[ファイトクラブ]JハーディDアレン天梯子AEWロングアイランドTストームJヘイター

[週刊ファイト5月19日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼JハーディDアレン天梯子AEWロングアイランドTストームJヘイター
 photo by George Napolitano 編集部編

■ WWE Dynamite
日時:5月12日(現地時間)
会場:米ニューヨーク州エルモント UBSアリーナ


 2021年9月にこけら落としとなったロングアイランドのUBSアリーナは、ニューヨーカーには「ベルモントパーク競馬場の隣」と言えば通じる大会場である。「オーエン・ハート杯」と名前を冠したトーナメント最中でもあり、ついにマーサー・ハート未亡人が来賓席から観戦する姿が中継で何度も大写しになる中で行われた天覧大会だ。本誌はジョージ・ナポリターノ記者を派遣、試合順とは逆にDynamite番組トリのジェフ・ハーディvs.ダービー・アレンから会場の沸騰ぶりをお伝えしていきたい。


 なにしろアクロバティックな試合の元祖というか、やる側志望の少年・少女たちに与えた影響たるや筆舌に尽くしがたいジェフ・ハーディである。実際、セミを務めたトニー・ストームもまた、最初に憧れたアイドルはジェフだったという話を実況が紹介していた。それが今の時代のよりクレイジーで危険な試合をやるダービー・アレンと闘ったら、一体どんなことになるのか。
 そしてお客の期待を裏切らない、ハチャメチャなスタントが一回限りの聖なるLIVE空間で展開していくのだ。


 例えば上記の写真。大会場にそびえるように映える超大型のハシゴがリング内に設置、ジェフが登っていくのだが、ダービーもかけあがっていき攻守交替。事前にリングサイドに8台だったか並べておいたチェアにジェフを突き落とし、そこにダービーが突っ込むのである。

 冗談抜きで一歩間違えれば死だ。なんとか予定の着地点に身体は落ちたが、固いパイプ椅子で背中をしこたま打っている。というか、すでにこの時点で両者は場外での投げ合い含めて何度も背中をまともに固いところ、ある時はリングに上がるスティール製の階段に打ち付け合っており、生中継の試合途中で続行不能とか、なんとか気力で最後までやり遂げたんだが、恐らくお客の視界からバックステージに消えた途端、もう歩けなくなっているかも。少なくとも全身が痛くて痛くて、今晩は眠れないことになっているハズなのだ。ダービーはそれを売りにしているとはいえ、ジェフなんか現在44歳である。もう生ける人間国宝の域だろう。


 亡くなった上島竜兵さんの思い出話として、熱湯に浸からされてアッチチ!があるが、あれはリアクション芸であって、実際は熱くないとかよく言われたものだ。しかし、この二人の「自爆芸」はクッションのない固いところにバンプしまくるという、マゾ種族の究極形態に他ならない。そりゃどっちが0.01秒速かったかを競う五輪競技を目指しているスポーツ選手も凄いけど、こっちの測定不能なリアルの「自爆芸」に命を懸けて闘っているプロレスラーって、もの凄くないですか?


 試合はコーナーポスト上から必殺コフィン・ドロップを見舞ってフォールの体制に入ったダービーを、そのまま反動を使って丸め返したジェフが1,2,3を奪うというもの。試合中、何度も何度もレフェリーが大丈夫か、続けられるかを聞いているんだが、かけよった兄貴のマットにせよ、無事なのかを問うのが手を上げられている際の会話なのだ。日本ではやれないどころか、放送倫理に煩いWWEも許可していない選手たちの自由裁量度の大きなAEWだけで実現した、新旧「自爆芸」レスラー対決。最後はお互いの健闘を称え合う二人なのだった。


 オーエン・ハート杯の「予選」だの「本戦」だのはどうでもイイことなんだが、一応はこれで次が本戦のアダム・コール戦なので、花道にアンディスピューティド・エリートが登場する絵で番組は終了している。それにしても凄い試合を見た余韻が未だに抜けない。


 セミが英国出身ジェイミー・ヘイターと、ニュージーランド出身トニー・ストームのスターダム経験者対決である。本格的なJoshi Puroresuであり、AEW女子部の他とはもうレベルが違う中身勝負なのだ。

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