[ファイトクラブ]F**k you, Tanahashi咲く前の悪、一輪だけ見えた華G1大田区連戦考

[週刊ファイト8月6日]期間 [ファイトクラブ]公開中

▼F**k you, Tanahashi咲く前の悪、一輪だけ見えた華G1大田区連戦考
 Photo:HIROKI by スープレックス豪
・土曜:辻陽太●鷹木信悟24分12秒ファイアーブラスターも主役見えず
・長岡でゲイブが押し付けた白い柔道着 ウルフアロン無言で会場を出た
・外国人存在感顕著G1 モロニー●ニューマン14分12秒ドリラキラー
・ハイフライフロー未遂のゲイブ・キッド●ザック・セイバーJr.25分47秒
・柴田勝頼が拾った少年 LA道場から離団、そして戻ってきた男 ゲイブ
・咲く前の悪とは? Strong Styleガチを求めた者たちは何を残したのか
・The Wrestler柴田勝頼の生き様 リングの生還者たちG1 CLIMAX 36
・何をテーマにしたいのか? 入場曲で会場を支配する存在も見えない
・土曜:ジェイク・リー「私の中でのSANADAってあれが完成形じゃない」
・日曜:Yuto-Ice辻へ「俺がIWGP取った方が金なるんじゃないのか?」
※記事別永久保存凝縮PDF各500円販売中

■ 新日本プロレス G1 CLIMAX 36
日時:7月25日(土)・7月26日(日)
会場:EBARA WAVE ARENAおおた(大田区総合体育館)
観衆:土曜2027人 日曜1580人(主催者発表)

土曜:辻陽太●鷹木信悟24分12秒ファイアーブラスターも主役見えず
<第9試合 Aブロック公式リーグ戦 30分1本勝負>
○辻陽太(2勝2敗=4点)
 24分12秒 ファイアーブラスター⇒片エビ固め
●鷹木信悟(1勝3敗=2点)

 「正直に言う。私は、アメリカのプロレスが嫌いだ。」
 前回、WWEのスマックダウン評の際にもそう記した。
 理由は変わっていない。本物の悪がいなくなったと思ったからだ。

 では、日本のプロレス、新日本プロレスには何が残っているのか。

 7月25日、26日の大田区総合体育館。『G1 CLIMAX 36』を二日間通して見続けた。
 結局、私にはこの団体が何をテーマにしたいのか最後まで見えなかった。

 入場曲だけで客席が立ち上がるような選手はいない。
 リングを見渡しても、「この男を中心に回っている」という軸が見えてこない。
 体格の大きな選手は確かに増えた。しかし、その大きさだけでは客席の空気は動かない。
 スピードでも、技でも、表情でも、もう一歩踏み込んでくるものが見えてこない。

 実況席も静かだった。
 試合を伝える以上の存在感はなく、解説が試合をもう一段面白くしてくれる時間も少ない。
 客席を巻き込むコールアンドレスポンスも私には響かなかった。

 話はずれるが、スターダムは選手一人一人が何者なのかを客へ届ける作業がうまい。
 新日本は、その部分が少し不器用に映った。
 だからこそ、外国人選手たちの色が逆に浮かび上がって見えた。

 25日のメインイベント。
 辻陽太と鷹木信悟は24分12秒を戦い抜き、最後はファイアーブラスターで辻が勝利した。

 試合後、辻はこう語っている。
 「若手だけじゃない、現世代のヤツらもベテランたちも最高のパフォーマンスをしている。
 こんなに暑い夏、熱いプロレス団体はほかにない」

 その言葉を否定するつもりはない。実際、この二日間も選手たちは懸命だった。

 ただ、私は「誰の夏なのか」が見えなかった。
 誰を見れば、このG1という大会の物語が分かるのか。
 その答えだけが、最後まで輪郭を持たなかった。

 そんな二日間の中で、私の視線が止まった男が一人だけいる。AEW所属となったゲイブ・キッドだ。
 但し、勘違いしてほしくない。 私は彼を「悪が帰ってきた」と書くつもりはない。そこまではまだ言い切れない。

 彼はまだ、咲く前の悪だ。
 悪の華ではない。

 この男が二日間で何をしたのか。それを書くには、四日前の長岡まで時間を戻す必要がある。

長岡でゲイブが押し付けた白い柔道着 ウルフアロン無言で会場を出た

 7月22日、新潟・アオーレ長岡。
 ゲイブ・キッドとウルフアロンが向かい合った。

 ゲイブは青い柔道着を着て現れ、白い柔道着をウルフへ押し付けた。
 試合中も噛みつき、柔道着で殴打する。
 ウルフは「オレはプロレスラーだよ!」と叫び、裏投げと雪崩式変型ハリケーンドライバーで応戦した。
 それでも最後はO-KNEEからドリル・ア・ホール・パイルドライバー。

 勝ったゲイブは「イッポン!」と叫んだ。
 五輪金メダルへの敬意ではない。嘲笑だった。

 試合後にはこう言い放つ。
 「これこそプロレスの金メダルだ。この業界に15年いる者にとってのな。本物の前では何の価値もない。俺が最強なんだ」

 さらに続ける。
 「エリートアスリートには、底知れぬ絶望から這い上がった経験が欠けている」

 敗れたウルフは無言で会場を後にした。

 三日後の25日、大田区でウルフはこう答えている。
 「この前長岡でゲイブ・キッドに負けたけど、いまこのシリーズ中は反省している時間はないよ」


<第6試合 Bブロック公式リーグ戦 30分1本勝負>
○OSKAR(3勝2敗=6点)
 9分50秒 ナイトメアホールド
●ウルフアロン(2勝2敗=4点)

 その翌日、26日の第6試合。
 ウルフはデスバレードライバーで攻勢に出た。
 だが、OSKARは目を掻いて流れを変える。
 最後はナイトメアホールド。深く極まり、ウルフは意識を失った。
 9分50秒。

 偶然と言えば偶然だ。
 ただ、長岡から大田区まで続いた四日間の流れの中で見ると、この失神は単なる一敗以上の重さを帯びて映った。

 ゲイブ・キッドという男は、勝敗だけで相手を終わらせようとはしない。
 試合の外側まで含めて、自分という存在を残そうとする。
 その姿勢が、少しだけ他の選手とは違って見えた。

 彼がまだ悪の華になり切れていない理由は、また後ほど述べたい。


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