[ファイトクラブ]スターダム金網マッチ大団円ハッピーエンドも見え隠れした悲喜交々考

 名古屋や大阪で開催実績がありながら、意外にも関東初開催となったスターダムの金網マッチ。代々木ビッグマッチのメインで組まれた『Queens Quest vs.大江戸隊』による【敗者ユニット共励離脱マッチ】は、大江戸隊の敗戦と鹿島沙希の事実上の追放で幕を閉じた。ここ最近誤爆連発で不仲にあった林下詩美と上谷沙弥の電撃和解でハッピーエンドの余韻も感じられた代々木大会であったが、筆者としてはハッピーエンドと言い切れないモヤモヤも感じられた大会だったのである。


[週刊ファイト7月6日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼スターダム金網マッチ大団円ハッピーエンドも見え隠れした悲喜交々考
 photo & text by 鈴木太郎
・予想できなかった鹿島の大江戸隊強制離脱
・終盤まで関与しない鹿島と、刀羅ナツコの脱出に見た前兆
・メインの勝敗は【強力なフィニッシャー】にあり?
・大江戸隊がヒールユニットだと示した制裁劇
・感情揺さぶる林下詩美QQ上谷沙弥電撃和解も夏の人事異動現状維持
・【誰にでも負けるが、誰にでも勝てる】鹿島の貴重さ
・人員不足にハマる鹿島という名のワンピース
・金網戦の適正人数と言えなかった6vs6
・双方のユニットが傷つかない無難な結末
・【林下や上谷の険悪な関係性】を1大会で改善させる謎
・鹿島という生け贄と引き換えに得たハッピーエンドという虚像
・メイン喰う刺身のツマ!アーティスト王座戦ジュリア漢気発揮で王座V1
・メイン以外で金網を使うための口実と思われたが・・・
・岩谷麻優のイキイキさとジュリアの漢気に躍動する試合
・ジュリアSTRONG出場直訴は海外参戦の序章となるか?
・白川未奈&マライア・メイがタッグ王座奪取も危険感じた終盤の攻防
・タッグチームとしての浅い経験と技術面に感じ取る不安
・危険技警察出動不可避な終盤の垂直落下攻防


■スターダム 『STARDOM SUNSHINE 2023』
■日時:2023年6月25日(日) 16:00開始
■会場:東京・国立代々木競技場 第二体育館
■観衆:1,715人

 2023・6・25スターダム代々木第二体育館大会。
 メインイベントで行われた『Queens Quest vs.大江戸隊』による6対6の【敗者ユニット強制離脱マッチ】は、関東では初開催となる金網戦であり鹿島紗希の”追放”で幕を閉じた。

 戦前、Queens Quest(以下:QQ)の林下詩美と上谷沙弥が試合中の誤爆を重ねて険悪な関係に陥っていた事がフォーカスされてきただけに、今回の強制離脱に関与する要素や前兆の無い、鹿島の敗戦を予想できた者はいなかったのではないだろうか? 試合後、鹿島を袋叩きにする大江戸隊の面々と、林下と上谷が泣きながら和解に至るシーンは対照的であり、筆者としては予想外な結末ではあった。

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 ただ、試合を振り返ってみると、前兆や伏線は感じられ、唐突な”人事異動”には見えなかったのも事実だ。
 試合中、両チームともキャリアの若い選手を率先して脱出させていき、時には仲間に補助を付けるなどして勝利へと近づいていったのだが、その中で、双方2人残りになる終盤まで、不自然なほど試合に関与していなかった選手が鹿島であった。彼女は現ハイスピード王者であり、強敵から3カウントを奪える選手でもある。しかし、彼女のフィニッシャーは丸め込みや固め技であり、相手のヒットポイントを0まで削る強力なフィニッシャーを有している訳ではない。金網外へのエスケープルールは、丸め込みで3カウントを奪う選手や、強大な威力のフィニッシャーを持たない選手にとっては不利に働く。鹿島に関わる様子の無い大江戸隊の仲間達や、双方残り2人となったタイミングで我先に脱出へと成功したリーダー・刀羅ナツコの姿は、鹿島を見捨てる意思表示を暗に示していたのではないだろうか?不仲にあったとはいえ、強力なフィニッシャーを有する林下詩美と上谷沙弥を最後の2人に残し、レディ・CをアシストしてエスケープさせたQQとは対照的なスタンスであった。

 試合中は両チームへの歓声メインでブーイングは起きず、試合が決した瞬間は鹿島の強制離脱に対して呆気に取られた観客達も、試合が終わって早々に鹿島を制裁する大江戸隊を見た瞬間、場内からは激しいブーイングが巻き起こった。ある種、鹿島を見殺しにしながらも、敗戦で恥をかかされた事への怒りを露にした大江戸隊リーダー・刀羅ナツコの暴君っぷりや、試合後に取った制裁行為は、アンチヒーロー的な立ち位置で人気を得ていた大江戸隊が、ヒールユニットであることを観衆に改めて印象付ける場面だったと言えよう。

QQ林下詩美-上谷沙弥電撃和解ハッピーエンドも現状維持な”夏の人事異動”

 メインイベント終了後、大江戸隊を追放されて一人残された鹿島にAZMがタッグ結成を提案するも、鹿島はこの提案を拒否してリング上から退場。STARSから大江戸隊にヒールターンして以降、固め技の【起死回生】で場内を幾度となく盛り上げてきただけに、事実上の大江戸隊追放という結末は意外であった。これにより、7・2横浜武道館大会で決定していたフキゲンです★とのハイスピード王座戦は、同門対決から一転、遺恨清算の様相を呈するカードへと変貌した。

 失意の底に立った鹿島だが、彼女のようなタイプはユニットを変えても力を発揮できると筆者は考えている。【誰にでも負けるが、誰にでも勝てる】鹿島のようなタイプは、エースやリーダー格タイプの選手と食い合うことも無い。その上、Twitterのメインアカウントとサブアカウントを駆使した発信力の高さを持つ鹿島は、ユニット抗争でも力を発揮できる事だろう。ひめか引退で欠員が出ている『ドンナ・デル・モンド』、白川未奈率いる発足間もない『CLUB VENUS』、白川らの独立で人員不足に喘ぐ『COSMIC ANGELS』など、ユニットの場所を選ばないユーティリティ性は、どのユニットで活かされることになるのだろうか?夏の人事異動にも要注目である。

 一方、金網戦を制してメンバー離脱を阻止したQQであったが、この展開がハッピーエンドかと言われると、そう言い切れないモヤモヤさも残ったように思う。確かに、キャリアの若い人間を先に逃がす手法は定石だと理解できるし、最後は若手を安牌に設けず、ユニットから欠けてはいけない選手を残した展開も素晴らしい。

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