[ファイトクラブ]ポスト天心の座狙う覇者たち狂熱の夏祭浪花RISE

[週刊ファイト9月1日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼ポスト天心の座狙う覇者たち狂熱の夏祭浪花RISE
 photo & text by 猫山文楽拳
・ペットパノムロン戴冠延長6R原口健飛に僅差判定勝利
・選手のアドレナリン暴走でボヤ騒ぎも一夜を待たず鎮火
・怒りのメタファーRISEのリングに破壊王を召喚
・原口健飛の目指すところは那須川天心にあらず
・海斗反撃退け延長判定勝利難敵サモ・ぺティに苦しむ
・山田洸誓、AFSO世界王者をKO
・ポスト天心狙う覇者たちの狂熱の浪花KO祭
・TKOからドローまで波乱のOFG3試合


■ Cygames presents RISE WORLD SERIES OSAKA 2022
日時:2022年8月21日(日)13:00  
会場:大阪・エディオンアリーナ大阪 第1競技場
 全17試合中8KO。熱戦の連続、メインは延長戦6Rでペット・パノムロンキャットムーカオが僅差の判定で原口を退け戴冠した。

ペットパノムロン戴冠延長6R原口健飛に僅差判定勝利
<メインイベント RISE世界スーパーライト級 王座決定戦 3分5R無制限延長R>
◯ペットパノムルン・ギャットムーカオ(タイ/ギャットムーカオジム/GLORYフェザー級(65kg)王者)
 延長判定 3-0 本戦判定 1-1
●原口健飛(FASCINATE FIGHT TEAM/RISE -63kgトーナメント2020優勝、元RISEライト級(63kg)王者)
※ペットパノムルンが世界王者に


 試合開始早々からペットの前に躍り出て圧を掛けに行った原口は、11月の完敗をバネにフィジカルを強化、鬼神の勢いでペットに攻め込む別人レベルの成長ぶりを見せつけてくれた。
 だがさすが世界王者、ひるまず原口に的確にミドルを当ててダメージの蓄積を狙っていく。
 4R原口の跳び膝がペットの頭部にヒット、ペットが笑顔とも、痛みで顔をゆがめたようにも取れる表情を浮かべたところでゴング。

 5R反撃の機会がつかめぬ原口がペットの左ミドルでスリップ。判定は割れて延長へ。

 原口のフックにペットはミドルの応酬から組んで膝。

 左ハイキックもヒット。

 反撃の隙を与えぬまま終了、結果3-0でペットパノムロンが今回も原口を判定で破り、戴冠した。

 惜敗こそすれ、11月の惨敗の試合内容とはまるで違い、終始自信をみなぎらせペットを追撃、大舞台に相応しい華やかな飛び膝を何度も披露して観衆を沸かせた原口のファイトは賞賛に値する。
選手のアドレナリン暴走でボヤ騒ぎも一夜を待たず鎮火
 試合後プレス室でのインタビュー会見で、原口のアドレナリンが暴走、ジャッジに対する不満を爆発させた。

 ペットの反則行為をレフリーが見逃したなど語気を強めて言及、その後原口と入れ替わりにプレス室に入った伊藤代表が、今度は原口に苦言を呈し、これが一般公開されるや関係者やファンがさらに薪をくべる形となって炎上しかける騒動に発展したが、数時間後当の原口本人がSNSを通じ言動の謝罪を行い、事態は一夜明け記者会見を待たず速やかに鎮火した。
怒りのメタファーRISEのリングに破壊王を召喚
 ちなみに原口が指摘したペットの反則行為(首を絞め上がられたという)、該当箇所を探してみたところ・・・なるほどこれかというシーンが見つかった。メインイベント4Rの中盤RISEのリングに一瞬だがプロレスチックな光景が出現する。
 原口にものの見事に、決まっている。蘇る破壊王橋本真也のDDTである。
プロレス技のDDT⇒相手の首をフロントヘッドロックの要領で片脇にがっちり捉え後方へ倒れこんで相手の頭部を打ちつける技。
 お盆もとっくに過ぎたというのに破壊王がRISEのマットに迷い出るとはどうしたことか。
 これについてSNSでムエタイ最強ファイターの梅野源治選手が、ムエタイの観点から解説をしていたので引用すると、「組んだ時に相手の頭を下げる行為は印象がとても良い!顔に膝や肘が打てるから倒れた際に首を抑えたのは 起き上がるのが少しでも遅いと”疲れた”ように見えて印象が悪いだから相手を抑えながら同時に起き上がる」とのこと。
つまりこれは、ムエタイ的には普通に行われているテクニックのひとつに過ぎない。

 思うに、首固め~こかすも、禁じられているとわかっていても、熱くなったらついやってしまうのではとも思う。RISEのリングに上がるからにはRISEのルールに従わねばならないとしても、だ。
 ルールにハンデがあろうが、相手がラフプレーを仕掛けてこようが、それでもなんでも、いかなる状況に置かれようとも、勝負の世界は厳しい。勝つしかないのだ。
 いずれにしても、想像を超えたプレッシャーのなかで6Rもの長丁場を全力で闘った直後にマイクを手渡されたら、人間腹にためこんでいたことを吐きたくもなるのではないか。
 そもそも試合後インタビューとは、アドレナリンが上がったままの状態のアスリートにプレスが仕掛けたトラップも同じではないか。
原口健飛の目指すところは那須川天心にあらず
 伊藤代表はプレスルームで原口に期待しているがゆえの苦言を呈し、天心なら勝っていたとかつてのRISEのドル箱スターを引き合いに出したが、私はそうは思わない。
 そもそも原口健飛に那須川天心の代わりは務まらない。
 それは、原口が天心には及ばないと言うのではなく、原口健飛は、那須川天心を目指すのではなく原口健飛になるべきだからなのだ。
 彼が今回ペットに負けたのは、那須川天心に成りきれなかったからではなく「原口健飛」としていまだ未完成であったに過ぎない。
 試合直後に、負けを認めず語気強くジャッジを責めるようなことを吐いてしまったことが物議となったのは、とかく摩擦が起こることを避けたがりもめ事を嫌う我が国特有の「道徳」という名の威圧であって、悪いのはそもそも試合が終わった直後のアドレナリン全開状態の選手にマイクを渡すメディアだ。
 そもそも怒りたければ怒って良いと思う。それこそシナリオ通りでない証拠として歓迎すべき。
 ネット上であっというまに言葉が独り歩きを始め炎上しかけた矢先に、原口自らが謝罪した素直さにむしろ頭が下がる思いがした。
 この世の中、「される側」の当事者としておもんばかれない無責任極まりない老害が、どれほど自分の言動に無責任かつ呆れるほど嘘つきか。
 火種をばらまくだけばらまいておきながら消火作業は他人任せ、追及されたらきびすを返して「私はそんなこと言ってない」。
いまどきは、若い人たちのほうが謝罪すべきことは躊躇せず速やかに頭を下げる。年齢と経験値は人間それじたいのスキルとは無関係のようだ。

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