[週刊ファイト11月25日号]収録 [ファイトクラブ]公開中
▼藤本つかさ軸に回ったアイスリボン年間回顧!杉本喜公の鷹の爪大賞
photo & text by 杉本喜公
・1・23後楽園大会「鈴季すずvs.藤本つかさ」王座交代
・松本浩代との黒歴史を売りにして決着して魅せた8・9横浜武道館
・空席が目立った11・13大田区総合体育館「藤本つかさvs.春輝つくし」
・大量離脱とフリーのユニット『プロミネンス』お披露目だが・・・
・CyberFight主導1・4新宿FACE松本都崖のふちプロレスとの全面対抗戦
・16年目にして団体がリニューアルされるのか? どうなる2022年
2021年最終号で今年のプロレス界の個人的な総括原稿を依頼されたものの、この1年間、しっかり現場で試合を観ていたのはアイスリボンだけなので、他の団体には一切触れずに、アイスリボンの2021年を振り返ることにする。結論から言えば、アイスリボンの2021年は藤本つかさを中心に回っていた。
2021年のアイスリボン最初のビックマッチは1・23後楽園大会だった。前年8・9横浜文化体育館大会でアイスリボンのシングル王座であるICE×∞王座を奪取。雪妃真矢を破り、キャリア1年7ヵ月、17歳で初戴冠を果たした鈴季すずが、年明け最初の防衛戦の相手に迎えたのが藤本だ。
アイスリボンという団体はさくらえみ(=現・我闘雲舞)が設立した団体であり、さくらえみの独特なプロレス観が団体のカラーとなってきた団体である。そのさくらが2012年に退団したあと、さくらからバトンを受けたのが、デビュー4年目の藤本だった。あれから9年が過ぎ、良くも悪くもアイスリボンは藤本のカラーで染め上げられた。その藤本が今年最初のICE×∞王座戦ですずを下し、同王座7度目の返り咲きを果たした時、雪妃、すずと続いてきたアイス新世代の流れが、再び振り出しに戻ったとの印象を持ったファンも多かったのは事実。
しかし、それは藤本自身が最も自覚していた部分であり、「振り出しに戻る」という印象を払拭し、15周年記念のビックマッチであった8・9横浜武道館大会まで走り続けることを自身に課した。そして藤本が横浜武道館大会で対角に立つ相手に選んだのが松本浩代だった。藤本と浩代の因縁は「松本浩代事件」としてアイスリボンの黒歴史に刻まれている。当時、デビュー4戦目だった藤本が2対1のハンディキャップマッチで浩代と対戦した際に、試合途中で動けなくなってしまい、「お前らみたいなのがいるからプロレスがダメになるんだ!」と浩代が激怒。あの一戦は藤本にとっても大きな黒歴史となってきた。
その黒歴史を藤本は横浜武道館大会の売りにした。あえて浩代とのハンディキャップマッチを大会前に、アイスリボンの公式YouTubeチャンネルにアップ。さらに当日は藤本&浩代組が保持していたインターナショナルリボンタッグの防衛戦をセミファイナルに組み、メインでの藤本vs.浩代との2連戦とした。これでもかとばかりに、この一戦をあおり続けた。その上で浩代に勝利し、自身の黒歴史にも決着をつけてみせた。
しかし、この横浜武道館大会以降、アイスリボンは大きな話題を提供できず、観客動員も苦しくなっていった。特にアイスリボン初進出となった11・13大田区総合体育館大会は空席が目立ち、藤本から春輝つくしがICE×∞王座を奪取したものの、大きなインパクトを残すことができなかった。
そして試合以上の大きなインパクトを残す事件がリング外で起こってしまう。12月1日、世羅りさ、柊くるみ、宮城もち、藤田あかね、鈴季すずが年内でアイスリボンを退団し、デスマッチ&ハードコア戦をメインとするフリーのユニット『プロミネンス』として活動していくことが発表され、この流れとは別で雪妃も年内で退団し、フリーとして活動していくことになったのだ。