直前に切り替えられたレッスルマニアのシナリオ

(c) WWE

■ WWE レッスルマニア 24
日時:3月30日
会場:米フロリダ州オーランド シトラス・ボウル

 大成功を収めた今年の『レッスルマニア 24』だが、メインカードのひとつが直前でシナリオ変更があった。
 その切り替えたカードは
<WWEヘビー級王者タイトルマッチ 3WAY> 
○ランディ・オートン vs. トリプルH● vs. ジョン・シナ●
(トリプルHのぺディグリーでダウンしたシナをオートンが横取りしてフォール勝ち)
だ。
 『レッスルマニア』という大会はWWEの年間最大興行であると同時に、1年間のWWEのストーリー、大河ドラマの最終回という意味をもっている。
 つまり『レッスルマニア』のメイン級のカードはベビーフェイスが勝利し、ファンは溜飲を下げ、大満足させるのが基本路線である。
 実際に『レッスルマニア』のレコードを見ればほとんどが観客が望む試合結果なのが分かる。

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 その基本路線で行けば現在ヒールであるランディ・オートンの防衛は考えられず、実際に当初の予定ではトリプルHが戴冠だった。ただ今後のスターであるオートンがシングルマッチでベテランのトリプルHに一本負けさせられないのでトリプルスレッド・マッチにして、シングルマッチならまだわからないと含みを持たせる。つまり観客も満足し、選手の価値も落とさない、計算されたマッチメイクだった。

 しかし、近年のビンス・マクマホンとステファニーはシナリオが事前に漏れることを嫌がっており、秘密保持の徹底や直前になってシナリオを入れ替えるという事をやっている。
 近い例では『サマースラム 2007』。当初、ここでランディ・オートンがジョン・シナから王者を奪還する予定だったのが、ビンスが直前にシナリオを書き直させてシナの防衛に変わった。
 シナが女・子供のファンに絶対的な人気を確立し、もう王者という付加価値無しでやっていけるようになったことと、映画出演のためツアーから離れるので戴冠の可能性はなかったが、王座戦線に復帰してきたオートン再プッシュのために提案された三つ巴シナリオだった。
 ところが、北米のメディアに完全にばれていると判断され急遽変更したのだそうだ。

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すっかり王者の風格と威厳を身につけたランディ・オートン 写真は武道館大会より

 考えてみてほしい。『レッスルマニア 24』の他のメインカードが、ゲストであるフロイド・メイウェザーのKO勝利、リック・フレアーの引退、アンダーテイカーの連勝記録になることは端から確定していた。このためWWEヘビー級王者タイトルマッチが祭典には珍しくヒール王者の防衛という形に変更されたのだった。

 団体の大本営発表をそのまま流すだけの日本と違い、米国の活字メディアは事実の検証もしてしまう。北米ならではのこぼれ話であろう。