ノア杉浦貴が「総合はもういいんじゃないか」 戦極~第五陣メインのお仕事

 国立代々木競技場第一体育館は圧倒的にプロレスファンが多かった。そしてノアの杉浦貴は、十分に期待に応えてくれた。
 戦極~第五陣~のメインイベントを任されたのは、柔術世界王者とはいえ、総合デビュー戦でしかないシャンジ・ヒベイロと、プロレスラーの杉浦貴だった。総合マニアは、一人で家でPPV観戦した者が圧倒的だったのではなかろうか。しかし、日曜昼3時からの都心の会場に集まったのは、友人やボーイフレンドに連れられてやってきた一見さんのほうが多かったかも知れない。
 声援は圧倒的に杉浦が受けていた。なにしろ休憩時間明けには、キング・オブ・戦極のジョシュ・バーネットが挨拶。そのジョシュに、ノア同僚の高山善廣、元リングスの滑川康仁がセコンドにつくとなれば、もうそれだけで絵になってしまう。会場はプロレスモードに豹変、ヤジの内容も「投げてくれ!」「オリンピック予選スラムだ」と、受け狙いのものも含めて会場を沸かせていたのだから、プロレスラーのオーラには脱帽するしかない。
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ジョシュは11月参戦をアピール(左) 武家屋敷の門からヒベイロが登場した舞台演出(中) 事前の煽りビデオではセコンドは「三沢さん、小橋さん」と発言していた杉浦だが、ジョシュ、高山、滑川が並んだ!(右)
 
 試合は3R4分18秒、意外にもヒベイロのヒザ蹴りなど打撃ラッシュが杉浦の顔面を切り裂き、レフェリーが試合を止めた。しかし、総合マニアは1Rもつのか、2Rかとか予想していたのだから、ヒベイロ売り出しのあて馬役を急遽一か月前に振られたにしては、大箱のお客さんを大いに喜ばせたのではなかろうか。また、会場が選手に感情移入して”杉浦コール”をさせたのだから、他の格闘家とは存在感が違っていた。きっちりとメインイベントのお仕事は果たしのだ。
 ヒベイロのタックルは、ちゃんとがぶって見きっていた。試合後のインタビューで杉浦も語っていたように、課題は1に、グランドに持ち込まれないこと、2に、仮に持ち込まれても立つことで、それは出来ていたのだから立派である。なにしろ、グラウンドで上になられても、「ヒベイロに緊張している印象があった。ゼイゼイ言っていた。相手がバテているのがわかった」と、冷静に試合を運んでいたのだ。そして作戦は、3Rに打撃で勝負をかけることだったのだが、本人もスタミナをロスしてしまい、「体が動かなかった」という。
 
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柔術家のハイキックやパンチが杉浦を襲う! 杉浦のパンチも当たってはいたが・・・
フィニッシュのひざ蹴りが命中した瞬間(右下)
08.9.28s4.jpg 左目上のカットであるが、内側を2針、外側を8針縫ったという。また、「DDTだ!」とか、観客のヤジもちゃんと聴こえていたそうだ。ただし、「プロレスチックにはしたくなかった」と振り返る。
 むしろ熱くなっていたのはセコンドの滑川で、3R前の指示では、「家族を背負っているんだろう、行くしかない!」と、「やたら興奮していた」と試合を総括した。
 総合への挑戦に関しては、「もういいんじゃないか!」と撤退宣言が飛び出した。「楽しいですよね。アマレス時代を思い出す」と。しかし、「楽しみは一回だけでいいんじゃないか」と、食い下がる記者の質問にもそっけない。
 杉浦の紹介には、GHCジュニア・ヘビー級王者の戦歴が紹介されていた。別の記者が全日本プロレスの横浜大会で「丸藤正道が世界ジュニアヘビー級のベルトを奪取した」ことを伝えても、「丸藤とはタッグを組んでますから」と、意に返さなかった元自衛官。インタビュー・ルームをあとにするときには、びっこを引いていたのが激闘を物語っていた。