［週刊ファイト6月24日号］収録　［ファイトクラブ］公開中

▼Yogibo presents RIZIN.28″朝倉未来幻想”は終わったのか・・・「少し休んで、また頑張ろうかな」
　photo: 神宮寺しし丸、公式(c) RIZIN FF
　by 神宮寺しし丸
・”朝倉未来幻想”は終わったのか？
・朝倉未来「引退も含め考える」
・朝倉未来「自分の幻想が打ち砕かれた・・・」
・”柔術幻想”再び
・那須川天心 vs. 3人
・ホベルト・サトシ・ソウザ”母国”に王座奪還

■　Yogibo presents RIZIN.28
日時：2021年6月13日（日）
会場：東京ドーム　観客動員9731人（＝主催者発表コロナ制限）

朝倉未来「自分の幻想が打ち砕かれた・・・」
　6月13日（日）東京ドームで開催された『Yogibo presents RIZIN.28』。そのメインイベントで朝倉未来（トライフォース赤坂）がクレベル・コイケ（ボンサイ柔術）に三角絞めで絞め落とされ一本負け。試合後、会見に応じた朝倉は「自分の幻想が打ち砕かれた・・・」と心境を吐露。今後ついては「引退も含め考える」と語った。

＜会見全文＞

――試合後の率直な感想をお聞かせ下さい。

悔しいですけど、今回試合やって良かったというのがありますね。

――対戦を終えて相手の印象は違いましたか？

結果的に強かったなと思います。

――今回東京ドームという会場での試合でしたが、いかがでしたか？

この歴史的な東京ドームの大会で、メインで試合ができたことは今後自分の宝になるんじゃないかなぁと思います。

――試合を終えたばかりですが、今後の展望を教えて下さい。

今後は一度考えます。引退も含めてちょっと考えて。うーん・・・まぁ考えてみてって感じですね。

──（1ラウンドに）左を当ててチャンスを迎えた時、ラッシュでKOできそうな雰囲気がありましたが？

あれ左でしたっけ？右フックじゃなかったですか？うーん、まだ（クレベルの）目が死んでなかったんで、行きすぎると危ないかなっていうか。クレベル選手の寝ても大丈夫な強さ、こっちが迂闊に入れないのがまた一つ強さだと思うんですけれど。効いていたのは分かっていたんですけど、完全に戦意喪失してなかったのであまり行きすぎると危ないなということで（攻めるのを）やめました。

──最初の三角絞めの引き込みは腰を抱いてしっかり離れましたが、最後の三角は突き放しようがなかった？

最後のとこは、コーナーポストに押し付けてたので、あそこから入らないと思ってたんですけど、入ってきましたね。凄い身体が柔らかくて。あまり覚えてないですけれど、そこは。ちょっと油断しましたね

──タップするという選択はなかったですか？

タップするという選択はなかったすね。

──先程「（今後は）引退を含めて考えます」と、それはこの試合を経た上でどういう心境の変化があったのでしょうか？

格闘技を始めて結構な月日が経って。10年くらい経ったんですかね。アウトサイダーから始めて、こんな大舞台にまで立てたんですけれど。どうなんですかね、ここで負けた時に格闘技を今後やっていく意味があるのかどうかが自分の中にあるので。自分の幻想が打ち砕かれたというか、自分にとっての自分が。ここまでだったんだなと落胆している感じですね、自分自身に。トップを目指せないならやる意味がないのかなと思ったりしますし。まだ日本の格闘技を盛り上げる役目があるとしたらまだ続けるかもしれないですけれど、それは周りの声も聞いて判断しようかなというところですね。

――対戦相手は元KSW（ヨーロッパ最大級のMMA団体）のチャンピオンですし、今回の試合へ向けての取り組みが、ご自身の中で強くなってるという手応えもあったのではないですか？

うーん、どうなんすかね。強くなっている実感はありましたけど。まだ1カ月なので、ちょっと分からないですね。

――右瞼辺りの腫れはどういった状況でなったか分かりますか？痛みとかダメージはありましたか？

ヒジですよね。痛みとか打撃で効いたとかはなかったんですけれど、テイクダウンディフェンスしなければいけないという頭があってあの打撃を許してしまった、と言う感じなので。それもクレベル選手の強さすよね。

──（クレベルは）思ったよりも強かった？意外とできた？

組み力は正直あまり思ったよりなかったんですけど、凄い上手かったので。組み力はそんなにないから安心しちゃうんですよね。そこはありましたね。打撃がやっぱり目がよくて、結構気持ちも強いし。（クレベルが）勝ってる意味を理解しました。

　インタビュールームに現れた朝倉は冷静に試合を振り返りながら心境を語った。今後について「引退も含めて考える」との発言も一時の感情によるものとは思えない。元々30歳までに引退を公言していた朝倉未来。

「ここで負けた時に格闘技を今後やっていく意味があるのか」
　クレベル・コイケは強豪ではあるが、MMAの世界的評価ではフェザー級トップ10に入らないだろう。弟の朝倉海ほど積極的ではないものの、自身も「どこまで世界で通用するのか知りたい」とUFCやBellatorへの海外進出に興味を見せていた朝倉未来。その意味でも、KSWという世界的に評価される団体の元王者であるクレベル・コイケ戦は世界での自分の立ち位置を知る一戦だった。

「トップを目指せないならやる意味がない」
　今回の敗戦で海外進出というのは現実的ではなくなった。また国内での積み上げが必要となる。その後、海外進出のキップを手に入れたとしても、そこから世界王者に挑戦となると数年はかかるだろう。少なくともあと１～２年で引退という自身の理想通りとはいかなくなった。今年29歳になる朝倉未来。ここから世界トップを目指すには若いとは言えない。

「自分の幻想が打ち砕かれ落胆している」
　2018年日沖発戦での衝撃RIZINデビューから始まった”朝倉未来幻想”。あれから約３年。クレベル戦前まで９戦８勝。斎藤裕には敗れるも完敗という内容ではなく、次戦の弥益ドミネーター聡志戦できっちりと幻想を回収してみせた。そんな”朝倉未来幻想”にファンは惹き付けられたが、なにより朝倉未来が自身の幻想に惹き付けられた。その幻想がクレベル戦で打ち砕かれた。

　”朝倉未来幻想”は終わった。しかし・・・

『昨日は応援ありがとうございました。

結果はついてこなかったけど、努力はしてきたので試合をした事に対する悔いはないです

それと、沢山の人が応援してくれているということを改めて実感しました

少し休んで、また頑張ろうかな

朝倉未来は最強でないといけない』

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　試合翌日の朝倉未来SNSより

　”朝倉未来幻想”は終わった。ここからはがむしゃらに這い上がるリアルな朝倉未来が始まる。

“柔術幻想”再び
＜第10試合　MMAルール　フェザー級（66kg）　5分3R＞
●朝倉未来（トライフォース赤坂/元THE OUTSIDER 65-70kg級・60-65kg級王者）
　2R 1分51秒 三角絞め
○クレベル・コイケ（ブラジル/ボンサイ柔術/元KSW＆REBEL FCフェザー級王者）

　【1R】ジャブのようにローキックで先手を取るクレベル。さばきながら圧力を強める朝倉。朝倉がクレベルの左ローにカウンターのストレートを合わせる。打撃戦の中、クレベルが組みにいき引き込みに成功。グランドへ。上体を立て対処する朝倉。手首を掴むグリップが強いクレベル。



　下から腕十字を狙うが、朝倉の対処も早く立ち上がる。スタンドの展開から組にいくクレベル。そこに右を当てる朝倉。やや効いたか、ふらつくクレベル。ラッシュをしかける朝倉だが深追いはしない。また組にいきコーナーに詰めるクレベル。リフトからテイクダウン。すかさずバックを狙うクレベル。しかし、朝倉は コーナーを使って立ち上がり正対しバックを取らせない。グランドとスタンドと一進一退の攻防だが、寝技に対処しつつ打撃を効かせた朝倉がやや優位に1ラウンド終了。

　【2R】1ラウンドで削れたとみてさらに圧力を強める朝倉。しかし、クレベルも右インローを中心に返す。そんな中、クレベルがタックル。朝倉必死のディフェンスで凌ぐも、今度はクレベルが引き込み自軍コーナーの下でグランドへ。


　朝倉立ち上がるかパウンドを狙いたいがクレベルの手首のグリップが強い。そして、クレベル素早く下から三角絞めへ。一瞬対処が遅れた朝倉。ガッチリと入り逃げれない。自身の右ひざを引き寄せさらにタイトに絞め上げるクレベル。すると、朝倉の動きが止まる。クレベルがレフリーに落ちていることをアピール。レフリー止めに入り試合終了。

　グレイシー黒船時代。PRIDEノゲイラ時代。と時を経て、18年ぶりの東京ドームで”柔術最強幻想”が再び日本に訪れた。