ドリー・ファンク・ジュニアの幻の一戦 劇画タイガーマスク

 三月一日の全日両国大会でドリー・ファンク・ジュニアが引退した。
 引退試合でも渕正信をスピニング・トーホールドで仕留め、貫禄ぶりを見せつけたドリーだが、全盛期の彼の幻の一戦をご存じだろうか。試合相手はタイガーマスク。佐山聡でも三沢光晴でもない。伊達直人のタイガーマスクである。
 
 当時NWA世界王座にあったドリーは、虎の穴を叩き潰し、みなしごたちのための遊園地「みなしごランド」建設に燃えていたタイガーマスクの挑戦を受けた。
 東京都体育館でおこなわれた第一戦は三本勝負でおこなわれた。一本目はドリーがスピニングトーホールドで先取。しかし二本目をタイガーがすぐさまタイガーVで奪い返し、勝負は三本目へともつれこんだ。ドリーをコブラツイストで追いつめるタイガー。
 しかしドリーは沖レフェリーに暴行を働き、反則負けを宣せられる。反則では王座が移動しないことを逆手に取ったドリーの作戦勝ちだ。
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全盛時代のドリー(対鶴田戦) 劇画は日プロ時代の猪木戦がモチーフ
 
 続いて大阪府立体育館での第二戦。誰もがタイガーの勝利を信じたが、試合開始時間になってもタイガーは姿を現さなかった。伊達直人として会場に向かう途中、自動車に撥ねられそうになった子供をかばい、自分が撥ねられたのだ。手当の甲斐もなく伊達直人は死亡し、試合はドリーの棄権勝ちとなった。
 ドリーの引退試合は素晴らしいものであったが、せっかく四代目がいることだし、この幻の一戦を引退試合にしてもよかったのではないかなとも思うのである。
すぎたとおる 山口敏太郎事務所