プロレス美術館館長の『迷走ナビゲーション!?』

K-1ダイナマイトのリングサイド席と後方席(2007・1・5)
 『週刊ファイト』休刊から迎える初めてのお正月。新春合併号がコンビニに並んでいないのが寂しい。また本来であれば、昨年年末には『週刊ファイト』2000号を手にしていたはず。今年も復刊を願い、バックナンバーを読みあさる日々が続く。ボクはその『週刊ファイト』でちょこっとコラムを執筆させていただいておりました“プロレス美術館”湯沢です。ミルホンネットさんの大切なスペースにコラムを書かして頂くことになりました。よろしくお願い致します。
 さて例年ながらの大晦日。プロレスファンの今年の選択肢は格闘技が2興行(『K-1 PREMIUM 2006 Dynamite!!』およびPRIDE男祭り2006-FUMETSU)とプロレスの1興行(インディーサミット、後楽園ホール)から。ボクは京セラドーム大阪の『K-1Dynamite!!』をチョイス。
 そのメーンイベント桜庭和志VS秋山成勲。これほど、真っ二つに寸評が分かれた試合は珍しい。これはあくまでボク個人の見解であるが、アリーナ席後方およびスタンド席の観衆にとっては「不透明決着だ!」とフラストレーションをアラワにした人が多い。その一方でリングサイドから2人の一挙手一党足を凝視した観客は「ストップがあまりにも遅すぎる!」とつぶやいた人が多いような気がする。RS3列目で観戦したあるファンは「あそこでストップしていなければ、桜庭が死んでいたかも?事故が起こってからでは遅い!」と震えていたほど凄惨な試合に見えたらしい。
 だがその同じ試合をリングサイドから200メートルはあろうかというアリーナ席最後列以降の観衆には、試合の展開をハッキリと見て取れていたにもかかわらず、凄惨なシーンには程遠く(?)、「まだ反撃のチャンスは残っていたのではないか」と評価は一変する模様(もちろんこのような観戦位置による区分けは全ての観客には当てはまらないが)。
 ここでこの試合のポイントを敢えて1つ挙げるとすれば、公式発表がレフェリーストップであったこと。実はレフェリーストップとアナウンスされたものの、全くレフェリーは試合をストップするモーションを見せていない。後にわかったことだが、実際は前田日明をはじめとする立会人側がレフェリーの意思とは無関係なところで危険とみなし、ストップをかけたのが真相のようだ。彼らはもちろんリングサイドでファイターの安全を見守る役目も果たす。さまざまな意味で桜庭の限界は明らか。この裁定が遅れ、桜庭に何かあれば、『K-1』のブランドにキズがつく。
 改めてビデオを見直すと、桜庭が試合途中から猛抗議を繰り返していた「秋山の体が滑る」というのも、負け惜しみに聞こえて仕方がないほど実力の差は歴然。このような完全決着が客席後方には“伝わらない”ことを改めて実感したドーム興行でもあった。 
 実際に京セラドームのスタンド席で観戦した人々は正月早々、異口同音に不満を爆発させていた。「1ラウンド終了のゴングだと思ったら、試合が終わっていた。スッキリしない新年だ!近いうちに再戦を望む!」と。だが恐らくこの実力差は永遠に縮まらない。いャ、むしろ広がる一方だろう。桜庭がPRIDEでバンダレイ・シウバに何度も挑んだときのような悪夢はもう御免。それよりも今年の大晦日は2003年大晦日に行なわれた曙vsボブ・サップに匹敵するスーパーマッチの実現を望みたい。