第31回プロレス文化研究会潜入記 芸能としてのプロレス~「KING of SPORT」と「ハッスル」

 プロレスの凋落が言われ始めて久しい。
 その分岐点は新日本プロレスのグッズの好売り上げを誇った人気レスラー武藤、小島、カシンの全日本プロレスへの転出劇、そして桜庭和志のPRIDEでの快進撃、さらに「プロレスは全試合勝ち負けが決まっている」という文から始まる、元新日本プロレス・レフェリーのペンによる『流血の魔術 最強の演技』が2001年末に出版された時期と重なる、というのが一般的な見方である。
 専門誌紙の売り上げがほぼ同時に下降してしまいいまだ厳しい冬の時代を迎えているが、Ⅰ編集長こと井上義啓先生の意思を継ぐ者は、栄えあるプロレス黄金時代を新たに迎える為に厳しくも暖かい想いを活字に込めて執筆活動を続けている。決して活字プロレスの終焉には向かわせてはならない。それは事実上、業界の死の宣告をも意味するのではないだろうか。
 そんな折、3月22日に第31回プロレス文化研究会が京都のジャズ喫茶で開かれた。テーマは「芸能としてのプロレス」である。
 キング・オブ・スポーツのフレーズで真剣勝負幻想を散りばめていた新日本プロレスは、1993年以降のシュート格闘技の台頭によりリアリティも保てなくなり、求心力を失ってしまった。そして21世紀には、いまや魅惑のインリン様がどんなコスチュームで登場するかが楽しみのひとつでもある、究極のエンターテイメントプロレス団体ハッスルが出現している。昨年の大晦日には、紅白歌合戦や格闘技番組の裏側で、テレビ東京系列が『ハッスル祭り』を中継していた。
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テレビ東京のハッスル紹介スポーツ番組より
 「週刊プロレス」の読者アンケートにおいてハッスルは、まだまだ賛否両論があるようだが、研究会では「芸能としてのプロレス」という観点から、現在のプロレスの置かれた状況を考察する内容であった。
 ストロング・スタイルもハッスルも、単純に言えば互いの団体は勝負的味付けを施しているかどうかの違いに過ぎない。話はそれるがUWFにおいては、さらにリアルな格闘技的味付けを施したと言えるのであろう。
 今回は相原進先生を講師として議題が進められた。氏はチンドン屋研究の第一人者とのことだ。
 「芸能としてのプロレス」となれば、プロレスが茶番であると言っているかのような印象を与えかねないことから、反感を抱くプロレスファンもいるだろう、というような考察から始まり、しかし、そもそも芸能とは何なのか、あるいは四方から演者は観られるユニークなスポーツ芸能であるプロレスとは何なのだろうといった分析に移っていく。
 報告にはビデオ上映も含まれ、95年10月9日に東京ドームを文字通り埋め尽くした、歴史的一戦である武藤敬司対髙田延彦戦や、高田総統の化身ジ・エスペランサーが紹介されている。研究会主催者・岡村正史先生が、映像を観て武藤の間のすばらしさを再三にわたって触れていたのが印象的であった。
 発表会にはオプションとして、場所を替えての2次会が恒例だ。ここでは特に昭和のプロレス者にとっては至福のひとときであるかも知れない必殺のトークバトルが展開される。
 
 毎度の事ながら、各方面の芸能などに博識のある先生方や筋金入りの業界に精通した皆さんによる勉強になるお話が楽しい。格別に貴重なこぼれ話を、二重三重に味わうことができる贅沢な空間が文化の地、京都で催されるプロレス文化研究会にはあるということだ。
 これは今後もぜひ行くしかないであろう。
                                                レトロ狂時代
プロレス文化研究会は、レトロ愛好家なら全員集合だ!
第30回プロレス文化研究会潜入記 テーマは「アントニオ猪木という現象」