ケニー爆勝戴冠! 片翼の天使に轟沈石井もまた勝者。7・2『G1 SPECIAL in USA』本誌の視点。

 新日本プロレス『G1 SPECIAL in USA』が幕を閉じた。
 満員札止め、ケーブルテレビと配信で世界に中継され、大成功の内に終了、菅林会長がリング上から来年の開催を改めて宣言して北米本格進出へ向けた第一歩としては文句のつけようがない興行だったといえよう。

 試合の方は、ロッポンギ・ヴァイスのタッグ解消や、第7試合、バレットクラブ対ケイオスでの、Codyの不人気とブーイングを逆手にとって客席とのやり取りで会場を沸かせるアメリカンスタイルなど新しい動きがあって飽きさせない展開。

 とはいえ、自身で語っていたようにこの『G1 SPECIAL in USA』はケニー・オメガショー。
 順調にジェイ・リーサルを下したケニーが決勝でも30分を超える熱闘の末に石井を振り切り、初代IWGP USヘビー級王者に輝いた。
 試合後、ベルトを手にしたケニーに近付いたCodyが奪い取って「すわ、抗争開始か! 」と思わせてベルトを巻いたのが最大のサプライズといってよい幕切れではあった。

 だが、本誌で常にいっているように、プロレスでみるべきなのは敗者。この試合での石井は、来年以後の新日北米侵攻の成否を背負っていたと断言する。
 石井はなにと闘ったのか。

 ケニーがIWGP USヘビーのベルトを「クソだ」とこき下ろしていたのをみても解るが、来年以後の新日本プロレスUSAを進めるにあたって、表に出てこない紆余曲折があったろうことは想像に難くない。
 待遇面は勿論、タイトルの取り扱いなどについてすんなりとはいかなかったのだろう、1・4ドーム後にはケニーのWWE転出も噂された。

ケニー・オメガインタビュー
http://njpwworld.com/p/o_original_0008_265

 最終的にはエース=ケニーの腰に新設ベルトを巻くことで折り合ったのだろうが、恐らく一連の交渉で譲歩したのは新日本サイドだろう。
 木谷オーナーがエースは外人と断言しているように、日本発で送り込めない以上、当面王者はケニー・オメガ以外の選択肢はないからだ。
 
 だがケニーに全権委任をする事への一抹の不安がないといえば嘘になるだろう。なにしろ身内の中邑でさえ引き抜かれている。軌道に乗り始めたところでゴソッとWWEへ移動されたら北米進出など吹っ飛ぶ。だからこそ、決勝のケニーの相手は石井でなければならなかった。
 
「新日本プロレスの『超・過激』とはリング外を差す」
は、故I.Y編集長の箴言であるが、それは1つには道場のハードな練習のことである。

 アマ10冠でそれなりにトレーニングに対して自身を持っていた岡が、「この世にこんなにキツい練習があったのか」と根をあげたのが新日本プロレスの練習。
 石井はヤングライオン出身ではないが、長州門下で当然、勝るとも劣らないシゴキに耐えてきたのは間違いない。
 その石井が身体を張って成し遂げる必要があったこと、それは前日のオカダ対Codyを凌駕する決勝戦を行うことだった。

 前日、ブーイングを受けながらのCodyの試合は結局、アメリカのコアなファンの眼にはあまり魅力的には映らなかった。だからこの日もCodyはブーイングを受けて登場したし、それは棚橋と闘ったビリー・ガンにもいえる。
 当初懸念された通り53歳とイのンターコンチ戦は、棚橋に2重履きのパンツを脱がされ、逆に棚橋のお尻を丸出しにした爆笑シーンが唯一の見どころだった。
 
 元WWEの2人を相手には、オカダ、棚橋といえど、バレットクラブに熱狂するハードなファンを満足させる5つ星以上の試合はできないぞ。寝るのにいいわけがましく脇腹に絆創膏なんか貼って出てくるROHのトップのジェイ・リーサルも同じ。それに引き替え鍛え抜かれた新日のレスラーの、お前を引き出す能力をみろ!

 石井が試合を通してケニーに身を持って伝えるべきメッセージはそれだった。  
 試合中、「ニュージャパン」コールと「レッゴーケニー・イ・シ・イ」コールが沸き上がった。
 バレットクラブのTシャツを着たファンが、自然に発した声援である。
 
 ケニーが戴冠することは会場に来る様な熱心なアメリカのプロレスファンならほとんどが知っている。
 だが解りきった結末であっても心動かす闘いだったからこその「ニュージャパン」「レッツゴーイシイ」コールであるところに、一段高い価値がある。
 
 その声を聴いた瞬間、石井も、管林会長以下新日本の全員も「勝った」と思った筈だ。  
 リストロック式の片翼の天使でリングに叩き付けられた瞬間、石井の内面には、どでかいことをやり遂げた充足感が拡がっていただろう。

 バレットクラブのファンに認めさせ、ケニーの腰にCodyにベルトを巻かせ、新日本プロレスはケニーと、北米のファンとの闘いに勝利した。来年以後、紆余曲折はあるだろうが、ひとまずケニーがWWEに転出することはない筈だ。自身の理想のプロレスをする最適のパートナーが新日本プロレスであることを身を持って知らされたからだ。

 3カウントを勝ち取ったのはメニー・オメガである。だが肩を付けた石井もまた、勝者なのである。
 「底が丸見えの底なし沼」。だからプロレスは奥深く、面白い。
 『G1 SPECIAL in USA』とはそういう大会であった。  


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・G1 SPECIAL in USA:先行預言通り、内藤が石井にjob(お仕事)、優勝はケニー


■ G1 SPECIAL in USA
日時:7月2日(日) 15:30開場 17:00開始 (現地時間)
会場:アメリカ・ロングビーチ コンベンション アンド エンターテイメント センター
2305人(札止め)

<第1試合 20分1本勝負>
獣神サンダー・ライガー 〇デビット・フィンレー KUSHIDA 
8分52秒  マフラーホールド
田中翔 小松洋平 ●ヨシタツ

<第2試合 無制限1本勝負 初代IWGP USヘビー級王座決定トーナメント準決勝戦>
●ジェイ・リーサル
 12分56秒  片翼の天使⇒片エビ固め
〇ケニー・オメガ

<第3試合 無制限1本勝負 初代IWGP USヘビー級王座決定トーナメント準決勝戦>
〇石井智宏
 11分42秒  垂直落下式ブレーンバスター⇒エビ固め
●ザック・セイバーJr

<第4試合 30分1本勝負>
高橋ヒロム ●BUSHI “キング・オブ・ダークネス”EVIL SANADA 内藤哲也
 12分28秒  シェルショック⇒片エビ固め
ティタン ドラゴン・リー ボラドール・ジュニア 〇ジェイ・ホワイト ジュース・ロビンソン

<第5試合 30分1本勝負>
ハンソン ●レイモンド・ロウ マイケル・エルガン
 11分17秒  ライト・オブ・パッセージ⇒体固め
タンガ・ロア タマ・トンガ 〇ハングマン・ペイジ

<第6試合 60分1本勝負 IWGPジュニアタッグ選手権試合>
[第52代王者組]
〇ニック・ジャクソン マット・ジャクソン
 22分41秒  シャープシューター
バレッタ ●ロッキー・ロメロ
[挑戦者組]
※初防衛に成功

<第7試合 30分1本勝負>
●ウィル・オスプレイ マーク・ブリスコ ジェイ・ブリスコ オカダ・カズチカ
 10分00秒  クロスローズ⇒片エビ固め
マーティ・スカル 高橋裕二郎 バッドラック・ファレ 〇Cody

<第8試合 60分1本勝負 IWGPインターコンチネンタル選手権試合>
[第16代王者]
〇棚橋弘至
14分25秒  ハイフライフロー⇒片エビ固め
●ビリー・ガン
[挑戦者]
※初防衛に成功

<第9試合 無制限1本勝負 初代IWGP USヘビー級王座決定トーナメント決勝戦>
〇ケニー・オメガ
 31分20秒  片翼の天使⇒片エビ固め
●石井智宏
※ケニー・オメガが初代IWGP USヘビー級王者となる。


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