[ファイトクラブ]GLEAT旗揚25ヶ月 飯伏幸太登板も両国初進出は苦い結末に残る課題

 2021年7月の本旗揚げから僅か2年1ヶ月。新進気鋭のプロレス団体・GLEATが両国国技館に初進出を果たした。平日開催ながら団体の過去最多動員を更新するも、内容以上に記憶が色濃い長時間、MMA部門の存在意義、大舞台に呑まれた所属選手達と、興行の課題はいくつも散見された。飯伏の進言で決まったという今回の両国国技館大会は、今後のGLEATに何を残していったのだろうか?


[ファイトクラブ]公開中 [週刊ファイト8月17日号]収録

▼GLEAT旗揚25ヶ月 飯伏幸太登板も両国初進出は苦い結末に残る課題
 photo & text by 鈴木太郎
・団体最多動員更新も残る課題
・内容よりも疲労感!選手・関係者も気にした長時間興行悲哀
・両国国技館退出が23時過ぎの衝撃
・選手関係者も気にした時間の長さ
・プロレスの試合テンポは良かったが・・・
・興行時間配分苦しめた『GLEAT MMA』需要誰のため?
・選手に罪はなくとも、興行のブレーキだったMMA部門
・プロレスと総合格闘技は、同じ興行内で共存できるもの?
・総合で勝てる選手を本気で育てようとしているのか?
・「プロレスラーが総合格闘技をやってみた」状態
・『LIDET UWF』を捨て『GLEAT MMA』を立ち上げる中途半端さ
・飯伏幸太1年10ヶ月振り国内復帰戦もコンディション不良露見
・足首骨折&扁桃炎で全盛期程遠く
・【打倒・飯伏】で団結したGLEAT軍の強さ
・説得力の無い飯伏の逆片エビ固め
・不調でも試合を持って行く存在感は健在
・外敵と大舞台に呑まれた所属選手達の悲喜交々
・敗戦後のマイク〆でリンダマン号泣の屈辱
・所属にとって苦い結末となった両国初進出
・度胸の強さ発揮した頓所隼
・思わず声出た『T-Hawk vs.田村ハヤト』激闘
・飯伏に容赦なし!株上げた石田凱士
・ストーリーのタメとして意味持つ初進出の意義
・ピークなのか通過点なのかは選手や団体次第
・今後次第では”史上最大の挑戦”も無駄ではない


■ GLEAT 『GLEAT VER.MEGA』
■日時:2023年8月4日(金) 18:30開始
■会場:東京・両国国技館
■観衆:2,215人

 観衆2,215人。2021年に旗揚げしたGLEATの、両国国技館初進出における観客動員数である。
 直近では2023・6・9『ALL TOGETHER AGAIN』のように、プロレス興行の両国国技館平日開催の事例はあったものの、団体単独で平日に乗り込んだ事例はあまり聞き慣れない。
(遡ってみても、2015年の『佐野魂』くらいしか記憶にない)

 今大会では、新日本プロレス退団後の日本国内復帰戦となった飯伏幸太の参戦に加え、新日本プロレスの高橋ヒロムといった外部参戦組の豪華さも奏功したのか、今年7月のTOKYO DOME CITY HALL大会で記録した団体最多動員数(1,279人)を大幅に更新した。

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 その一方で、大会の内容や運営面に課題を残す大会でもあった。
 23時近くまで終わらない興行、目玉でもあった飯伏のコンディション不良、所属勢が大舞台や外敵に呑まれた結果と内容。いずれも、団体としての経験値の少なさだったり、想定外の事態だったりが露見してしまったように思えてならない。

内容よりも疲労感!選手・関係者も気にした長時間興行悲哀

 今大会を語る上で外せない話題は、長時間にも及ぶ興行時間だろう。

 18時過ぎにダークマッチ1試合、18時30分からの本戦も全10試合というボリュームの多さは、ビッグマッチならではという構成ではあったが、大会のトリを飾る飯伏幸太が出場したイリミネーションタッグマッチの終了時間は22時45分頃。その後の締めのマイクなどが諸々終わり、筆者が両国国技館を出た時には、時計の針は23時を超えていた。この状況でも大会後の物販が行われていたのだから、その列に並んでいたら更に遅い時間になっていたはずだ。本戦だけでも実に約4時間30分。1興行でここまで長時間に及ぶプロレス興行も中々お目にかかれない。

 平日開催のビッグマッチで似たようなケースは、直近だと2023・2・21に行われた武藤敬司引退興行がある。ダークマッチ3試合を含む全12試合で、興行時間はダークマッチ開始の16時から21時頃まで約5時間という内容は、今回の両国と共通項が多い。ただ、試合間に15分休憩が2回も設けられた武藤引退興行に対し、GLEAT両国は本戦開始後の休憩時間は無し。

 平日開催でも事前に日程を発表して、地方からの遠征組や有給休暇を取得して観戦に行く層を想定した前者に比べると、仕事帰りでも見に行ける今大会は職場勤めのプロレスファンに優しい配慮が戦前に感じられたのだが、いかんせん時間が長すぎた。筆者の近くに座っていた観客も、22時過ぎにイリミネーションマッチの結果を見届ける前に席を立ってしまったほどである。この時間帯に生でプロレスを観る事なんて、大晦日の年越し興行くらいしか記憶にない。タッグマッチの入場シーンでは同じコーナーで複数の個別入場曲を流すことも少なくなかった上、22時過ぎに行われた最後のイリミネーションマッチでは、GLEAT軍が1曲で5選手入場だったのに対し、飯伏軍は5選手全員が個別で入場する有様。

 時間を気にしていたのは、観客だけではなかった。イリミネーションマッチに出場した石川修司はバックステージで帰りの時間を気にしていた事を大会後に明かしているし、撮影に携わったカメラマンの1人が両国国技館を退出したのは24時前だったという。設営・撤収に携わっていた別の関係者は「現場がテッペン(=0時)を超えた」と呟いた。現地観戦組やYouTube視聴組から漏れ出る長時間興行の指摘は、皮肉なことに、試合や大会の内容よりも印象に刻まれてしまったのではないだろうか?

 とはいえ、プロレスの試合そのものはテンポも良く、ビッグマッチにありがちな【主要カード以外は短い時間で手堅く纏める】法則が見事なまでに発揮されていた。その分、メインの『T-Hawk vs.田村ハヤト』のG-REX王座戦と、『GLEAT軍vs.飯伏軍』のイリミネーションマッチは30分前後をかけており、この時間配分は妥当にも思える。

 では、何故、これほどまでにテンポを崩す結果になってしまったのか? 最大の原因は、第1試合と第2試合にあったと筆者は考えている。

興行時間配分苦しめた『GLEAT MMA』需要誰のため?

 今回のGLEAT両国ビッグマッチでブレーキになっていたのは、序盤の2試合で組まれた『GLEAT MMA』だった。

 『G PROWRESTLING』、『LIDET UWF』に次ぐGLEATの第3ブランドとして2022年冬に発足した『GLEAT MMA』で、この日は『Nao vs.福田茉耶』、『郷野聡寛vs.井土徹也』の2試合が組まれるも、所属選手の福田と井土が揃って敗れる結果に終わった。
 前置きしておくと、選手個人の頑張りを否定するわけではない。観衆が少ない今大会にあって、Naoの大応援団は会場を盛り上げたし、ガードポジションを取らない体勢からパンチとキックを老獪に打ち込む郷野の姿には、総合格闘技の知識が無い状態でも衝撃を受けることばかりであった。福田も井土も慣れない土俵で最前を尽くしていたと思う。

 「プロレスと総合格闘技は、果たして同じ興行内において共存できるものなのだろうか?」

 今大会を見ていく中で覚えた違和感である。『G PROWRESTLING』や『LIDET UWF』の場合、勝敗という強さの面だけでなく、選手自身が観衆を楽しませようとする余地が含まれているものだ。明け透けな事を言ってしまえば、選手個人の身体能力が、ここでのイコール強さに結び付くとは必ずしも限らない。
 一方、『GLEAT MMA』のような総合格闘技ルールの場合、エンタメ的な要素以上に選手の身体能力や対戦相手のスカウティングが重視される。そして、互いに隙を作らず判定までもつれるケースも少なくない総合格闘技は、試合時間をコントロールして、テンポ良くする事も出来るプロレスとは趣を異なるものにしている。アクシデントで1度試合が止まった時間を加味しても、序盤の2試合で1時間近くも費やしたのは、その最たる例だろう。
 ただ、18時30分開始で残り8試合もある興行をテンポ良く終わらせていかなければいけない中で、この約1時間は最後の最後までボディーブローのように効いていき、興行に多大な影響を及ぼした。つまるところ、プロレス興行メインの大会にMMA形式の試合は水と油だったのではないだろうか?

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