[ファイトクラブ]プヲタの真逆を行く、いたばしプロレスの個性

[週刊ファイト2月23日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼プヲタの真逆を行く、いたばしプロレスの個性
 photo & text by 鈴木太郎
・SNS全盛にあって、感想ツイートを見かけない団体
・それでも会場は超満員のナゾ
・【プロレスヲタク】がいない良さ
・プロレスを通じて教える【勧善懲悪の否定】
・子供が抱く親近感こそカギ
・いたばしプロレスの心臓は、中里哲也である


■いたばしプロレス 下赤塚体育館大会
■日時:2023年2月11日(土・祝)
■会場:東京・板橋区立下赤塚小学校体育館
■観衆:イベントのため未発表(超満員)

 2023年に入って2度目となる、いたばしプロレスのイベントプロレス。
 下赤塚小学校体育館で行われた大会は、地元の小学生や父母が殆どで占められる、超満員の盛況っぷり。

 メインイベントでは、今大会でデビューした赤塚タヌキッドが登場。最後は中里哲也から、ダイビング赤塚タヌキッドエルボードロップで勝利し、デビュー戦を見事勝利で飾った。


 前述の通り、超満員の盛況ではあったものの、今大会で、観客がTwitterでハッシュタグを付けて投稿した感想ツイートはほぼ皆無。

 そのようなツイートは出場した選手の方が多く、リアルとネット上の反応が反比例な関係にある。
 団体や選手によるSNSでの発信も求められる昨今にあって、「発信力がない」と指摘されそうな事案だが、いたばしプロレスにそうした傾向が無いのは頷ける。
 何故なら、プロレスヲタクを相手にしていないからである。

いたばしプロレスのターゲットは親子連れにあり

 プロレスヲタクを相手にしていないと言っても、出場する選手は豪華だ。
 過去には有料興行でディック東郷、鈴木鼓太郎、田中稔といった名のある選手が上がり、今回のようなイベントプロレスでは、山田太郎、那須晃太郎、小林香萌といった複数の団体に上がるフリーランスも名を連ねた。

 そして、試合内容に関しても、「イベントだから~」という手抜きは一切なく、プロレスヲタクを満足させるものだ。
 だが、いたばしプロレスの場合、観客の対象はプロレスヲタクに置かれていない。
 あくまでも、地元の親子連れなのである。

那須晃太郎とウルフ智也による腕相撲対決

 今大会も、早い時間帯から複数名の子供グループや親子連れが集まり、所謂プロレスヲタクと見られる人間は皆無に近い。
 故に、所謂”お約束”のシーンでは、会場から新鮮な反応が飛び出すのである。

握手のやり取りに見た【勧善懲悪】

 今大会で、私が印象に残ったシーンがある。
 プロレスではありがちな【握手を呼び掛ける→相手が反応する→呼び掛けた方が裏切る】という流れだ。


 いたプロの場合、このタイミングで子供たちが反応する。

「握手しちゃダメ!」

 オープニングマッチの『いたばしマスクvs山田太郎』、メインの小林香萌とまるこの間で交わされたやり取りだが、子供たちの声にレスラーも反応する。

 それでも握手を信じてしまった者は、結果として攻撃を食らってしまうのだが、その時の子供の反応も実に新鮮だ。

「何で(私を)信じなかったの?」

 お約束のやり取りも、対象に子供が入ると新鮮さを増す。

 ただ、有料興行でも、他のイベントプロレスでも、選手名やコスチュームの色以外で、子供から声の上がるケースは中々聞いた記憶がない。
 これはまさに、いたプロでしか成し得ない空間なのではないか、と私は感じたのだ。

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