[ファイトクラブ]君は”孤高の天才”恵良敏彦を見たか? あるボクサーの生き様に魅せられて

[週刊ファイト2月9日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼君は”孤高の天才”恵良敏彦を見たか? あるボクサーの生き様に魅せられて
 photo & text by 大島慶山 w/編集部編


 「トンネルを抜けると、そこは雪国であった」のイントロダクションから始まる小説『雪国』は、大正から昭和にかけて活躍した文豪・川端康成の作品だ。
 「トンネルぬけて!トンネルぬけて!」と歌い出す♪トンネル天国のような能天気な明るい雰囲気ではなく、地獄とまでは言わないまでも、トンネルを抜けると一面の銀世界に包まれていた。ファンタジーのようで、視覚としては綺麗なのだが、身体にはキビシイ。そんな日本列島を襲った最強寒波を打ち破るような、沸々と煮えたぎるような灼熱のマグマが、日本の格闘技界を包もうとしている。

 ファイアーボール・オーバー・ジャパン。ウクライナとロシアの戦火から、遠いファー・イースト島国ジパング、日本では平和ボケしている人達が、やれロシアの領空侵犯だ、中国の領海侵犯だ、北朝鮮からのミサイルだと連日ニュースで放送されても、リアルに迫る危機は感じていない感がある。
 イデオロギーや政治、宗教など様々な問題で対立して勃発する国同士のリアルな戦争問題には、あまり興味を示さない私達だが、戦い好きな民族ではある。テレビや、映画でのフィクションながらアクションものだったり、ゲー厶での格闘技系だったり。スペクテイター・スポーツとしてのプロ格闘技だったり・・・。

 日本のプロ格闘技の種類は列挙しないが、主に四角いリングを使用して行われる種目と、六角形ヘキサゴン、八角形(UFC著作権オクタゴン)、十角形デカゴンの金網リングを使用して開催される種目が、大半を占めている。その㊥でも近年、プロボクシング人気が再興している。ルックスが良く、実力も伴う日本プロボクシング歴代でも、パウンド・フォー・パウンド最強と呼ばれる井上尚弥が、頂点としてプロボクシング人気を牽引していることには、誰も異論を挟む余地はない。
 井岡一翔もその担い手の1人だろう。キックボクシング無敵で、ボクシングに転向してきた那須川天心も、上記2名と同じく、環状線理論の外側の観客を惹き付けている。亀田ファミリーしかりである。
 井上尚弥、井岡一翔とかの活躍は、マスコミでも頻繁に報じられているので、読者諸氏はその活躍ぶりは知っていることであろう。ここで取り上げるのは、そういった媒体にも掲載されていないが、確かな実力、実績のあるプロボクサーだ。

 彼と知り合ったのは3年程前だろうか、失礼ながら、どちらかといえばやや小柄で細めの、今はやりのYouTuberだった。
 令和のお騒がせ漢、イリエマンが来阪の際、ハシゴ酒する大阪のスラム街、西成の居酒屋が出会いだった。矢吹丈のような境遇ではなく、会社を経営している人物だ。

 『あしたのジョー』はよく観ていたらしい。『あしたのジョー2』は、「特に好きでしたね」と語ってくれた。
 その『あしたのジョー』2作での印象を、より強く自らの進む道に導いてくれたのは、映画『どついたるねん』を観て強い感銘を受け、ネット雀や、ゆうだけ番長ではなく、自分自身がリアルに四角いリングで闘うプロボクサーへと時の崖を昇った。
 1994年9月にプロデビューを果たし、2013年に38歳で日本のプロライセンスを失効している。夢をあきらめられない彼は、2016年に異国タイで、プロボクサーのライセンスを苦労のうえ取得している。まさに、裏技だ。


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