ハッスルにも経費削減の荒波が!

 ハッスルはこれまでナンバーシリーズとハウスシリーズに分けていた大会名を、7月より「ハッスル・ツアー」に統一しリニューアルする。しかしすでに5月24日に行われた「ハッスル・エイド」が、ハッスルにとって大きな分岐点となっていた。
 エイドでは高田総統に限らず、誰もが認めるハッスル最大の功労者である、インリン様の引退試合が行われた。ハッスルが既存のプロレスと一線を画し、ファイティングオペラとして世間一般にも届いたのは、グラビアアイドルのインリンが、小川直也や川田利明、天龍源一郎といった第一線のプロレスラー顔負けの活躍を見せたからだ。そのインリン様の引退となれば、ハッスルにとっては史上最大のビッグイベント。
 できることなら1年かけて「インリン様引退ツアー」として全国を回り、ど派手のセットやステージを組んで、これでもかというほど盛大な演出で送り出すべきだろう。ところが、実際にはステージや花道も組まれず、比較的ひっそりと終わってしまった。
 さらにこの大会をもって、ハッスル旗揚げメンバーだった故橋本真也さんの意志を継いでハッスルに協力してきた、ファースト・オン・ステージとの契約も満了。バルセロナ五輪で体操銀メダルに輝いた池谷幸雄(池谷銀牙)も、銀牙軍団を勢力拡大してハッスルに乗り込むことを宣言しておきながら、突然銀牙軍団の解散を宣言。
 2007年の大晦日には地上波中継も実現。しかもテレビ東京としては、大健闘の視聴率を獲得し、一見順風満帆と思えたハッスルも、実際の台所事情はかなり厳しかったようで、ここにきて大幅な経費削減が断行されたようだ。
 旧ドリームステージエンターテインメントのすぐ近く、青山の一等地にあったオフィスも、主要取引先であるエンターブレイン内に移転。そして大幅なリストラ後、事実上リニューアル第1弾となったのが6月18日の後楽園ホール大会だ。
 
 この大会の第1試合では坂田亘&TAJIRIvsKUSHIDA&\(^o^)/チエ&長尾銀牙という、ベテランvs若手の試合が組まれたのだが、試合序盤TAJIRIはいままでのハッスルではあまり見せなかった「プロレスの基本中の基本」である腕の取り合いを長い時間繰り返した。試合全体もオーソドックスなプロレスだった。これはいままで頑なに既存のプロレスとは一線を画していたハッスルが、1プロレス団体になった証である。
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 かつて故冬木弘道さんがCS放送ディレクTVと契約し、高額な制作費の提供を受けたことにより、デスマッチが売りのインディー団体だったFMWを、日本初のエンターテインメント・プロレス団体へとシフトチェンジさせていったことがあった。
 しかしディレクTVがスカイパーフェクTVに統合され、FMWに支払われる放送権料が大幅に減額されたことで、冬木さんのエンタメ路線は頓挫。やはりエンタメ路線はWWEのように、莫大な金をかけ、ど派手にやらないとつまらないということがよく分かった出来事だった。
 そう考えると、ハッスルも経費が大幅に削減されたことで、いままでのように芸能人をたくさん使ったり、ど派手なセットや演出で盛り上げるということが出来なくしまったというわけだ。そこでハッスルがシフトチェンジした方向が、プロレスに寄ることだったのだ。
 最近ではドラディションの吉江豊、全日本プロレスの荒谷望誉、大阪プロレスのゼウスといったプロレスラーがレギュラー参戦し、18日の後楽園大会にはニセHGとしてIWAジャパンの松田慶三が参戦している。
 
 これまでレギュラーだった崔領二らは、ほかの他団体選手と同じワンマッチ契約で、今後も参戦する可能性はある。もはやハッスルのお家芸だった芸能人ハッスラーは、レイザーラモンの2人だけである(18日はRGのみ試合出場。HGはVTR出演のみ)。
 高田総統は「ハッスルGP」に関して「まだ3地区で予選の真っ最中」と言っていたが、その言葉の通り、インディー団体のレスラーや、ハッスルを使って売り出そうと思っているまだ売れていないアイドルなどが、現在ハッスルのオーディションを受けている真っ最中だという。
 インディー団体のレスラーにとって、ハッスルはメジャー団体。しかも新日本プロレスやNOAHに上がるよりも遙かに敷居が低い。ここで名をあげておくのは悪い話ではないだろう。ハッスルとしても安いお金で即戦力が使えるのだから悪い話ではないだろうし、安生やTAJIRIならば、インディーレスラーだろうが、グラビアアイドルだろうが、お客さんに見せられるレベルまでのものには仕上げてくるだろう。
 ハッスルがプロレスに寄ったことで、プロレス界全体が少しは潤うことになるのか、それともせっかく世間一般にも届く唯一のプロレス団体だったハッスルが、大幅に後退したのかはまだ分からないが、しばらくリニューアルしたハッスルを見守ることとしよう。