ロンダ・ラウジーのパンツは見えそうで・・・見えない~映画評『ワイルドスピード SKY MISSION』10億ドル超えの爆走中

(C) Universal Pictures
 4月3日に北米公開されたハリウッド映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』が、66カ国で上映されている世界興収でついに10億ドル(約1200億円)を越え、異常な爆走を続けている。なにしろ、主演のビン・ディーゼル、この作品が遺作となったポール・ウォーカー、悪役ジェイソン・ステイサムに加えて、旧FMWのようなあの「聖家族」の一員にはロック様、さらには本作にロンダ・ラウジー様も出演している。
 マット界の最新ニュースをお届けする当サイトだが、単に知名度のある選手が出ているとか、単純に考えてはいけない。詳細はマット界舞台裏4月23日号白石伸生前田日明キック界混乱IGF3両国長瀬館長ミャンマー素手にあるので、きっちりした分析を知りたい方は電子書籍の購入をお願いするだけだが、ロック様がいかにとんでもなく稼いでいるかとかを知っておかないと、なぜに、本年の『レッスルマニア 31』でロックは試合はしてないのかが見えてこない。『ワイルド・スピード SKY MISSION』の異常な成功は、プロレス格闘技を問わず、とてつもなくマット界の業界全体に大きな影響を及ぼしていくことになる。だから当欄で取り上げられる。
 ロック様は『レッスルマニア』のしゃべりの出番だけで億円単位のギャラが支払われているのだが、試合をさせるとなると怪我負うリスク含めていくら出さないと映画と釣り合わないか以下、とてつもないことになっている事実を押さえておかないと大局が見えてこないのだ。

 原題『Fast & Furious 7』だが、例によってストーリーはめちゃめちゃだ(笑)。欧州が舞台だったシリーズ第6作『EURO MISSION』の敵役シヨウ(ルーク・エヴァンス)には兄がいて、その最強の悪役ジェイソン・ステイサムが復讐を始めるというご都合主義から。前作はキックボクサー&総合格闘家ジーナ・カラーノ(『エージェント・マロリー』主演)がロック様演じるFBI捜査官とコンビを組む役というから、これは「見てない」では済まされなくなると足を運んだら、話の辻褄が合ってない。ネタばれになるので具体的には書かないでおくが、結末は「なんでやねん」だったのとロジックの整合性では本作は五十歩百歩だろう。
 今回も、ドミニク(ビン・ディーゼル)を家長とする聖家族の自宅に、東京から大きな荷物が届いたかと思いきや、それは凶悪なジェイソン・ステイサムが送った爆弾で、命こそ助かったがかの家が全焼するプロットが冒頭にある。そんな大がかりな武器を使った殺し合いをしているのに、最後の決闘場面では、なぜか素手の格闘アクションになるとか、余り深く考えてはいけないお約束なのだ。
 なにしろ、今回の邦題SKY MISSIONにせよ、車を積んだ軍用機から、空から車全体のパラシュートごと降りてくるところから採用したのだと推測するが、絵として凄いというお題目を除けば、敵陣に乗り込むのになぜにそういうことにするのかは謎なのである。

 さて、このシリーズ、なぜに世界的に人気があるのか。なにしろまず無国籍。ビン・ディーゼルって、そもそもどこの人種の俳優なのか? あの水っぽい「コロナ・ビールしか飲まない」という、北米生活経験者なら「そういう奴、いる、いる」というキャラが強調されて、役名はドミニク。さらに記憶喪失した妻がヒスパニックやラテン系の役で、あの『マチューテ』のB級シリーズとかでもお馴染のミシェル・ロドリゲスだから、観客には先入観含めてメキシカンかなにか、もうイメージが植えつけられる仕組みである。
 あえて、すべてはっきりと人種を定義してはいないのだが、近作は黒人2名、いやロック様をカウントするなら3名が聖家族に入ってるし、今作では葬儀が行われて死んだことになったが東京在住のハンは韓国系俳優とか、監督は中国系であり、アジア/オリエンタル色も濃い。北米に絞っても車好きの黒人層にバカ受けしていることは述べるまでもないこと。定義上はハリウッド映画なのだろうが、いわゆる二枚目のハンサム白人キャラはポール・ウォーカーだけ。『オーシャンズ11』なんかを思い浮かべて比べていただければ、主要メンバーの人種構成がいかに毛色が違うかおわかりだろう。この辺りにも、中国で本作が記録的トップ興行収益記録を更新中とか、世界中でヒットしている理由なのだとわかる。
 そのポール・ウォーカー、撮影中ではなく、プライベートの方で映画まんまの超高級爆走車をぶつけて事故死してしまうという実際の事件があり、本作が遺作になってしまった。おかげで脚本を書き直したようで、映画のエンディングはビン・ディーゼルと”ブラザー”ポール・ウォーカーの2台の車が、別々の道に分かれて天国に旅立つ暗示にしていた。果たして8作目は新たな白人キャラが加わるのか、それとも・・・。ちなみに英国人ジェイソン・ステイサムは、本作では死んでおらず、今後の復活の可能性を残しているが、『エクスペンダブルズ』シリーズと違ってアクションだけで、キャラ深堀がよくわからないままだった不満は指摘しておきたい。

 お待ちかねロンダ・ラウジーは、『レッスルマニア』と違ってロックとの共演場面はなく、聖家族チームの適役として登場。舞台設定はアブダビで、超高層ビルに住む王子の護衛が三角締めとかを使う柔術のボディーガードたちの筆頭という・・・。ミシェル・ロドリゲスとの決闘場面はスタント俳優なのが映画マニアにはわかってしまう。パーティに潜入というプロットなので、見どころは黄金のドレスに身を包んだロンダ様がキックとかでパンツが見えるのか否か(笑)。まぁいいじゃないですか、これだけの出演場面で信じられないギャラが振り込まれるんだし、UFCにとっても世界の興行収益を塗り替えるウルトラ・ヒット作に露出というのは、未開の地の開拓にも有利になる順路である。いくら「チャック・リデルがSTEEL PANTHERの♪Party Like Tomorrow is the End of the WorldのPVに出演している」とヘビメタマニアが騒いでも、世間一般は誰も知らないのと比べたら、月とすっぽんの差があるということだ。

 本作は現在コムキャスト傘下ユニバーサル・スタジオ103年の広大な歴史における、初めての$1 billion(10億ドル)超えを公開から17日間という最速で達成した記録ずくめの異常なヒット作になっている。マット界関係者が「知らない」では済まされないということだ。

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・映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』偉業とマット界への影響