「焼き鳥がうまかった!」イギリスのレスラーOBの近況

 イギリス在住の冬塚天一郎と申します。欧州マット界の話題を書かせていただきます。

 日本マット界のOB達に同窓会はあるのだろうか?イギリスマット界には存在する。新日参戦、佐山、前田がイギリス修行時代にお世話になったことでも知られる、ウエイン・ブリッジが中心となり、OBレスラー達がまとまっている。特筆すべきは、ウェブサイトもあり、また同窓会がファンにも開かれている点だ。毎年8月第二週の日曜、ロンドン郊外ケントのブリッジのパブで同窓会は行われている。

 ウェブでも公開されており、ファンの参加も自由。数多くのレスラーが、現役、OB問わずに、毎年参加している。ブラックタイガーで知られる”ローラーボール”マーク・ロコ、職人ピート・ロバーツ、ジョニー・セイント、トニー・セント・クレアなども常連である。昨年はROHツアー中であった、コルト・カバーナ、アメリカン・ドラゴンなども参加し、新旧ファンを喜ばせた。(ダグ・ウイリアムス、SUWA、潮崎は交通渋滞により不参加。)セレモニーも行われ、亡くなったレスラーへの追悼、黙祷、不参加レスラーからのメッセージも読まれ、現役レスラーの表彰も行っている。ここ数年はやはりダグ・ウイリアムスの評価が高いようだ。

britishRU.jpg
昨年より(左)アメリカン・ドラゴンら現役組 (右)マーク・ロコと伝説の父親ジム・ハジー

 ブリッジのパブには、レスラーの写真、ポスターが所狭しと飾られており、前田日明の写真や清美川のポスターも見受けられる。ファンとの交流、昔話に花が咲き、ジョニー・キンケードが「星野勘太郎にはよくしてもらった」だの、ピート・ロバーツがスタン・ハンセンの家に行った話、マーティ・ジョーンズの京王プラザホテルでの外人レスラー泥酔事件、先だって亡くなった“流血王”ダニー・リンチが「焼き鳥がうまかった」、などなど、まさに「昭和」プロレスの話が聞けるのがマニアにはたまらないであろう。

 レスラー達は非常に気さくで、イギリスのオタク達(ほとんど40-60代)が「74年のあの試合の・・・」などと質問しても気軽に「あの試合は左足を狙ったが、あいつのディフェンスが巧みで・・・」といった「プロレス談義」があちこちで花を咲かせている。またブリッジのパブは鉄道のレンガの高架橋の下にあり、鉄道マニアも必見の美しい景観である。映画「スターウォーズ」でダースベーダーを演じたデイブ・ブラウズもボディービルの関係から、この同窓会にはほぼ毎年出席している。

 ウエブサイトでは、OBレスラーの近況、亡くなったレスラーへの追悼だけでなく、葬式の日程なども随時アップ(最近ではダニーリンチの葬式日程、婦人のファンへの感謝の言葉など)され、まさにファンにとっても至れり尽くせりである。

大英帝国プロレス同窓会

 ファンも含めて参加者の平均年齢は50-60歳と思われるイギリスの「昭和プロレスの世界」、真夏の一日、イギリス旅行の際は、このタイムトリップした空間に足を向けられてはいかがだろうか。
                               在英 冬塚 天一郎