［週刊ファイト12月22日号］収録　［ファイトクラブ］公開中

▼客が作るAEW新人overジェリコ班長会場爆発RスタークスMJF防衛
　(c) AEW　編集部編

■　AEW Dynamite　Winter is Coming
日時：12月14日（現地時間）
会場：米テキサス州ダラス近郊　カーティス・カーウェル・センター

　カンサスの♪Carry on Wayward Sonが鳴り響き、エリートの入場である。そして花道に3つのスポットライトが次々に当たり、デストライアングルだ。早くも試練の7番勝負４戦目なんだが、相変わらず違う展開、今宵はペンタがニックの足をハンマーで叩くから、足が動かないとのセールで暫くマット・ジャクソンが孤軍奮闘とか、ネタはまったく底をついてません。最後はフェニックスがニックにインバーテッド・ニーバーを決めて対戦成績3-1に。
　ただ、ケニー・オメガが「お前らはいつもハンマーを使うから、次は凶器使用ありのNo DQマッチだ」と。はい、ネタはまだまだあるんです。

　それにしてもテキサスはダラスの客、もう最初から出来上がって湧きっぱなしなのが画面からも見える。まして、”TAKESHITA is GOAT”のボードをTV画面に写そうと掲げる奴や、「神と神」と読める漢字Tシャツまで、なんか極めて濃いプヲタが集結しているようで、これがクリス・ジェリコ班長の、新人というかjobberと闘うとだけ予告された隠れたアジェンダを持った秘密兵器の投入で、会場が大爆発を遂げるというもの凄いことになる布石となるのであった。
　やはりプロレスは生モノである。試合を作るのはお客さんなのだ。決められた通りのことをやっている格闘演劇ではありえないのである。それが如実にわかる充実回番組へと昇華していくのであった。

　アクレイムドのコーナーはサンジェイ・ダッド、ジェイ・リーサル軍に襲われジェフ・ジャレットはギター壊しなんだけど、それだけの役ならともかく、ダブルJJがタッグ王座挑戦表明って・・・もう、試合を見たいとは思わないんですけど。

　ブライアン・ケイジのパワーに苦しめられながらもジャッグルボーイがスネアトラップを決めてタップさせるんだが、セコンドのプリンス･ナナに気を取られてレフェリーは見てないというspotを挟みつつ、それでも丸め込むカードでした。試合後にストークリー・ハザウェイ軍が襲撃するんだが、そこへ救出に出てきたのがHOOKというフレッシュな組み合わせ。お客さんが大興奮している。これは魅力的なタッグ結成だろう。

　House of Black（マラカイ・ブラック&ブロディ・キング&バディ・マーフィー w/ジュリア・ハート）の正式な復帰戦は、QTマーシャル率いるThe Firmのコール・カーターとニック・コモロトがお勤め補佐役で、QT先生がジャージも脱がないままブラックマスを喰らう短いものでした。

　さて、3度目対決になるから、今度はクラウディオ・カスタニョーリが再戴冠になるのかというAEWがプロデュースする『ROH Final Battle 2022』だったのだが、前半の事前収録セグメントで、クリス・ジェリコ親分は「ジャイアント・スイングは禁止技にすべきだ」とかぼやいている。「このうっぷんをjobberに晴らす」とやったモンだから、お客さんが”jobber jobber”と合唱するんだけど、そこに出てきたのがアクション・アンドレッティという新人である。
　実は、QTマーシャルとの試合映像を見たジェリコ班長が、「こいつを採用しろ、俺が輝かせてやる」と肝入りで契約だったんだが、クラウディオに負けたタイミングで、ようやくジェリコ監督が自ら演じる壮大なる売り出し計画の実行に。あえて知らない選手を強調するのは、試合内容で驚かせるための布石だったのだ。
　新人君のほっぺを引っ叩くことから始まった試合は、あっと言う間にアンダードックのアクション・アンドレッティに、ダラスのお客さんが感情移入していく。

　やがて、ジェリコのボストン・クラブだろうがなんだろうが、跳ね返していくアンドレッティに、もうお客さんが明らかに「どうか勝ってくれ」という声援に昇華していくのだ。そしてシューティング・スタープレスでカウント3が入り、お客さん総立ちの会場大爆発を遂げるのである。

　プロレスの魔法を見せつけられた思いがした。あとのバックステージで、無名に負けて荒れた班長が、通路の機材壊しながらドレッシング・ルームに消える映像が挿入されるんだが、本当はドアを閉めた途端、「どうだ、俺は天才だろう」と悦に入った表情なのが透けて見える。ダラスのお客が乗ってくれたことが大きい要因なんだが、一発、一回目でこれをやれたジェリコさん、誠に恐れ入りました。