パンクラス集客苦戦のなかでの光明とは?

26日、東京・後楽園ホールにてパンクラス「SHINING TOUR」3月大会が開催された。
第一試合の時点で会場は3割の入りとかなり寒い状況であり不安を感じさせたが、後半にはなんとか6割は埋まっていた。同規模の大会、DEEPはほぼ満員になるのに比べ客入りは芳しくない。
しかし大会開始時間を守り、試合が開始されるなど進行の良さは他の団体も見習うべき所である。例えば第二試合、鳥生将大vs佐藤豪則は佐藤がルールで認められないニーブレスを着用していたが、即、休場明けに試合順をずらす処置が取られた。もちろん、ルール違反をした佐藤が一番悪いのだが、先日旗揚げされた「DREAM」を筆頭に日本の団体の多くは観客を置き去りにして延々と協議し、会場を冷え込ませる事が多い。こうした中でパンクラスの姿勢は生観戦しているファンに誠実と映る。もっと評価されるべきだろう。
前半が全て判定決着の後、休憩明け、次回、有明大会参戦の和田拓也の挨拶後、近藤と山宮が登場。
山宮に「パンクラスに戻ってこい!」「帰ってこい!」という声援が飛ぶ中、
KEI山宮「近藤さんが僕の挑戦を受けてくれ本当にうれしい。自分なりにハイブリッドしてきたものをぶつけたい。ずっとパンクラスを見てきた人も、離れてしまった人にも見てもらいたいです。当日ご来場ください。」
近藤「特に難しいことは考えていません。一生懸命やるだけです。当日よろしくお願いします。」
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両者、誠実というかプロとして気の利いた事が言えない選手になるが、それが逆にアットホームな雰囲気のパンクラスに合っている様で会場も暖かい拍手が・・・。同じGRABAKAでも菊田や郷野がパンクラスに戻ってきたら憎っくき敵となるだろうが、山宮はパンクラスの身内として歓迎されているので、どちらも勝って欲しいという複雑な心境だろう。
RINGS最後のエースの凋落
一般的な格闘技ファンに、もっとも注目されたのは引退を撤回した金原弘光かもしれない。RINGS最後のエースながら、近年勝ち星がほとんど無い金原。対するは、ついにKOPに輝くも、強豪選手のほとんどが他団体へ移籍しためと陰口を叩かれてしまう竹内。双方、ここで印象に残る勝ち方をして評価を上げたいところである。
しかし、結果、両者あまりに消極的と揶揄される選手だけに見事に不安が的中してしまった。
大カネハラコールの中、試合がはじまったが、もっとも恐れていた展開に。竹内が終始、テイクダウンしてポジションをキープし動かないといういつもの戦法のため、ひたすら同じ様な展開を見せられる事になってしまった。
金原もスタンドに活路を見出そうとするものの、竹内が組み付き、コーナーに押し込み、強引にテイクダウン。そして上をキープし続ける。金原も下からアームロックなど仕掛けるものの、潰されて結果、見せ場の無いまま試合終了となった。
判定は文句無く、竹内だが、プロとしてこれはどうなのだろうか? 初来日でまだ知名度も実績も無い選手がとりあえず勝ち星を挙げて次につなげるために手堅い戦法を使うのは分かるが、一応、王者が対戦相手が誰であろうとひたすら同じ手堅い戦法を繰り返すだけでは責められるべきだろう。
ただ、同じ事が金原にも言える。相手の戦法は分かっていたはずなのにそのまま押さえ込まれてしまうのではベテランの名が泣くだろう。双方、評価の下がった試合であった。
○竹内 出(判定3-0)金原 弘光×
伊藤は首の皮が繋がったのか!?
新境地を求めキックの試合などにでるも、パンクラスでは去年、勝ち星の無い伊藤、対するは修斗ブラジル大会などで勝ち星を重ね総合7戦全勝の触れ込みのノヴァ・ウニオンの刺客ハクラン・ディアス。ノヴァ特有のねちっこい攻めの相手だけに苦戦が予想される。
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伊藤には何とミノワマンがセコンドに。DREAMでは伊藤がコーナーにいた。会場からはミノワマンに声援が飛ぶ。しかし試合は予想通りの展開になった。伊藤は打撃で活路を見出そうとするが、ディアスは典型的なノヴァ・ウニオンの戦術でテイクダウン狙い、組み付いてコーナーに押し込むに終始。
伊藤もいい打撃を当てたり、下からの仕掛け、スイープなどを決めたりするが、決定打に欠ける。
やがてスタミナ切れなのか、伊藤がタックルを潰されてディアスが上になる展開が多くなり両者決め手を欠いて終了。判定はディアス1-0伊藤でドロー。
ディアスは決してレスリングが上手い選手では無かったが、伊藤はテイクダウンをほとんど取れず打撃でも攻めあぐねていたのがまずかった。なんとか連敗は避けたので首の皮一枚繋がったものの決して褒められたものでは無い。対するディアスも、これといった特徴の無い典型的な柔術家なのでこのままでは厳しいだろう。
△伊藤 崇文(ドロー 0-1)ハクラン・ディアス△
プロレス転向の佐藤の夢を打ち砕いた拳
パンクラスMISSIONへ移籍し、プロレスラーデビューも近い、佐藤。DDTの新ブランドへ出場が内定しているらしく、ここは勝利で幸先良いスタートを切りたいところだが、相手が悪すぎた。
なにせ4戦全勝、しかも壮絶なKOを連発してるガジエフ・アワウディンが相手なのである。
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例によってメイド服で入場した佐藤に対し、ガジエフはA・ブッチャーの「吹けよ風、呼べよ嵐」で入場。こいつ、人殺してるんじゃねーか?というハリトーノフやアレキサンダーの雰囲気をかもし出している。
試合はいきなり佐藤がテイクダウン!そしてマウントポジションと予想しない展開に会場爆発!
しかし、その直後、いきなり壊れた人形の様に崩れ落ちる佐藤。ガジエフの下からのパンチで完全に失神したのだった。その後、更に攻撃を加えようとするガジエフをレフリーが静止しKO!
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下になろうと相手を完全に破壊する冷酷な殺人マシーンの前に佐藤のプロレス転向の夢は無残に砕け散ったのか。
完全に失神し担架まで用意される佐藤を尻目に勝ち誇るカジエフ。結果、カジエフの強さ、いや怖さだけが印象に残った試合だった。
×佐藤 光留(1R 1分20秒 KO)ガジエフ・アワウディン○
突如、現れた超新星
フェザー級王座次期挑戦者決定戦として行われたメインイベント。P’sLABのエースとして前田やDJ.taikiらと凌ぎを削る志田に、初来日でDJ.taikiに判定勝ちで日本デビューを飾った総合10戦全勝、修斗ライト級米大陸1位のサンドロ。だが、結果は一方的なものになった。
サンドロは手堅くネチネチした戦法で、強いんだけどつまらない選手の多いノヴァ・ウニオン所属にもかかわらず、DJ.taikiに打撃でも打ち勝っていた珍しいアグレッシブな選手。身体も大きく、体重が同じながら、志田よりも一回り大きい均整の取れた身体をしている。
1Rから強烈な打撃で攻め込み、志田がダウンすればシュートボクセ並のサッカーボールキックをぶち込む。そして猪木-アリ状態で志田を追い詰めるサンドロ。
続く2Rもサンドロの猛攻は止まらない、左右のフックで襲い掛かり、右膝蹴りで志田をダウンさせるとそのまま畳み掛ける猛ラッシュで、レフリーがあわててストップと同時に志田陣営からタオルが舞った。
昔のヴァンダレイ・シウバvs日本人選手のリプレイを見るような猛攻だった。
これで次期挑戦者はサンドロに決定。師匠のペテネイラスに肩車され勝ち誇るサンドロに、失神している志田と佐藤vsガジエフと同じコントラストだった。
またしてもパンクラスにやばい外敵が登場したと同時に「前田もやばい」と誰もが思った事だろう。
×志田 幹(2R 4分19秒 KO)マルロン・サンドロ○
パンクラスである程度、話題を呼ぶと次々に他団体に引き抜かれる選手が多く、パンクラスファンにとっては苦々しい状況が続いてる昨今だが、ウマハノフ、アルボーシャス・タイガーに続き、今大会でもガジエフ・アワウディン、マルロン・サンドロと金を取れるファイターが新たに生まれた。
同規模の大会である修斗やDEEPでは金を取れる海外選手があまり出てこない反面、パンクラスは次々と新鋭が出てくるのが強みではあるが、反面、日本選手の情けなさが目立ってしまっているのも事実。佐藤にしても今日の内容では『プロレスに逃げる』と捉えられても仕方ない試合だった。
次回、4・27有明大会で、もはやパンクラスの一枚看板となっている近藤有己の活躍に期待したい。
DREAM始動とUFC、パンクラス訴訟の全容