーしてとかで1日3試合はやったことはあるんですけど、一つの興行での3試合っていうのは経験がないんですよ。だから、どれだけ消耗するかわからないんですけど、俺はあんまりそういうことは考えずに試合に臨もうかなと思ってますね」
──スタミナを温存するために短期決戦を狙うとか、そういうことはしないということですね。
土肥孝司選手
「そういうことを考えてもうまくいかなそうですよね。俺はスタミナには自信があるんで、後先考えずにいこうかなと思います」
──わかりました。それでは1回戦の話に戻ります。イケメン選手がケガから復帰してきましたけど、復帰後の様子はどうですか?
土肥孝司選手
「相変わらず強くはないですよね(笑)。まあ、元々天才肌というかプロレスラーとして凄い部分はあるんですけど、決して強くはないです。だから、勝負論になった時に負けるっていう気がまったくしないですけどね」
──怖さはないと。
土肥孝司選手
「怖さはないです。ただ、ああいう“天才とバカは紙一重”みたいな奴が出してくる謎の行動、普通の人じゃ考えられない行動ってあるじゃないですか? その手の行動を取ってくることがあるんで、そこには気をつけたいですね」
──実際に6月の後楽園大会では近藤選手に勝ったりしてますしね。
土肥孝司選手
「まあ、あの試合はどうでもいいかな(笑)。ただ、あいつとの試合はどの選手を相手にするよりも違う思いになりますね。プロレス界に入って一番最初に知り合って仲良くなった人間なんで。そういう人間とここまで付き合いが長くなることって、珍しくはないと思うんですけど、そんなに多くはないと思うんですよね」
──特に今は選手の団体の出入りが多いですからね。
土肥孝司選手
「そうですよね。しかも、ずっと一緒の団体にいるんで、その分の思い入れは強いです」
──芦野選手との試合では「殺伐とした試合をやってやる」っていうモチベーションで挑んだじゃないですか? 普段はバチバチとした試合をされていますけど、今回のイケメン選手との1回戦はどういう気持ちで臨むつもりなんですか?
土肥孝司選手
「う~んあいつのペースに付き合いたくないけど、もしかしたら付き合っちゃうのかなっていう感じですかね?」
──イケメン選手は自分のペースに巻き込むのがうまいですもんね。
土肥孝司選手
「お客さんもそういう空気になると思うんですよね。だから、そこはあえてあいつのペースに付き合ってもいいかなとも思いますけど。ただ、イケメンとは最近当たってないんですよね」
──今はNEW ERAで一緒に組んで活動をしているから、どうしても対戦する機会自体が少なくなりますよね。
土肥孝司選手
「1年ぐらい触ってないですからね。去年の文体前ぐらいから触ってないかもしれないですね」
──文体前にケガして欠場してましたからね。
土肥孝司選手
「あ、そうか。でも、ケガして復帰してからは前のニンジンみたいな体型からはちょっとは大きくなっているみたいなんで(笑)。だから、俺も成長したけど、あいつもW-1に来た時よりも確実に成長していますよ。たまに一緒に練習をすることもあるんですけど、人間的に変わったかなっていうのは凄く感じますね」
──人間的にですか。それはどう変わったんですか?
土肥孝司選手
「いや、よくわからないですけど、W-1に来て1年、2年経った時に変わったなって思ったんですよ。大人になったんですかね? 責任感が出てきたのかわからないですけど、そんな感じはしましたよ。知り合ったのがあいつが14歳で俺が16歳の頃で、今は24歳と27歳。そりゃ大人になるかっていう感じですよね(笑)。まあ、ずっと弟みたいな感じだったんで」
──なるほど。だから、この1回戦は特別な思いを持って臨む試合だと。その他、気になる選手、試合はありますか?
土肥孝司選手
「近藤修司ですかね。近藤さんと当たるとしたら決勝?」
──決勝戦になりますね。
土肥孝司選手
「準決勝は誰と当たる可能性があるんですか?」
──征矢選手と熊ゴロー選手の勝者ですね。
土肥孝司選手
「ああ、それはやりやすそうですね、どっちが上がってきても(笑)」
──熊ゴロー選手が勝ち上がってきたら土肥熊対決ですよ。
土肥孝司選手
「それはべつに望んでないです(笑)。近藤さんとはたぶんシングルマッチをやったことがないんですよ。あと稲葉ともやりたいですね。まあ、グランプリですから、全員気になりますよね」
──ただ、今回の優勝者は9月2日の横浜文化体育館大会で芦野選手のW-1王座に挑戦するわけじゃないですか? やっぱりお隣の川崎出身の土肥選手にしてみれば地元みたいなものですし、是が非でもメインのリングに立ちたいっていう気持ちは強いんじゃないですか?
土肥孝司選手
「だって、8人の中で神奈川県出身は俺だけですからね。だから、この間のタイトルマッチは負けてしまったんですけど、このグランプリからもう一度必ず這い上がって、地元の神奈川県の横浜文体のメインに立てるようにがんばるんで、応援よろしくお願いします」
「去年から止まっている時計の針を動かす!」GP3連覇と昨年の文体の雪辱へ!Z『WRESTLE-1 GP 2017』出場者インタビュー⑤──征矢学
昨年の『W-1 GP』で2連覇を果たしながら、その後の負傷のため、年間最大のビッグマッチである横浜文化体育館大会を欠場せざるを得なくなった征矢学。3連覇という偉業がかかっている今回のグランプリと、そして捲土重来を期す横浜文体のメイン。ワイルド男は今、どのような心境でいるのか? 話を聞いてみた。
──3連覇のかかった『W-1 GP』の日が迫ってまいりました。現在はどのような心境ですか?
征矢学選手
「そうなんですよね。3連覇なんですよね。ただ、結局去年はトーナメントで優勝して横浜文体のメインでの挑戦が決まった矢先にケガをしてしまったということで、私の中ではあそこから下降気味というか、ベルトに挑戦しても奪還できずという状況が続いているんですよ。おそらくあそこから運気も下がってきているんですよね」
──去年の夏からいいことがないですか。
征矢学選手
「だから、皆さんは時代は動いていると思っているかもしれないですけど、私の中では止まっているんですよ。あの夏から止まってます。1分も動いてないです。皆さんがその間に何回呼吸したか知らないですけど、私の中の時間は1分も動いてません」
──そうなんですか? 最近ははぐれ連合軍を結成したりいろいろありましたけどね。
征矢学選手
「いや、1分も動いてないですよ。皆さんは何日間も朝昼晩寝て起きてっていう活動を繰り返しているかもしれません。でも、私の中では1分、いや1秒も動いてないんです。昨年の文体はW-1の年間最大のビッグイベントという扱いで、これから盛り上げていこうという矢先にケガをしてしまい、ベルトに挑戦することすらできなかった。だから、今回はトーナメントの3連覇を目指すというよりは、ここであえて自分の1年を重く受け入れるという意味で、どうしても勝たないといけないんですよ。去年から止まっている時計の針を動かすためにね」
──2連覇という絶頂から地獄に突き落とされたような感じだったんですか?
征矢学選手
「地獄というより死んだんでしょうね」
──死にましたか。
征矢学選手
「殺されたっていう感じですよ。だから、まずは生き返るために今回のトーナメントで優勝して、文体のメインで挑戦するまで這い上がらないといけない。険しく長い道のりですよ。ただ、これだけは言える。私は悔しい思いもしているし、優勝もしているので、このグランプリには誰よりも思い入れがある」
──このグランプリに懸ける気持ちは誰にも負けないと。
征矢学選手
「はい。現在のチャンピオンが先輩だろうが後輩だろうがもう関係ない。負けた俺が弱かっただけ。そいつに勝たなきゃいけないんですよ。だから今回のトーナメントでも先輩のくせに正々堂々とやらないで、反則ばっかりしやがってなんて言われるかもしれない。そんなことまでして勝ちたいのかと言われるかもしれない。ただ、それぐらいの気持ちで挑戦していかないと意味がないんですよ!」
──征矢選手にしてみれば、どんな手を使ってでも勝ち上がっていかないと意味がないということなんですね。
征矢学選手
「私は一度ビッグチャンスを逃していますから。そういう気持ちです」
──なるほど。そして、1回戦の相手は元チームメイトの熊ゴロー選手になりました。
征矢学選手
「結局プロレスラーというものは個ですから。己の個をどうやって作り上げていくのか? 同じチームにいたとしても、結局は同じ腹から出てきた人間じゃないわけですよ。私と熊ゴローの親は違うじゃないですか?」
──そりゃそうですよ(笑)。
征矢学選手
「だから、自分は自分だし、客観的には元チームメイトの熊ゴローとの対決っていうふうに見られるかもしれないですけど、私はあまり意識していないです。熊ゴローはワイルドを離れたくて離れたわけですからね。でも、一度離れた人間は二度とワイルドを名乗れないですから」
──あ、もうワイルドは名乗ってはダメだと。
征矢学選手
「ダメです。そんなことが許されたらこの世の中で犯罪が多くなりますよ」
──どういうことですか?(笑)。
征矢学選手
「たとえば人を殺しちゃいました。じゃあ、また人を殺していいんですかっていう話ですよ」
──ダメに決まってますけど、犯罪を起こした人は刑務所などに入って更生して、人生をやり直すじゃないですか。熊ゴロー選手にそういう機会は与えられないっていうことですか?
征矢学選手
「いや、やり直しなんておかしいですよ。あいつにはもうワイルドはないから」
──では、ただの対戦相手の1人に過ぎないと。
征矢学選手
「そうです。まあ、私自身にもまだ自分の中のワイルドという信念がわからない部分もあるんですよ。完璧に自分がワイルドだとは思ってないです。ワイルドを追求するためにこの先のプロレス人生を突き進んでいきたいと思っているんで、もう死んだ人間のことはいいです」
──死んじゃいないですけどね(笑)。でも、熊ゴロー選手はタッグチャンピオンになったり、UWAの世界6人タッグ選手権でも征矢選手からフォールを奪ったりしているじゃないですか? 1プレイヤーとしてその実力はどう評価しますか?
征矢学選手
「それはタッグですからね。これが個という闘いになると責任逃れはできないんですよ。自分の失敗はそのまま自分に降りかかるし、自分を信じて闘うという意味ではシングルはタッグとはまったく違います」
──では、タッグベルトを取ろうが、そんな実績は今回のトーナメントでは関係ないということですね。
征矢学選手
「ゼロとは言わないですけどね。まあ、一緒にやっていた時よりは可能性的なものは増えているんじゃないですか? ただ、私は熊ゴローではないからわかりませんね」
──本人は自信たっぷりでしたけどね。準決勝の相手はイケメン選手か土肥選手の勝者になるんですけど、どちらが来ると思いますか?
征矢学選手
「こればっかりはわからないですよね。イケメンは近藤さんに弟子入りして、その成果をどれだけ出せるかわからないし、土肥ちゃんもトータル的にはイケメンに勝っているけど、このW-1に来てからの対戦成績はイーブンらしいですから。まあ、ここはライバル関係があるし、元々WNC、SMASHからの来た2人ですよね」
──さらに遡って、ハッスルで練習生をやっていた時代からの付き合いらしいです。
征矢学選手
「なるほどね。SMASHにいたとなると、大森(隆男)さんが金沢の旅館から復帰したぐらい時期になりますね」
──ああ、大森選手が本格復帰したのはSMASHのリングでしたね。
征矢学選手
「野上(AKIRA)さんが大森さんに『1秒先には宝物が待ってる』っていうマイクをしてましたよ」
──よくそんなことを憶えてますね(笑)。
征矢学選手
「憶えてますよ、私は。だから、イケメンと土肥ちゃんはデビューが同じぐらいなんですよね。まあ、どっちが上がってくるかわからないです。様子を見るしかないですね」
──大森さんの話は見事に関係なかったですね(笑)。では、決勝戦で対戦したい選手はいますか?
征矢学選手
「個人的には稲葉です。私が昨年トーナメントで優勝しながらもケガで文体を欠場してしまい、プレッシャーの中であの大舞台に立って、試合以外でもずっと緊張している稲葉がいたんでね。本当は稲葉がベルトを巻いている時に挑戦したかったという気持ちもあったんですけど」
──それは稲葉選手も言ってました。だから、『今回優勝してベルトを取ったら、征矢さんとタイトルマッチをやって、去年の文体を僕の中で終わらせる』って。
征矢学選手
「稲葉も稲葉であの時から1秒も動いてないんでしょうね。ということは、あいつは今でも緊張しているっていうことですかね?」
──それはないと思います(笑)。
征矢学選手
「でも、稲葉はNEW ERAのリーダーとか、好き好んでやっているんでしょうけど、本来持っているものを100%出せてないですよね。若い奴らがベルトを取ってW-1を盛り上げたいという気持ちはなんとなくわかるんですけど、それが稲葉に合っているのかって言ったら疑問ですね」
──リーダーとかやるタイプではないと。
征矢学選手
「100%の稲葉ではないですね。お笑い芸人でアキラ100%っているじゃないですか? 要するにイナバ100%じゃないんですよ。これは私の勝手な意見になりますけど100%じゃない。42%ですよ。58%が活かされてないんですよ。人間って本来潜在能力を100%引き出すことはできないんですよ。だいたい25%、マックスで30%ぐらいと言われています」
──じゃあ、42%も引き出されている稲葉選手は凄いじゃないですか(笑)。
征矢学選手
「(聞かずに)今の稲葉はイナバ100%じゃない。フルチンになって金のお盆みたいなのをつけてプロレスをやってもらいたい」
──本人がやりたくても会社がストップしますよ(笑)。
征矢学選手
「いや、100%の状況になるためにフルチンになって、稲葉ジュニアが出ないように隠しつつ試合をしてもらいたい。そうしたら、あいつは絶対に決勝戦まで上がってくる」
──要するに今の稲葉選手は自分をさらけ出してないっていうことですか?
征矢学選手
「そういうことです。なんなら反体制派に入るかと言いたい」
──そこではぐれ連合軍に誘うんですか(笑)。でも、勝てば文体で芦野選手に挑戦できますし、5月の後楽園大会でのタイトルマッチで負けているわけですから、先程のお話の通り、勝ち上がってリベンジを果たしたいですよね。
征矢学選手
「それはもちろんですよね。何しろ、前回の文体はリングにも上がれなかった2人ですからね。私は会場の入口でひたすらサイン会をやっていたし、今のチャンピオンもおそらく2階の端のほうの席に座って見ていたのを私はなんとなくわかっています。だから、形は違いますけど、私と同じ気持ちなのかなと勝手に察してます。ただ、あいつは現在チャンピオンですから。心のゆとり的なものはあるかもしれない。ただ、私自身は横浜文体よりも、まずこのトーナメントで優勝するという目先のことに集中したいと思っています」
──ワンデートーナメントですから、優勝するには1日3試合しなきゃいけないんですけど、それについてはいかがですか?
征矢学選手
「まあ、ダブルヘッダーとかで1日に3試合したことはあるんですけど、同じ興行の中で3試合というのはちょっと違ってくるのかなって思います。ただ、これは試練でしょうね。私が去年ケガして文体を潰してしまったことに対する会社からのお仕置きですよ」
──征矢選手に向けた罰ゲームだということですか(笑)。
征矢学選手
「お仕置きを受けるためにも3試合して優勝しなければいけない。私は甘んじてこのお仕置きを受けますよ。だから、私のお仕置き見たさでもいいです。私のトーナメントに対する気持ちや姿勢を見に、7月12日の後楽園ホールまで来てください。これは義務です。18:00には会場に入れます。よろしくお願いします」
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