[週刊ファイト5月28日期間] [ファイトクラブ]公開中
▼実話マーク・ケアー必見作『スマッシング・マシーン』 制作・主演Rock様にて実現
Photo:Mile Lano ハピネットファントム・スタジオ公式/他 by タダシ☆タナカ
・ドウェイン・ジョンソン主演ヴェネツィア映画祭15分間standing ovation
・ついに役者としてドウェイン認められ「アカデミー賞間違いなし」と謳われ
・元のジョン・ヘイムス監督が執念でカメラ回したと誤解したソックリ再現
・the smashing machine the life and times of extreme fighter mark kerr
・2002年ドキュメンタリー評後編:当時の裏ネタはファイトクラブ会員のみ
・エミリー・ブラント約16億円の為 ロック様自身取り分回し6.4億円甘受
・RIZIN’25大晦日は負傷欠場ライアン・ベイダー、マーク・コールマン役
・UFC抜き構成 石井和義⇒榊原信行ボブチャンチン戦反則抗議の相手
・25年後本人役バス・ルッテン&実況スティーヴン・クァドロス、布袋寅泰
・初日映画館には安西伸一、1150円パンフ高島学が寄稿 2026年総括
・Dwayne Johnson:Truth is This film has changed my life.
※記事別永久保存凝縮PDF各500円販売中
■ スマッシング・マシーン The Smashing Machine
監督・脚本:ベニー・サフディ
出演:ドウェイン・ジョンソン、エミリー・ブラント、ライアン・ベイダー、バス・ルッテン、オレクサンドル・ウシク/大沢たかお、石井慧、光浦靖子、布袋寅泰 ほか
配給:ハピネットファントム・スタジオ
ドウェイン・ジョンソン主演ヴェネツィア映画祭15分間standing ovation
5月16日より、ようやく字幕版での『スマッシング・マシーン』日本公開である。2002年に米国HBOで制作・放送されたMMA初期のスターであるマーク・ケアー(今回も字幕はPRIDE参戦時のケアー表記だが、現地発音はマーク・カー)の栄光と転落を描いた実録ドキュメンタリーを、そのまま役者が演じるドラマ版にした映画化になる。
舞台となったPRIDEの全盛期、記者はニューヨーク在住になるのだが、かえって日本のビデオは「新日・全日セットのVHS」以下、それこそK-1、PRIDE、パンクラスの格闘技まで毎大会、確実に簡単に入手できていた。それを漏らさず全大会見るだけでなく、その2002年、題名も同じドキュメンタリー版放送の際には、ある種の語り部として、同僚にして当時最も業界で親しく行動を供にしていたエディー・ゴールドマン(現本誌ニューヨーク通信員)が出演していた。重要な進行役というか、MMAとはどういう格闘技で、日本のPRIDEはどういうものかを語る。


▼上映後、長いスタンディング・オベーションにロック様涙ぐむ大成功作品
その繋がりもあって、2002年版は少なくとも3つはアチコチの媒体に映画評や紹介を執筆しているし、今回の2025年版にいたっては、なんといってもロック様ことドウェイン・ジョンソンが自ら制作資金を出して主演したこともあり、週刊ファイトwebに限っても4度は、本誌の西海岸通信員マイク・ラノが逐一報告を送ってくれたので紹介してきた。
そして世界3大映画祭のヴェネツィアでは、15分間もスタンディング・オベーションが鳴り止まなかったと、米国のエンタメ情報番組の老舗『ET』以下、アチコチでも大きく取り上げられたのだ。


ついに役者としてドウェイン認められ「アカデミー賞間違いなし」と謳われ


▼『スマッシング・マシーン』迫真演技ロック様Golden Globeノミネート!
ゴールデン・グローブ賞にノミネートされたところまでは、ヴェネツィア映画祭の15分間スタンディング・オベーションの裏付けもあり、よくある宣伝文句なのかもだが「アカデミー賞間違いなし!」と謳われた事実が記録に残る。まして、いくら「世界で最も稼ぐ俳優」だろうが、アクション俳優というのは演技評価では低く見られる傾向があり、主演男優賞とかには縁が無いものというお約束すらあったのだが、今回のドウェイン・ジョンソンの、マーク・ケアー成り切りぶりと迫真の演技は確かに壮絶であり、「ついに、あのロック様がどこかの主演男優賞を取る」とまで、現地の映画サイトに太鼓判を押されていた。
しかし、結果はご存じの通り、アカデミー賞はノミネートにすら名前が出なかった。エミリー・ブラントも、助演女優賞だと騒がれていたんだが・・・。
まぁ賞のことはどうでもいい。前評判が非常に高かったことは事実である。米国では2025年10月3日に封切られ、一般にも高評価であった。近年は日米同時公開なんて作品も少なくないのだが、よくやく日本でも公開となったのは大変喜ばしい。また、マット界の関係者、選手、ファンにはMMAに興味あるなしに関わらず、ガチの必見作であることは最初に強調させていただく。
元のジョン・ヘイムス監督が執念でカメラ回したと誤解したソックリ再現
2025年の映画版を見て、2002年のドキュメンタリーを見ている者なら、最初の最大の驚きは「全く同じじゃないか」ということ。23年後の再現ドラマなんだから、多少のアレンジは普通というか、大幅に変えてあってもエンタメ映画として一般に観ていただく以上、なんら不思議ではないのに・・・。
ところが2025年版は、当時マーク・ケアーらがしゃべった台詞を極めて正確に役者さんらが再現している。ドキュメンタリーではそれを窓辺に座って語るのが、映画版だと試合再現の場面に重ねてあるのはともかく、ここまで忠実な再現にこだわったことにビックリなのだ。
可能な限り予備知識を入れずに新作を鑑賞する記者のスタンスがあり、てっきり元のジョン・ヘイムス監督が、執念で再びメガホンを取ったと思い込み、家に戻って2002年版のDVDを取り出したら「ありゃ、別の監督なのか」と。なにしろ出てくる選手たちにインタビューしたことある、関係者らを直接知ってるだけでなく、最初のドキュメンタリーが高評価を得た段階で、「ヘイムス監督がドラマ版の脚本も完成させてハリウッドに打診中」のニュースも知っていたからだ。
なにしろ台詞が同じだけではない、映像の構図もまったく同じ位置からカメラを回しているとか、同じ連中がやっているとしか思えなかった。そこまで忠実にこだわった意図はなんなのか? 長編にて徹底分析を試みる以上、まずはドキュメンタリーがどういう内容なのかを解析していくしかない。
the smashing machine the life and times of extreme fighter mark kerr
記者による2002年のドキュメンタリー評は以下になる。
「総合格闘技選手とその業界」の報道映像化を狙うジョン・ヘイムス監督らが完成させた「90年代現象」のひとつ。総合格闘技(英語表記MMA=ミクスド・マーシャルアーツ)の台頭により実現した企画は、とても暗い内容の作品になってしまった。
主役は好青年風のマーク・カー(PRIDEでのカタカナ表記ケアー)。190cm、116kgの均整のとれた肉体の鎧を持つ。肉体標本(the specimen)とのニックネームで呼ばれ、タイタンと紹介されてもいるが、このビデオでは『破壊王=スマッシング・マシーン』というわけだ。
元五輪レスリング代表候補が格闘技業界という怪しげな世界で体験する栄光と挫折の物語は、ひとつのドキュメンタリー作品を成立させるに十分のインパクトがある。“霊長類最強”と書きたてた専門誌紙と裏腹に、実録映像の焦点はヒト科・人類最強の肉体の裏側にあったドラッグ常用癖だ。破壊王伝説はしかし、薬におぼれる日々の始まりでもあったのだ。
ブラジルから来たルタ・リブレの強豪ウゴ・デユアルチを怯えさせてしまったPRIDE.4(98年10月)時点で、マーク・カーの破竹の連勝街道は伝説の粋内に中途していた。映像冒頭はPRIDEの客席を確認して、舞台が日本であることを理解するが、メインで戦っているのは二匹の珍獣ガイジンさんなのであった!
ヒクソン・グレイシーのような伝説の最強格闘家#1ではなく、現役ランクで#1の称号を得ていたエースの自宅の部屋にある膨大な数の注射器の映像だけで、リング上の映像のインパクトを上回ってしまうのがドキュメンタリーの魔力でもある。
のちに妻となるアル中のガールフレンドは、事実上初の敗北試合となる“北の最終兵器”イゴール・ボブチャンチン戦にまでついてきていた。僚友で画面に何度も登場するマーク・コールマンやコーチ役のバス・ルッテンに、「仕事で来ているのにガールフレンド同行は良くない」を語らせてもいる。
HBOのプライムタイム公開ドキュメンタリーに選ばれたプロジェクトである以上、そもそも「総合格闘技」という、まだ十周年を迎えたばかりのジャンルのことを知らない前提で見ても、ショック度と総合評価は審査にパスされて出てきた格好だ。品質保証作はまた、プロレス業界における『レスリング・ウィズ・シャドウズ』『ビヨンド・ザ・マット』と並んで、世間側の見る目の観点の確認を含んで大きな影響を与えた記念碑的映像記録でもあった。