[ファイトクラブ]動員不振ZERO1火祭り初優勝で狙うど真ん中!松永準也が見せた未来

[週刊ファイト8月10日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

 プロレスリングZERO1毎年恒例のリーグ戦『火祭り』。23回目を迎えた2023年大会は、松永準也が真霜拳號を破り『火祭り』初優勝を成し遂げたものの、優勝決定戦の行われた今大会は動員で苦戦を強いられる結果となった。「ど真ん中に立つ」と宣言した松永の弁とは裏腹に、オッキー沖田もリングアナを勇退する新生ZERO1に向けて課題が露呈した、夏の祭典最終戦を追う。


▼動員不振ZERO1火祭り初優勝で狙うど真ん中!松永準也が見せた未来
 photo & text by 鈴木太郎
・芝公園の【観衆:2,800人】を取り込めない痛手
・優勝決定戦動員不振は栃木プロレス偏重が原因?
・『ひつま武士』保険で動員カバーの皮肉
・新生ZERO1の軸は栃木? それとも・・・
・横山佳和タッチ拒否職場放棄も沸かせたヤス久保田ブレーンバスター
・ヤス久保田のブレーンバスターが救う冷え切った空気
・慎吾ファイアーバードスプラッシュ朱鷺裕基も永尾颯樹組に会場熱狂!
・臆することなくぶつかる若手と受け止めるベテラン
・熱闘:北村彰基が制す!ミックスドマッチ概念超越したウナギ・サヤカ戦
・男子相手で増えた試合の見所
・ウナギのやりたい事と、ウナギにフィットしている事は別問題
・世界ヘビー級王者クリス・ヴァイス不覚!援護射撃活かし渡瀬瑞基pin
・クリス・ヴァイスに待ち受ける、『火祭り』後の防衛戦の相手
・天下一Jr出場権4wayアストロ・ブラック!佐藤光留 新井健一郎 慎吾も
・アストロ・ブラックが見せた技の当たりの強さ&意表突く攻撃
・火祭り優勝決定戦:真霜拳號の猛攻も松永準也27歳、耐え抜き初制覇
・松永を追い詰める、予想以上な真霜の隙の無さ
・劣勢を引っくりかえした松永の「もっと来いよ」
・終盤のコンボに感じた、煽り文句同様の力強さ
・ど真ん中は未だ先も、嘘ではなかった大松永コール


■プロレスリングZERO1 『第23回 ZERO1真夏の祭典・火祭り2023~決勝戦~』
■日時:2023年7月29日(土) 18:00開始
■会場:東京・後楽園ホール
■観衆:538人

 プロレスリングZERO1の毎夏恒例となっているシングルリーグ戦『火祭り』。2023年で23回目を迎えた同リーグ戦を制して火祭り刀を手にしたのは、デビューから2年4ヶ月しか経っていない松永準也であった。
 前回大会では、『火祭り』史上初となるZERO1所属選手のいない優勝決定戦(『関本大介vs.稲村愛輝』)だった事もあり、所属選手が取り返した構図は明るいと言えるだろう。2AWの真霜拳號という外敵が優勝決定戦で立ちはだかるシチュエーションも、苦し紛れの丸め込みも無しで真っ向から勝負を挑み、結果として勝ちきった松永も称賛に値する。

 それでも、優勝決定戦の動員は振るわなかった。例年、7月最終の日曜夜で固定してきた優勝決定戦を、今年は1日早い土曜夜で開催したものの、それでも動員は538人と、前回大会の869人から大きく下回った。
 真裏にはZERO1とファン層の被るような関東圏の興行は無かった。チケット代の最低ラインが昨年の2,000円から今年は3,000円に上がったものの、これでも他団体の水準に比べれば安い部類だ。一番痛かったのは、大会前日の7・28芝公園イベントプロレスに訪れた多くの観客を、優勝決定戦の会場に持ってくることが出来なかった点だろう。
 イベントプロレスは大いに盛り上がり、オッキー沖田リングアナも「2,800人を動員した」と浮かれていたものの、大盛り上がりな芝公園の翌日に残酷な現実を見せられてしまったのである。ウナギ・サヤカの固定ファンにあたる『ひつま武士』の存在がなければ、更に悲惨な光景になっていたことだろう。ウナギの『火祭り』参戦発表当初は、彼女の人気と固定ファンでリーグ戦の動員をカバーしようという団体側の魂胆がミエミエだったが、皮肉にも、その保険をかけていたZERO1首脳陣の判断は正しかったと言えよう。とはいえ、ウナギが『火祭り』でここまで印象を良いものに変えてきた事までは想定外だったが・・・。

 大会後、『火祭り2023』覇者・松永は「プロレス界のど真ん中に立つ」事を高らかに宣言して見せたものの、その道は決して平坦なものではないだろう。真霜を見事に粉砕したポテンシャルの高さは、「ZERO1はオジサン団体じゃない」という松永の発言に説得力を担保していたものの、ネット上の反応を見た限り、松永の存在が業界内に響くには多くの時間を要しそうではある。
 若手選手が拠点を移して活動中の栃木プロレスが、地域密着型で地元スポーツと並ぶほど大盛況な一方、東京都内を中心にZERO1主催の興行数が減りつつある事が、巡り巡って今回の動員不振につながっているのではないだろうか?

 大会前、ZERO1旗揚げ当時より団体を支えてきたオッキー沖田リングアナが、今大会を最後にZERO1のリングアナから卒業することが発表された。しかし、ZERO1には取締役として残る一方、栃木プロレスではリングアナを継続する事が大会後に発表されたことで、栃木プロレスに注力していく姿勢はより強まったとも考えられる。今後、新生ZERO1を見せるにあたって、今後は栃木プロレスが主軸になるのか、ZERO1と栃木を両方動かしていくのかで、松永の言う「プロレス界のど真ん中に立つ」為のアプローチは大きく変わってくるはずだ。ZERO1にとって年間の柱の一つである『火祭り』最終戦が不振に終わった事実は、より重く受け止める必要がありそうだ。

横山佳和タッチ拒否職場放棄も沸かせたヤス久保田ブレーンバスター

<第1試合 タッグマッチ30分1本勝負>
○ヤス久保田 ヒデ久保田
(7分00秒 ヤ・スワントーンボム⇒体固め)
横山佳和 ●金剛山

 大阪を拠点にしており、先日ZERO1への入団が発表された金剛山が聖地・後楽園ホールに初登場。

 横山佳和とタッグを組んでクボタブラザーズと対戦したのだが、横山が金剛山のタッチを拒否して早々に試合を放棄したことで、金剛山が1対2で攻めこまれる展開が続いて試合は終了。

 しかし、どうにも盛り上がらないこの試合の空気を変えたのは、ヤス久保田であった。
 金剛山をブレーンバスターで投げることを宣言するも、敢えなく失敗。それでも、冷えきった会場が一気に沸いたのは、ベテランの成せる妙技であった。このワンシーンが無ければ、場内はより悲惨な空気感になっていたのは間違いないだろう。

慎吾ファイアーバードスプラッシュ朱鷺裕基も永尾颯樹組に会場熱狂!

<第2試合 タッグマッチ30分1本勝負>
永尾颯樹 ●朱鷺裕基
(10分48秒 ファイアーバードスプラッシュ⇒片エビ固め)
佐藤光留 ○慎吾

 ZERO1マットでは新鮮な佐藤光留&慎吾組を、ZERO1生え抜きの永尾颯樹&朱鷺裕基が迎え撃った一戦。

 佐藤は永尾と朱鷺の攻撃を受け止めながらも、激しく攻める相手の土俵に乗り込んでいく。キャリアの差が明確にある者同士の一戦ではあったが、臆することなくぶつかる若手とベテランの姿に、オープニングマッチの冷めた空気が嘘のような盛り上がり方。

 試合は慎吾が朱鷺を仕留めて勝利するも、佐藤と永尾は試合後も攻撃を止めずにヒートアップ。意外性のある組み合わせも、シングルやタッグで鉄板の盛り上がりになることを証明して見せた。

熱闘:北村彰基が制す!ミックスドマッチ概念超越したウナギ・サヤカ戦

<第3試合 スペシャルシングルマッチ30分1本勝負>
○北村彰基
(11分00秒 晋道⇒片エビ固め
●ウナギ・サヤカ

 「大谷晋二郎から『火祭り』の推薦を受けた」というウナギと、大谷の薫陶を受けてきた北村によるシングルマッチ。もしも大谷が健在だったならば、このカードは『大谷vs.ウナギ』になっていたのかもしれない。そう思わせたのは、何も二人が顔面ウォッシュを用いて大谷ムーヴを披露したからではなく、男子と女子のミックスドマッチという状況を超越していた。

 ウナギに関しては、相手の攻撃を受けず、攻めに回ってリズムを作りたいというのが普段の試合で見え隠れしていたのだが、今回のような男子選手との対戦になった時に、ウナギが受けに回る時間帯が増えたことで、ウナギが反撃していく様だったり、男女の力量差をどう埋めるかだったりと、明確に試合の見所が増えた印象を受ける。北村もミックスドマッチとはいえ、チョップ合戦や蹴りでウナギを圧倒しつつ、要所で彼女の見せ場を作って上手く纏めてきた。

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