井上尚弥の観客数の僅か1/9! 厳しい船出となったUJPW

 ゴールデン・ウィーク最終日となった5月6日(月)、東京ドームでビッグ・マッチが行われた。ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一タイトル・マッチ、井上尚弥(王者)vs. ルイス・ネリ(挑戦者)である。
 結果はご存知の通り、井上が1回にいきなりプロ初のダウンを喫するも、6回1分22秒TKO勝ちで4団体王座防衛を果たした。

 東京ドームには約4万3千人もの大観衆が集まり、地上波放送が無かったにもかかわらず、日本中の話題を独占。いや、日本のみならずX(旧Twitter)では世界でトレンド1位になるなど、世界中の人々が井上のスーパー・ファイトに酔いしれた。
 ところでこの日、同じ東京でもう一つのビッグ・イベントが行われたのをご存知だろうか。

 ご存知だろうか、も何もない。本誌で散々告知している日本プロレスリング連盟(UJPW)の発足記念大会『ALL TOGETHER』である。メジャー団体が集まった、いわばオールスター戦だ。
 ところが、日本武道館に集まった観客は、僅かに4,583人(主催者発表)。ボクシングの約1/9である。キャパシティが違うとはいえ、それでも武道館が満員になったときの1/3程度だろう。

タイチが激白「こんな大会、無理してやる必要があるのか!?」

『ALL TOGETHER』に観客が集まらなかった理由として、同じ日に同じ東京でボクシングのビッグ・マッチがあった、あるいはゴールデン・ウィークの最終日だったため集客が難しかった、など色々言い訳はできるだろう。しかし、最終日とはいえGWの最中である。しかも、オールスター戦と言っていい興行で、キャパの1/3しか集まらなかったのは、何を言っても虚しいだけだ。
 もちろん、世間的には何の話題にもなっていない。UJPWの発足記念興行、さらに能登半島地震に関するチャリティー大会だったのだから、ご祝儀的要素もあったはずだ。

 筆者は常々、UJPWが単なる合同興行だけの連盟では意味がない、と本誌で書いてきた。ところが、その合同興行ですら客を集めることができないのなら、UJPWの存在意義そのものが問われる。
 UJPWが発足してから半年近くも経つのに、未だに法人化すらされていない。本当にプロレス界を一つにまとめる気があるのか? とさえ疑ってしまう。

 そう思っているのは、筆者だけではないようだ。実際、今大会に出場したタイチも空席だらけの状況に、
「プロレス界全体が集まってこの人数か!? そんなんだったら無理してやる必要ないんじゃないか?」
と不満をぶちまけていた。

 出場したレスラーにここまで言われたら終わりである。しかも、タイチの言葉は当たり前の反応だ。救いなのは、参加したレスラー自身が危機感を持っていたことだが……。
 自分が出場して客を集められなかったのだからお前が言うな、という意見もある。また内藤哲也も、プロレス界が井上尚弥1人に負けて悔しい、と嘆いていた。
 だが、責任はレスラー1人にあるわけではない。今回の失敗は運営の拙さにあったのだろう。

 そもそも、ボクシングを東京ドームで開催するのは34年ぶり。しかも、日本人ボクサーがメインを張るのは今回が初めてだ。
 一方、プロレス界は毎年のように東京ドーム大会がある。つまり、本来ならボクシングよりもプロレスの方が集客力はあるはずだ。

やる気が伝わってこない日本プロレスリング連盟

 結局、今大会の失敗は営業力の無さに尽きる。各プロレス団体は、儲けに繋がる自主興行の大会には必死で集客に努めるが、それ以外では無関心だ。
 プロレス団体は営利目的だと真剣になるものの、非営利になると途端にやる気を失くす。

 UJPWは、前述のように法人化されていないばかりか、連盟のサイトすらまだ開設していない有様だ。インターネット時代の現代、PRのためにはまずサイトを立ち上げるのが普通だろう。
 しかもサイトどころか、日本プロレスリング連盟のSNSアカウントすら見当たらなかった。SNSなんて素人でも無料で簡単に登録できるのに、それすらやっていない。

 結局、情報発信は各団体のサイトに委ねられている。UJPWは本当にやる気があるのか!? と思ってしまうのも無理はないだろう。
 UJPWはもはや、合同興行には関わらない方がいいのではないか。今では団体同士の垣根は低くなっているのだから、大会運営は各団体に任せておけばいい。

 なぜなら、UJPWには連盟としてやらなければならないことが山積みだからだ。以前にも書いたように、レスラーの安全対策や社会人教育など、書き出したらキリがない。UJPWはそちらに専念した方がいいだろう。

 最後に、しつこいようだがもう一度UJPWの理念を載せておく。

『わが国におけるプロレスへの認知を高め、プロレスが社会の文化的公共財であることを認識し、これを普及して国民生活の明朗化と文化的共有の向上を図るとともに、プロレス事業の推進を通してスポーツおよび文化の発展に寄与し、プロレス業界の繁栄に貢献することを目的とする』


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