[ファイトクラブ]KENTA水掛け被害が示す【暴走する外野の正義感】

[週刊ファイト6月5日]期間 [ファイトクラブ]公開中

▼KENTA水掛け被害が示す【暴走する外野の正義感】
 photo & text by 鈴木太郎
・KENTA入場時に水吹きかける客の暴挙
・事件が起きた時の対応は適切
・「団体問わず何処でも起こり得る」恐怖
・実行犯が「ノア常連ではない」、「有名問題客だった」衝撃裏事情
・直近3年で問題5例目も当該客の殆どが初見
・何処ファンとも分からぬ者がイメージを毀損する
・当該客の言動・行動に疑われる○○○○の可能性
・運営対応完璧であっても初犯未然防止がムリな訳
・頻発してるように見えるのは【人間の免疫力】と同じ話だから
・明文化するまでもない常識的な話を守れぬ人間の存在
・当人の生育環境や躾のツケを、団体が払わされる悲劇
・運営対応完璧なノアやFREEDOMSでも出現する問題客
・初犯の問題客を事前に把握する事は困難
・問題発生⇒迅速対応の積み重ねで繋がる信頼
・インディーや女子団体も例外ではない
・適切な治療を病院で受けさせる事が一番の解決策
・事件後も水かけ行為をSNS上で弁明する当該客
・団体が当該客の抱える問題や面倒まで見る義理も無い
・外野の好奇が引き起こす二次被害
・問題拗らせる外野の好奇&群集心理が一番悪辣
・今は誰もがメディアな時代
・当該客に直接反省を促し刺激する、外野の危険行為
・外野の”正義の暴走”が団体の対応を無に帰す
・当該客に必要なのは”福祉に繋げる”事
・本件を面白おかしく弄る外野が一番悪い


 2025・5・24に行われたプロレスリング・ノア横浜ラジアントホール大会において、入場中のKENTAが観客から口に含んだ水をかけられる事件が発生した。当日の会場にはデビュー25周年を祝う花も届けられた中で悲劇に見舞われたKENTAは、バックステージで本件について言及した。

「見た? 見た? ていうか何より今日何の日か知ってる? 俺のデビュー25周年。1回しかない25周年の今日、5月24日。いやもう、台無し! 変なヤツのために台無し。まさか25年やって、入場の時、水ぶっかけられると思う? まさかビックリした。ビックリしたよ」

「注意したよ。『水かけちゃダメだよ』って。そうしたら、『ウーロン茶です』って。いや、そういう問題じゃねえよ! 『ああ、ウーロン茶だったら、じゃあ、しょうがないね』ってなるわけねえだろ。考えてみろよ。ダメなんだよ。ダメ」

 大会後もKENTAはSNSで「今日入場の時に口から水ぶっかけてくる人がいました。誰であれマナーを守れない人はつまみ出します。今日はデビュー25周年の日でした。非常に気分が悪いです。」と投稿し、丸藤正道もSNS上で「ルールとかいう次元の問題じゃない。」とコメント。たちまち大手ニュースサイトのトップニュースに取り上げられるほどの話題になってしまった。

 この事件に対して、周囲からはプロレスリング・ノアによる運営上の不備を指摘する声も上がっているが、現地にいた観客による投稿を見る限り、KENTAの試合中はスタッフや関係者が当該客を見張って睨みを利かせ、試合後に退場させたのだという。これを聞く限り、ノアの対応は至極真っ当なもので、そこに瑕疵があったとは思えない。
 後述するが、既に関係者からマークされるような客なら未だしも、初犯の場合はそれを防ぐ事は困難だ。どうしても事件が発生した後の対応になってしまうことは必然で、そんな対応を後手だと切り捨てて批判してしまうのは簡単なのである。

 寧ろ、本件で言えることは「こうした事件が、団体問わず何処でも起こり得る」可能性と、団体が粛々と対応していても関係の無い他のプロレスファンを始めとした外野の好奇によって引き起こされてしまう二次被害の影響ではないだろうか?
 本件は決して、他団体にとっても対岸の火事ではない。言い換えれば、これはテロ行為であり、選手や観客の安全を脅かす重大な話なのである。

実行犯が「ノア常連ではない」、「有名問題客だった」衝撃裏事情

 プロレスリング・ノアでは、これまでの直近3年を振り返ってみても、話題になった客の存在は少なくない。

・2022年4月の両国国技館大会で、声出し禁止にもかかわらず何度も選手の名前を叫んだ男性客

・2023年4月の後楽園ホール大会で、リングのエプロンに上がり、清宮海斗の前で叫ぶ女性客

・2023年夏に公表された、潮崎豪のストーカー被害

・2024年5月の後楽園ホール大会のメインイベント後、大岩陵平が清宮海斗に攻撃を加えた際にリング周辺の鉄柵を蹴った男性客

 今回のラジアントホールの一件や潮崎のストーカー被害を除き、筆者は会場で事の始終を目撃しているが、泥酔客による事例だった一番初めの両国大会を除くと、問題の当該客はシラフで事に及んでいる。しかも、その言動や様子を見る限りでは、治療を要するほどの病気(精神疾患)を抱えていたように思われる。

 こうした事実を本記事で指摘することは憚られるのかもしれないが、上記の件はノアファンが実行したというより、「日頃より問題を抱えていた人物が、大会を見に来た時にこのような問題を起こした」という見方が適切なように感じている。
 この問題客の多さを以て「ノアファンはひどい!」と言うことも出来てしまうのだろうけど、上記に列挙した問題の客はスタッフや選手関係者によって全員即退場ないし出禁措置が取られ、その後の対応(手荷物検査、悪質なヤジの退場宣告、警察との連携etc・・・)が実施されたことも事実である。

 今回の水掛け事件が起きた際、直近の事例を踏まえて「これだからノアは危険だ」と論じる者も少なくなかった。だが、後に当該客のSNSアカウントがファンによって明らかになると、以前にも新日本プロレスのイベントに現れたり、新日本プロレスの選手のSNSアカウントにコメントを付けていたりしたことが判明した。その途端、このようなノアファンへの批判は一気にフェードアウトしていった。
 この当該客が、もしかしたら新日本プロレスの大会やイベントで問題を起こしていたという可能性は否定できない。何より、何処のファンとも分からない人物が引き起こす事件によって、団体やファン全体のイメージが既存されてしまうのである。
 本件の被害者はKENTAだけではない。ノアやノアファン、ひいてはルールを遵守するプロレスファンにとっても迷惑な話である。大体、問題を起こせば当該団体のファンに矛先が向いてしまうものだが、そういう事象ほど冷静になって考えてみてほしい。

 2023年4月に清宮の前に現れた女性客にしても、筆者はノアの地方大会にも殆ど足を運ぶようなノアファンから「あの女性客は初めて見た」という話を耳にしているし、清宮を応援している女性ファン界隈も彼女の存在を知らなかったと聞いている。

記事の全文を表示するにはファイトクラブ会員登録が必要です。
会費は月払999円、年払だと2ヶ月分お得な10,000円です。
すでに会員の方はログインして続きをご覧ください。

ログイン