[週刊ファイト3月5日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼安田忠夫さん逝去! ギャンブル依存症に陥った波乱万丈の人生
by 安威川敏樹
・格闘技のみならず、ギャンブル及び借金と共に生きた安田忠夫さん
・怪力無双、ターザン、ダンプ……。ギャンブル依存症に陥った人たち
・大勢のギャンブル依存症を生み出す、日本の詐欺的システム
・国民をギャンブル依存症から守るための、大阪カジノ活用方法
本誌でも既報どおり、安田忠夫さんが亡くなった。享年62歳という若さである。
安田さんは大相撲力士からプロレスラーに転身、さらに総合格闘家としての貌も持ち、引退後は様々な職を転々としたという、まさしく波乱万丈の人生だった。
▼借金王から伝説へ:安田忠夫さん逝く 大晦日の衝撃再び


格闘技のみならず、ギャンブル及び借金と共に生きた安田忠夫さん

安田さんの格闘技人生は大相撲から始まる。孝乃富士の四股名で小結まで登り詰めたが、28歳で大相撲は廃業し、新日本プロレスに入門。195㎝、130㎏という恵まれた体格を活かし、さらには総合格闘技のリングにも上がった。
しかし、2005年には素行不良を理由に新日を解雇。その後はプロレス界に復帰するも、自殺未遂騒動を起こす。そして2011年2月4日、マット界から完全に引退した。
安田さんのもう一つの貌は『借金王』。と言っても、安田さんは怠けて借金をしていたわけではない。引退後も、養豚場などの過酷な仕事を経験し、晩年は約10年間も警備員の仕事を全うしてその生涯を閉じた。
安田さんを借金苦に陥れたのはギャンブルである。今回の死がギャンブルに関わっているのか否かは不明だが、賭博が安田さんの人生を狂わせたのは間違いない。
元々、力士やプロレスラーはギャンブル好きが多い人種だ。相撲取りには社会人を経験せずに角界入りするケースが多く、趣味と言えば結局『飲む打つ買う』になってしまう。ゴルフが好きな力士も多いが、それとて『にぎる(金銭を賭けてプレーすること)』場合も多い。
プロレスラーも同じこと。最近でこそ大卒や社会人経験者のレスラーも多くなったが、元力士が多数プロレス界入りする。また、社会人経験者であっても、オフの日の練習時間は3時間程度なので、他の趣味がないためパチンコ屋に入り浸ってしまうこともあるだろう。
安田さんは力士とプロレスラー、両方経験している。そして、ギャンブル好きは大相撲時代からのことだ。
借金取りが部屋に来る、なんてこともあったという。プロレスラーに転向してからもギャンブル好きは治らず、それが元で家族とは離れ離れとなった。
元プロ野球選手の掛布雅之によると、借金のない選手は一流ではないという。掛布は土地を買ったり事業を興したりして常に借金を背負う形にし、借金返済のためカネを稼がなければならない状況を作っておいて、自分にプレッシャーをかける生き方をしていたそうだ。
つまり、借金すること自体は悪くないのだが、借金の理由がギャンブルだと話が全く変わる。それは単に自己管理ができていないだけだ。いや、実際にはギャンブル依存症という病気である。

怪力無双、ターザン、ダンプ……。ギャンブル依存症に陥った人たち
日本のプロレス界史上で、№1のギャンブラーと言えば、なんと言っても豊登道春だろう。豊登の場合は、賭博にいくらカネを注ぎ込む、ではなくて、あるだけのカネを注ぎ込む、である。
力道山の死後、豊登は日本プロレスのエース兼社長になり、また当時はプロレス人気が高かったので一般人にはとても手の届かないほどのギャラを稼いでいたが、そのカネは全てギャンブルに消えた。
ギャラだけではなく、社長の立場を悪用し会社のカネを横領してギャンブルに使い込み、それが発覚して事実上の社長解任、日プロ追放となった。
その後、アントニオ猪木を誘って東京プロレスを旗揚げするも、ギャンブル癖は治らず、猪木と袂を分かっている。
ターザン山本氏もギャンブル狂。もっとも、ターザン氏の場合はほとんど競馬ばかりだったようだが、有り金すべてで馬券を買うのは豊登と同じだ。
それでも、妻が給料の管理をしてくれていた頃は生活が破綻することはなかったが、離婚してからは自分で好きなようにカネを使えるようになったため、歯止めが効かず札束を全て馬に食われてしまい、自宅を競売にかけられる羽目になった。結婚生活中でも、たまには家族サービスしようと日曜日に妻および娘と外出したものの、午後3時になると我慢できずにイヤホンでラジオの競馬中継を聞いていると、それが妻にバレて激怒されたという。
ダンプ松本はパチンコ依存症だったとカミングアウトしている。ダンプがパチンコを始めたのは新人の時で、ビギナーズラックにより少ない元手でたまたま大勝ちしたのがパチンコにハマったキッカケらしい。それ以来、ストレス解消もありパチンコにのめり込んでいったという。
現在はパチンコから足を洗ったが、おそらく何千万円も溶かしたとダンプは述懐している。ファイト・マネーはほとんどパチンコ代に消えていたというから、何のためにプロレスをしていたのか判らない。パチンコをしていた頃は、自分はパチンコ依存症ではないと思っていたそうだ。
だが、ハッキリ言ってパチンコで儲かるわけがない。パチンコで客が得をしていたら、パチンコ屋はとっくに潰れているからだ。しかし、パチンコ依存症の人は、カネを注ぎ込まなければ勝てないと思い込んでいる。負けた状態でやめると、カネを損したままになるから、結局は閉店まで打ち続けてしまう。そして、さらに負けが込んで帰宅したあと、後悔するのがオチだ。
そして、たまに勝つとその快感が忘れられずに、またパチンコ屋に通う。勝ったと言っても、それまでの負け分に比べれば焼け石に水なのだが、本人は儲けたつもりでいるのだ。
最近は減ったとはいえ、パチンコ屋にはATMまである。いくらでもカネをむしり取られる訳だ。
さらには、消費者金融による無人契約契約機の登場で、借金に対するハードルが以前よりも低くなった。審査にさえ通れば、誰にもバレずに借金できる。これにより、パチンコ依存症だった筆者の友人は借金地獄に陥ってしまい、離婚を余儀なくされた。

大勢のギャンブル依存症を生み出す、日本の詐欺的システム
言うまでもなく、日本では一部の公営ギャンブルを除き賭博行為は禁止されている。また、ラスベガスのようにギャンブルが認められている地域もない。だが、実際には日本はギャンブル大国と言えるのだ。
昔、戦後日本の政治を動かしていた右翼のドンが出演していたCMがあり、「世界は一家、人類は兄弟」「お父さんお母さんを大切にしよう」「一日一善」などと美辞麗句を並べながら、決して「ギャンブルはやめよう」とは言わなかった。それもそのはず、それは某公営ギャンブルの胴元によるCMだったからだ。
昨年、大阪市で大阪・関西万博が行われた。その跡地となった夢洲をカジノ島にしようという計画(大阪IR)がある。ただでさえギャンブル大国の日本に、なぜ?
だが、筆者はカジノ構想に賛成だ。ギャンブル依存症の怖さを書いたのに、それに反するようだが、もちろんカジノ構想実現には条件がある。