[週刊ファイト11月7日]期間 [ファイトクラブ]公開中
▼『ザ・ニューヨーカー』に極悪マクマホン、混乱アメリカ社会投影WWE
by Favorite Cafe 管理人
・大統領選混乱アメリカ社会、ストーンコールド出現待ちわびる
・WWE全米制圧 第一次日本侵攻失敗 迎え撃った新日・全日・SWS
・2002年、2003年WWEオールスターズ再上陸で日本制圧
・エンタメWWEとPRIDE、K-1の挟撃に日本のプロレスに危機
・WCW崩壊、サプライズで興味を繋ぐマクマホンWWEのビジネス戦略
・急転直下、確執を越えてホーガン獲得『レッスルマニア19』
・WWE『RAW』ゴールドバーグと正式契約『WRESTLE-1』への影響も
・ステイシー、セイブルWWEファン悩殺 トーリーはハリウッド進出か
アメリカの雑誌『ザ・ニューヨーカー』10月21日号に、『Mr.McMahon 悪のオーナー』が取り上げられている。同誌はルポルタージュや批評、エッセイ、小説など多岐にわたるジャンルを網羅する総合誌だ。
『ザ・ニューヨーカー』の記事では、2024年の大統領選さなかのアメリカ社会を2000年前後のWWEと重ね合わせて“アメリカのアティテュード時代である”としている。記事の内容の要約は以下の通り。
マクマホンは、派手にカリカチュア(人物の性格や特徴を際立たせるためにグロテスクな誇張や歪曲を施した人物画)化された自分自身を演じ、究極の金持ちの嫌な奴になりきっていた。粗野で大げさで、悪魔のように賢い興行主であるビンス マクマホン。このNetflixのドキュメンタリーは、マクマホンがプロレスに注目を集めるための「熱」を生み出すことに執着し、WWEを真のエンターテインメントに育て上げる過程を浮き彫りにしている。
一方、今のアメリカ社会では、高齢の大統領がテレビで認知能力を失っていることを露呈し、隠蔽工作の疑いが浮上、ついには大統領指名を辞退した。そして別の人物、元大統領はペットを誘拐して食べてしまう迷惑な訪問者(不法移民)について言及して群衆の気を引こうとし、ペンシルバニアでは誰かが彼を暗殺しようとした。彼は血を流す顔を群衆にさらし、拳を振り上げ、信奉者たちに戦うよう懇願した。
これがマクマホンの世界なら、秀逸なストーリーを演出したビジネスの一部として片付けられるだろう。しかし現実なのだ。私たちは暗殺未遂が起ってしまう社会について、もっと語らなければならないはずだ。私たちは国内の政治的不条理と、世界的な大惨事が次々と起こる中で、パンチドランカーにされ、トップロープから転落して脳震盪を起こしている。全てが拝金主義のビジネスのように見えているのだ。
WWEの歴史で最も人気があった時期は、90 年代後半から 2000 年代前半、いわゆる「アティテュード時代」だった。試合はもはや善と悪ではなく、悪と極悪の間で行われるようになった。大ヒーローは、ビールをガブ飲みし、革ジャンを着て口汚くアジテーションするストーンコールド・スティーブ・オースティンだった。プロレスファンたちは、“ストーンコールド3章16節”「神はストーンコールドを世に遣わした。お前をぶちのめすために!」という言葉に酔いしれた。
私達はおそらく今、“アメリカのアティテュード時代”を生きているのだろう。そうだとするならば、神様、どうか今のアメリカのチャンネルを変えてください。
▼Netflix『Mr.マクマホン 悪のオーナー』公開ストーンコールドかく語りき
『ザ・ニューヨーカー』のこの記事では、マクマホンは、父・マクマホン・シニアのイラン人質事件をリングに投影したビジネス手法や、人種やジェンダー差別など、「アメリカにおける悲惨な歴史」までを物語に取り入れ、プロレスを「カネを生むビジネス」に変えていったとしている。
良くも悪くも、WWEプロレスが、今のアメリカ社会を風刺するための題材として取り上げられているのは、プロレスの一つの市民権の形と言えるだろう。リアルなアメリカ社会も、ストーンコールドの出現を待ちわびているのか。
以下は前回に引き続き、当時の週刊ファイトの記事から、『ザ・ニューヨーカー』が取り上げたWWE(WWF)の成長の過程と日本侵攻を振り返る。Netflixのドキュメンタリーは、アメリカ国内向けに構成されているので、日本との関係は全く語られていないが、『Mr.McMahon 悪のオーナー』を読み解く上でのもう一つの新たな視点となるだろう。
なお、ストーンコールドの言葉の出典は、キリスト教“ヨハネの福音書3章16節”。様々な日本語に訳されているが、キリスト教に縁が無い方にわかりやすく説明するとすれば、「神はキリストを世に遣わした。ひとり一人に与えられた命という宝を輝かせるために」と考えていただければ良いだろう。
▼巨額放送権契約後にビンス・マクマホン「SEX斡旋」スキャンダル発覚
WWE全米制圧 第一次日本侵攻失敗 迎え撃った新日・全日・SWS
週刊ファイト(2003年4月17日付け)
2003年7月に今年2度目の日本上陸を果たすWWE。昨年(2002年)、今年と3度の大会はいずれも超満員で、日本マットにおけるWWE人気の高さを物語った。
地上波(フジテレビ)でのレギュラー番組がスタートして、ますます目に触れる機会が増えることで、WWE人気はさらに上昇するはず。次回は横浜と神戸をサーキットすることが決定し、こちらも超満員が確実視されている。
WWEからすれば地上波進出はあくまでパブリシティーの一環だが、その背後には本格的な日本進出どころか、完全制圧の狙いが潜んでいる。それはWWE(WWF)の世界制圧戦略を振り返ってみれば容易に分かることだ。
1985年、第1回『レッスルマニア』で全米侵攻のノロシを上げたWWF(当時)。当時は全米各地にプロモーションが存在していたが、ビンス・マクマホンJR氏は次々と興行戦争を仕掛けていった。
その第1段階がテレビを利用したパブリシティー。各地の地元局の番組枠を押さえ、WWFのビデオをガンガン流したのだ。各地のプロモーションも地元局で番組を持っていたが、あくまでTVマッチと呼ばれるもので、週1回の定期興行の宣伝にしかすぎないもの。格下相手に短時間の勝負を行って強さをアピール。さらにTVインタビューで抗争相手と“舌戦”を繰り広げ、要は「○○大会で決着をつけてやる。結末が見たいなら、会場に見に来い」というものだった。
しかしWWFは、会場で行われている試合そのものをオンエア。当然、内容的には地元プロモーションのものを上回るだけに、次第に人気が高まってくる。そして、頃合いを見計らって、その地区で興行を打つ。当初は「テレビ中継を始めても、彼らは遠く東部をサーキットしている団体にすぎない。ここで、興行を打つことはない」と安心していたプロモーターも慌てる。しかもその直前には、地元のトップクラスを引き抜いて骨抜きにしてから乗り込んでくるのだから、ひとたまりもない。
それまでは、地元にオポジションは存在しても、「よそのテリトリーは侵略しない」という暗黙の了解で共存共栄を図っていたのだから、緊急事態にどうしていいのか分からない。手をこまねいているところに攻め込まれるので、大半の団体は無条件降伏に近い状態だった。
そんな中、気を吐いていたのがミッドアトランティック地区のプロモーター、ジム・クロケットJR氏。最後は1人でNWAのテリトリーを守っていたが、それも1988年に力尽き、テッド・ターナー氏に団体を売却、WCWがスタートして米マットは2大メジャー時代に突入。それも2001年3月、WWFのWCW買収という結末を迎えた。